【宇宙商侠伝】~ユハナス=ユヴェンハザの商人独立日誌~

鴛海 好明

文字の大きさ
1 / 3
1章:Free's Linkage Station

1.おじいちゃんそりゃないよ!

しおりを挟む

1.おじいちゃんそりゃないよ!

 僕は、ある日。
 このカルハマス星系で最も大きい宇宙商船団を持つ、誇り高い僕のおじいちゃんの前で緊張して話を聞いていた。

「ユハナス、よく聞くのだ。私は、お前に船を一つ与える。無論、海上船ではなく宇宙船だ。お前は、今日で15歳になった。という事は我がユヴェンハザ家の男として、独り立ちをしなければならない」

 うっわあ……。僕の家に伝わる、まことしやかな噂。我が家系ユヴェンハザ家の男は、15歳で船を与えられて独り立ちをする。そこから先は、自分で自分の人生を切り開かなければならない、という話は。

 ……まさか本当だったとはなぁ……。

「トイロニおじい様」
「ん? 何かな? ユハナス」
「船一つだけで。宇宙船一つを貰うだけで、人生というものは開けるのですか?」

 僕は思わずそう聞いた。
 すると、おじいちゃんはニコニコ笑って。
 僕の頭にゲンコツをゴスン! と落としてきた!!

「何を腑抜けたことを言っている!! お前は甘さのある実家の生活に脳が腐れたのかユハナス!!」
「え? えー⁈」
「毎日の思考鍛錬。星間貿易で利を上げるには如何にすればよいか!! そういったことを常に考え、実行して実利を上げる!! そのような挑戦が無ければ、人生が開けるモノか!!」
「だって僕まだ15歳……、ですよ⁉」
「ばかもーん!! 世の15歳と言えば、もう立派に皆働いておるわぁ!!」
「どっ!! ジュニアハイスクールの同級生たちは⁈ みんなハイスクールに進学するって言ってますよう!!」
「ユハナス。お前には実地現実で成長をさせる。お前だけではない!! お前と同い年の儂の直系の孫のアルテムにも、船を与えてもう出立させたわっ!!」
「従兄弟のアルテム君も?」
「無論だ。儂の長男の子のあやつにはゆくゆくは儂の跡継ぎになってもらう。儂の三男坊の息子で、いわば分家の孫と言っていいお前とは違ってな」
「……おじいちゃん。アルテム君には、船何隻あげたの?」
「十隻だ」
「……本家と分家の格差―――――――!!」
「当たり前だろう。ユハナス、お前はな。稼いだ金を、富を。自分の使いたいように使える権利がある。儂の家を継がなければならないアルテムには、それは許されぬ。その責務と悲壮感。その分の権限が大きくなるのはまあ当然のことだ」
「そりゃないよおじいちゃん!!」
「ええい!! この子供が! 船が十隻もあったら、部下の管理もせねばならんし、運営も大変なのだぞ⁈」
「一隻だけで商船団なんて言えないじゃないかー!! ただの商船だよー!!」
「ユハナス……。聞き分けのない子じゃ。まあ、いいからついてこい。きっと船を見ればお前も納得をする」

 おじいちゃんはそう言うと、本家の屋敷の自分の部屋を後にする。無論、僕を連れて。

 カルハマス星系の第四惑星、アーナム。この星に、おじいちゃんは自分の宇宙港を持っている。おっそろしい額の投資をして、惑星アーナムの政府と財界に認めさせて勝ち取った、おじいちゃんの財産だ。
 そこに入っていくと、警備員や整備員、接客スタッフに作業員がみんなみんな、おじいちゃんに頭を下げる。まあ、おじいちゃんの指揮のもとに仕事をして、みんなそこそこの満足をしているという、この宇宙港の労働環境のアンケート結果もあるそうな。
 だけど、そりゃ。おじいちゃんの実力であって、おじいちゃんの隣にいる僕に頭を下げているわけじゃない。
 そのくらいの分別は、幸いにもつく僕だった。

「キリアン。儂だ。ユハナスの船の準備はできているな?」

 会長室について、中に入ってソファに腰かけると。美人の秘書さんが僕にココアを出してくれた。おじいちゃんは、ヴィジョンコールで部下を呼び出している。

「ユハナスお坊ちゃん。今日、船貰うんだってね? 頑張ってよ、お姉さん応援してるよ!!」

 やったらと美人なおじいちゃんの秘書さんが、ココアをお代わりするかと聞きながら、僕にウインクをしてきたりして。

「ユハナス、ドックに行くぞ。船の準備は万端だそうだ」

 落ち着いて紅茶をティーカップ一杯飲んだ後に、おじいちゃんはそう言って僕を連れて会長室を出る。
 宇宙船舶管理スペースに入ったのか、周囲は装飾性がほとんどなくなり、機能的な鋼製の風景に変わっていく。僕とおじいちゃんが、しばらくそこを歩んでいくと……。

「会長!! まさか御自ら御足労されるとは……」

 広い廊下の向こうから歩いてきた、ダークブラウンのスーツをビシッと着た、短めの髪をオールバックにしてメガネをかけた男がそう言った。

「儂のかわいい孫の出立の時じゃ。儂とて、そうなれば自ら見送るものだよ。キリアン」
「と、いうことは。そちらのお子さんが?」
「そうじゃ。この度出立する、儂の三男の子供、ユハナスだ」

 おじいちゃんがそう言うと、キリアンさんは僕に向かって笑いかけた。

「ユハナス君、よろしく。この港の船舶管理統括役員のキリアンだ。君の船は、もうリファインとブラッシュアップを済ませている。出航用セッティングも万全だよ」
「あ、どうも。お世話をかけます、キリアンさん」
「そうだね。君みたいな子供が、あんないい船の船長になるなんて。しかも、私のような腕のいい船舶管理のスペシャリストを使うなんて。君のおじいさんが会長でなければあり得ないことだよ」

 苦笑いを笑いに変化させながらも、キリアンさんはドック区画のオートドアをカードキーで開錠して開けてくれた。
 そして、そこで僕が目にしたのは……!!

