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食事を終えたシュンは、散歩に行ってくる、とソファから立ち上がった。
健少年が大きな目で怪訝そうにシュンを見上げた。
「散歩、ですか?」
「うん。」
もうこれ以上、この男の子と一緒にいるのが怖かった。
抱いてしまう。
それはほとんど確信で。
だから、長い散歩に出ようと思った。美沙子を迎えに行く明日の朝まで、ずっと歩き続けようと。
じゃあね、と部屋を出ていくシュンの腕を、健少年が掴んだ。
「待ってください。」
掴まれた腕を、シュンは振り払えなかった。なんなら、触れた箇所の細胞が喜んでいるような感じさえした。
触って欲しい。
それは、痛烈な欲望で。
「どこ、行くんですか? もう、夜なのに。」
どこだかは分からない。そして、夜だからこそ行くのだ。
そう答えてしまえばいいものの、シュンは口をつぐんだ。
口を開けば、余計なことまで口走ってしまいそうだった。
「俺が邪魔なら、奥に引っ込んでます。だから、ここにいてください。」
最後の夜なんだから、と、健少年が言った。
最後の夜だからこそ、ここにはいられない。
そう言い返そうとしたシュンの目の前で、健少年は白いノートとボールペンだけ持って、奥の寝室に引っ込んで行った。
シュンはソファに腰を落ち着け直し、深い溜め息をついた。
部屋を分けるくらいでは、近すぎるのだ。もっと、物理的に触れられない距離にいないとだめなのだ。
いっそ抱いてしまおうか。
何度でもよぎる言葉。
いっそ抱いてしまおうか。
あの身体を、もう一度。
その言葉を振り払うように、スマホを取り出して、美沙子に電話をかけようとした。明日何時に迎えに行けばいの、とか、健少年は今後どうするつもりなの、とか、今回の出稼ぎの首尾は、とか、いくらでも話題はあった。
けれどシュンの指は通話ボタンを押さない。
抱かなくても、側にいるだけでも、罪だろうか。
そんなことを、考えた。側にいたら、必ず抱いてしまうのに、まだすがるみたいに。
スマホを握りしめ、その手を額に押し付けるようにして背中を丸め、膝の上に肘を乗っける。
その格好のまま、どれだけじっとしていたのだろうか。唐突に、背後から名前を呼ばれた。
「……シュンさん?」
その声は当然ながら健少年のもので、シュンは、ぎこちなく彼を振り返った。
寝室の扉から半分顔を出すみたいにしてこっちの様子をうかがいながら、健少年はごく細い声を出した。
「シュンさん、そっち行ったら、駄目ですか?」
だめだよ、と、言いたかった。言うつもりだった。唇はその形に動いていた。
それでも、声が出なくて。
「……おいで。」
どうしようもないくらい、指が切なかった。今健少年に触れなければ、どうかなってしまいそうなくらいに。
伸ばしたシュンの手を、健少年が握った。薄いが大きな手のひら。
健少年が大きな目で怪訝そうにシュンを見上げた。
「散歩、ですか?」
「うん。」
もうこれ以上、この男の子と一緒にいるのが怖かった。
抱いてしまう。
それはほとんど確信で。
だから、長い散歩に出ようと思った。美沙子を迎えに行く明日の朝まで、ずっと歩き続けようと。
じゃあね、と部屋を出ていくシュンの腕を、健少年が掴んだ。
「待ってください。」
掴まれた腕を、シュンは振り払えなかった。なんなら、触れた箇所の細胞が喜んでいるような感じさえした。
触って欲しい。
それは、痛烈な欲望で。
「どこ、行くんですか? もう、夜なのに。」
どこだかは分からない。そして、夜だからこそ行くのだ。
そう答えてしまえばいいものの、シュンは口をつぐんだ。
口を開けば、余計なことまで口走ってしまいそうだった。
「俺が邪魔なら、奥に引っ込んでます。だから、ここにいてください。」
最後の夜なんだから、と、健少年が言った。
最後の夜だからこそ、ここにはいられない。
そう言い返そうとしたシュンの目の前で、健少年は白いノートとボールペンだけ持って、奥の寝室に引っ込んで行った。
シュンはソファに腰を落ち着け直し、深い溜め息をついた。
部屋を分けるくらいでは、近すぎるのだ。もっと、物理的に触れられない距離にいないとだめなのだ。
いっそ抱いてしまおうか。
何度でもよぎる言葉。
いっそ抱いてしまおうか。
あの身体を、もう一度。
その言葉を振り払うように、スマホを取り出して、美沙子に電話をかけようとした。明日何時に迎えに行けばいの、とか、健少年は今後どうするつもりなの、とか、今回の出稼ぎの首尾は、とか、いくらでも話題はあった。
けれどシュンの指は通話ボタンを押さない。
抱かなくても、側にいるだけでも、罪だろうか。
そんなことを、考えた。側にいたら、必ず抱いてしまうのに、まだすがるみたいに。
スマホを握りしめ、その手を額に押し付けるようにして背中を丸め、膝の上に肘を乗っける。
その格好のまま、どれだけじっとしていたのだろうか。唐突に、背後から名前を呼ばれた。
「……シュンさん?」
その声は当然ながら健少年のもので、シュンは、ぎこちなく彼を振り返った。
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「シュンさん、そっち行ったら、駄目ですか?」
だめだよ、と、言いたかった。言うつもりだった。唇はその形に動いていた。
それでも、声が出なくて。
「……おいで。」
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伸ばしたシュンの手を、健少年が握った。薄いが大きな手のひら。
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