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「美雨のことを知りたいの?」
滉青のすぐ隣に立ち、目の前に広げられたテーブルとマグカップ、クッションを見下ろしながら、函崎はからかうように言った。口調はからかうようでも、その目の色は、やけに真剣だった。だから滉青は、すんなりと頷くことができなかった。本当に知りたいのは、美雨のことではなくて、函崎のことだ。そして多分函崎は、そんな滉青の感情を誤解している。滉青が美雨に特別な感情を寄せ、美雨もそれに応えたからこの部屋には家具がふえたと、そんなふうに考えているのだろう。
「俺、」
知りたいのは、函崎さんのことです。
言葉にする前に、唇をふさがれた。指が絡められ、肩も重ねられる。
待ってくれ、と言いたかった。誤解だ。美雨と滉青の間には、なにもない。美雨は、行くところがない、と言った滉青に同情して寝場所を提供してくれているだけだし、滉青は、そうするしか函崎の影を追う方法がなくて、美雨の側を離れなかった。
「ねえ、しようよ。」
重ねられる誘惑と、漂う甘い香り。香水の類ではなく、函崎の肌や血が香っているみたいだった。
「美雨より、俺の方がいいと思うけど。」
その言葉を聞いて、滉青は確信を深めた。やっぱり函崎は、誤解している。
「俺、函崎さんのこと、」
「美雨は、きみのこと好きなんだろうね。」
「え?」
「ずっと、俺以外のものはなにもかも拒絶してきたのに。」
それで滉青は、美雨が家具を嫌ったのではなくて、函崎以外のなにもかもを嫌ったのだと気が付いた。函崎以外のものはいらない。ひともものも、なにもかも。そうやって、空っぽの部屋で函崎を待っていたのだ。
函崎の白い蔦みたいな指が、きっちりと結ばれた自分のネクタイをするするとほどく。作り物にしか見えない先細りの指がそんなふうに動くのが不思議で、滉青は茫然とその指の動きを見つめていた。そして、はっと我に返ったときにはもう、函崎はシャツのボタンを外し終えていた。男の匂いも、おんなの匂いもしない肌が、甘く香る。その香りに、もう滉青の理性は逆らえなかった。
函崎は、笑っていた。行為の最中、ずっと、笑っていた。なにもかもを嘲笑するような、無言の笑い。
滉青はそれに気が付いていたけれど、気が付かないふりをした。熱に浮かされたみたいになって、行為をやめることができなかったからだ。
頭の隅っこのほうで、このひとは、ずっとこうだったのかもしれない、と思った。うつくしさと色気に覆われていて、その殻の奥に誰も触れない。触れられないというよりは、触れる気がなくなるのだ。彼の肌の匂いにあてられると、どうしても。
滉青のすぐ隣に立ち、目の前に広げられたテーブルとマグカップ、クッションを見下ろしながら、函崎はからかうように言った。口調はからかうようでも、その目の色は、やけに真剣だった。だから滉青は、すんなりと頷くことができなかった。本当に知りたいのは、美雨のことではなくて、函崎のことだ。そして多分函崎は、そんな滉青の感情を誤解している。滉青が美雨に特別な感情を寄せ、美雨もそれに応えたからこの部屋には家具がふえたと、そんなふうに考えているのだろう。
「俺、」
知りたいのは、函崎さんのことです。
言葉にする前に、唇をふさがれた。指が絡められ、肩も重ねられる。
待ってくれ、と言いたかった。誤解だ。美雨と滉青の間には、なにもない。美雨は、行くところがない、と言った滉青に同情して寝場所を提供してくれているだけだし、滉青は、そうするしか函崎の影を追う方法がなくて、美雨の側を離れなかった。
「ねえ、しようよ。」
重ねられる誘惑と、漂う甘い香り。香水の類ではなく、函崎の肌や血が香っているみたいだった。
「美雨より、俺の方がいいと思うけど。」
その言葉を聞いて、滉青は確信を深めた。やっぱり函崎は、誤解している。
「俺、函崎さんのこと、」
「美雨は、きみのこと好きなんだろうね。」
「え?」
「ずっと、俺以外のものはなにもかも拒絶してきたのに。」
それで滉青は、美雨が家具を嫌ったのではなくて、函崎以外のなにもかもを嫌ったのだと気が付いた。函崎以外のものはいらない。ひともものも、なにもかも。そうやって、空っぽの部屋で函崎を待っていたのだ。
函崎の白い蔦みたいな指が、きっちりと結ばれた自分のネクタイをするするとほどく。作り物にしか見えない先細りの指がそんなふうに動くのが不思議で、滉青は茫然とその指の動きを見つめていた。そして、はっと我に返ったときにはもう、函崎はシャツのボタンを外し終えていた。男の匂いも、おんなの匂いもしない肌が、甘く香る。その香りに、もう滉青の理性は逆らえなかった。
函崎は、笑っていた。行為の最中、ずっと、笑っていた。なにもかもを嘲笑するような、無言の笑い。
滉青はそれに気が付いていたけれど、気が付かないふりをした。熱に浮かされたみたいになって、行為をやめることができなかったからだ。
頭の隅っこのほうで、このひとは、ずっとこうだったのかもしれない、と思った。うつくしさと色気に覆われていて、その殻の奥に誰も触れない。触れられないというよりは、触れる気がなくなるのだ。彼の肌の匂いにあてられると、どうしても。
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