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愛とか恋とか
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ふらりと美沙子の家を出たシュンは、そのままふらふらと表を歩き続けた。
よく晴れた冬の空が広がっていた。あまり普段外に出ないので、冷たい空気が新鮮だった。肺がキリキリ痛むくらい冷え切った、真冬の空気。
どこに行こうかと思いを巡らしたのは一瞬で、自然と足は、向かうべき方向に向かう。
馴染んだ女。昔、まだヒモを始めたての頃、世話になった女の家だった。美沙子の家からは、歩いて30分くらいかかるのだが、それは別に構わなかった。外を歩くのは久しぶりだったから、なんなら散歩コースとしてちょうどいいくらいだった。
シュンは、黙々と歩き続けた。冬の真昼の繁華街。歩く人はみな、コートも着ていないシュンを横目でちらりと見ていく。
寒いな。
口の中でつぶやき、シュンは軽く背中を丸めた。
寒いのは嫌いだった。思い出したくないことは、なぜだか大抵冬に起こったから。
死んだ妹たち。男に犯された恐怖と屈辱。
子供みたいな男に刺された腹。
どれも、真冬の記憶だった。
冬は嫌いだ。
また口の中で呟く。
ナイフで削り取れそうなくらい凍てついた風を受けながら、シュンは足を早める。
30分歩いて、たどり着いたのは繁華街から少しだけ外れた場所にある高層マンションだ。シュンが昔世話になったとき、その女はごく小さなアパートの部屋を借りて住んでいた。それが今では、どこかの金持ちの愛人になったとかいう話で、この高級マンションの一室を住居にしている
オートロックをくぐり抜け、たどり着いた先の部屋の前に、女は赤いワンピース姿で立っていた。
初めて会ったときから10年は立つのだが、その容姿は全く衰えていない。
ただ、美しさの種類は少し変わった。昔は化粧もあまりしないで、素顔が透けるように美しい人だったのだが、今は金で磨かれた女特有の匂いがする。
「久しぶり、葉子さん。」
シュンが精一杯の愛想笑いをしてみせると、葉子は呆れたように少し眉を吊り上げてみせた。
「私のところに来るときは、いつも厄介ごと抱えてるのよね、あんたって。今度はどうしたの?」
はじめの出会いからして、腹を刺されて路上に倒れ込んでいたところを助けてもらった身だ。シュンはなにも言い返せず、素直に答えた。
「美沙子って女の子のとこにいたんですけど、その子が出稼ぎに行く間、弟を家においてったんです。俺、その弟のこと……、」
「抱いたのね。」
シュンが言い淀んだ言葉を、葉子の赤い唇があっさりと吐き出す。
シュンはこれまた素直に頷き、自然と小さくなる声で先を続けた。
「その弟、出ていかないんです。俺のこと、好きだっていうんです。」
葉子は長い睫毛を何度か上下させ、呆れたように肩をすくめた。
「それで、怖くなって逃げてきたってわけ?」
よく晴れた冬の空が広がっていた。あまり普段外に出ないので、冷たい空気が新鮮だった。肺がキリキリ痛むくらい冷え切った、真冬の空気。
どこに行こうかと思いを巡らしたのは一瞬で、自然と足は、向かうべき方向に向かう。
馴染んだ女。昔、まだヒモを始めたての頃、世話になった女の家だった。美沙子の家からは、歩いて30分くらいかかるのだが、それは別に構わなかった。外を歩くのは久しぶりだったから、なんなら散歩コースとしてちょうどいいくらいだった。
シュンは、黙々と歩き続けた。冬の真昼の繁華街。歩く人はみな、コートも着ていないシュンを横目でちらりと見ていく。
寒いな。
口の中でつぶやき、シュンは軽く背中を丸めた。
寒いのは嫌いだった。思い出したくないことは、なぜだか大抵冬に起こったから。
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どれも、真冬の記憶だった。
冬は嫌いだ。
また口の中で呟く。
ナイフで削り取れそうなくらい凍てついた風を受けながら、シュンは足を早める。
30分歩いて、たどり着いたのは繁華街から少しだけ外れた場所にある高層マンションだ。シュンが昔世話になったとき、その女はごく小さなアパートの部屋を借りて住んでいた。それが今では、どこかの金持ちの愛人になったとかいう話で、この高級マンションの一室を住居にしている
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ただ、美しさの種類は少し変わった。昔は化粧もあまりしないで、素顔が透けるように美しい人だったのだが、今は金で磨かれた女特有の匂いがする。
「久しぶり、葉子さん。」
シュンが精一杯の愛想笑いをしてみせると、葉子は呆れたように少し眉を吊り上げてみせた。
「私のところに来るときは、いつも厄介ごと抱えてるのよね、あんたって。今度はどうしたの?」
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「美沙子って女の子のとこにいたんですけど、その子が出稼ぎに行く間、弟を家においてったんです。俺、その弟のこと……、」
「抱いたのね。」
シュンが言い淀んだ言葉を、葉子の赤い唇があっさりと吐き出す。
シュンはこれまた素直に頷き、自然と小さくなる声で先を続けた。
「その弟、出ていかないんです。俺のこと、好きだっていうんです。」
葉子は長い睫毛を何度か上下させ、呆れたように肩をすくめた。
「それで、怖くなって逃げてきたってわけ?」
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