「リジョリア・イデス号。儂もやはり儂のおじいさまから与えられた船だ」

 僕の肩に、おじいちゃんが手を置いてそう言う。
 でも、僕は。
 その目の前に停泊している、巨大で純白の。
『美しい』
 宇宙船に目を吸い寄せられて、夢中で見続けていた!!

「移動時搭載可能重量は、まあ。中型船のものですが。スペースウェーブライディングシステムによって移動速度は非常に高く、短距離であれば転移移動も可能。更には、宇宙海賊や敵対勢力船団撃退用の武装が凶悪でね。ツイントロン砲72門、マシンパルシーウェーブ発生装置、更にはグラビトンミサイル発射口が6門。まあ、これに乗って負けるとしたら……。戦争時の巨大宇宙戦艦相手にぐらいだろうさ」

 キリアンさんの説明を聞いて、僕は何というか。
 迂闊にも、極上の玩具を与えられた子供のような表情を。

 していたに違いない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【拡散希望】これが息子の命を奪った悪魔たちです。

水井伸輔(Mizui Shinsuke)
SF
息子の死の真相は、AIだけが知っていた――。 16歳で急死した最愛の一人息子。仕事にかまけて彼を孤独にさせていた父親は、深い後悔から息子のスマホデータを元に「故人AIアバター」を制作する。 毎晩モニター越しの息子と語り合い、罪悪感を埋め合わせる日々。しかしある夜、AIの息子が信じられない言葉を口にする……。 狂気に満ちた暴走を始める父親。 現代社会の闇と、人間の心の歪みを抉る衝撃のショートショート。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【時代小説】 黄昏夫婦

蔵屋
歴史・時代
 江戸時代、東北地方の秋田藩は貧かった。  そんな中、真面目なひとりの武士がいた。同僚からは馬鹿にされていたが真面目な男であった。俸禄は低く貧しい。娘二人と実母との4人暮らし。  秋田藩での仕事は勘定方である。  仕事が終わると真っ直ぐ帰宅する。 ただひたすら日中は城中では勘定方の仕事をまじめにして、帰宅すれば論語を読んで知識を習得する。   そんな毎日であった。彼の名前は立花清左衛門。年齢は35歳。  娘は二人いて、一人はとめ15歳。もう一人は梅、8歳。  さて|黄昏《たそがれ》は、一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のことを言う。「|黄昏時《たそがれどき)」。 「黄昏れる《たそがれる》」という動詞形もある。    「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略でよく知られていた。夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で日常会話でよく使われた。  今回の私の小説のテーマはこの黄昏である。  この風習は広く日本で行われている。  「おはようさんです」「これからですか」「お晩でございます。いまお帰りですか」と尋ねられれば相手も答えざるを得ず、互いに誰であるかチェックすることでヨソ者を排除する意図があったとされている。  「たそかれ」という言葉は『万葉集』に 誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ」 — 『万葉集』第10巻2240番 と登場するが、これは文字通り「誰ですかあなたは」という意味である。  「平安時代には『うつほ物語』に「たそかれどき」の用例が現れ、さらに『源氏物語』に 「寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 夕顔の花」 — 『源氏物語』「夕顔」光源氏 と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。  なおこの歌は、帖と登場人物の名「夕顔」の由来になった夕顔の歌への返歌である。  またこの言葉の比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」をという語句の用い方をする。 漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。  「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。  この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。  それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。  読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。  作家 蔵屋日唱    

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

サインポールの下で、彼女は髪を切った

S.H.L
青春
長年連れ添った長い髪と、絡みつく過去の自分に別れを告げるため、女性は町の床屋の扉を開けた。華やかな美容院ではなく、男性客ばかりの昔ながらの「タケシ理容室」を選んだのは、半端な変化では満足できなかったから。 腰まであった豊かな黒髪が、ベテラン理容師の手によって、躊躇なく、そして丁寧に刈り上げられていく。ハサミの音、バリカンの振動、床に積もる髪の感触。鏡に映る自分のシルエットがみるみるうちに変わり果てていく様を見つめながら、彼女の心にも劇的な変化が訪れる。 失恋か、転職か、それとも──。具体的な理由は語られないまま、髪が短くなるにつれて剥き出しになっていくのは、髪に隠されていた頭の形だけではない。社会的な役割や、「女性らしさ」という鎧を脱ぎ捨て、ありのままの自分と向き合う過程が、五感を刺激する詳細な描写と内面の吐露と共に描かれる。 髪と共に過去を床に落とし、新しい自分としてサインポールの下から一歩踏み出す女性の、解放と再生の物語。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...