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惨めに半分泣きながら、滉青は函崎を抱いた。こんなに惨めなセックスは、生まれてはじめてだと思った。
中学を卒業してすぐに、いい思い出のない親戚宅を飛び出した滉青は、それからずっと、ヒモとしてなんとか食ってきた。セックスは、自分の身体一つしか持たない彼に、当然のようについて回った。はじめてのセックスは、道端に蹲っていた滉青に、一夜の宿を与えてくれたおんなに襲われて。滉青は、そのおんなに母性の片鱗すら感じていたのに。そのときも、こんなに惨めなことは二度とないだろうと思ったけれど、これは、そのときをこえる。それなのに、目の前に広げられた白い肌を手放すことができない。
がちゃん、と、玄関のドアが開く音がしたのは、二度目の最中。滉青の下で軽く息を乱していた函崎は、それを聞いて、低く笑った。同じ音で我に返った滉青は、函崎から身を離して服を着ようとしたのだけれど、函崎がそれを許さなかった。二本の繊細に細い腕が、予想外の強さで滉青にまきつき、身動きをさせない。
「函崎さん!?」
離して、と、必死になった滉青が彼の名前を呼ぶと同時に、静かにひそめられた足音がして、寝室のドアが開いた。当然ながら、美雨だった。
玄関には、滉青のスニーカーに並んで函崎の革靴も脱いであったのだから、誰かが中にいることは、というか、函崎が中にいることは、美雨だって分かっていただろう。電気のついた、明るい部屋のベッドの上、絡み合う男二人分の身体。滉青は、美雨が出ていくことを願ったのだけれど、そうはならなかった。美雨は、そのままその場に腰を下して華奢な膝を抱え、長い髪を肩の後ろに払うと、じっと滉青と函崎を見つめた。滉青は、その場からの逃げ出すか、いっそ消えてしまいたい気持ちになったのだけれど、それでもまだ、性欲が 萎えていないのが不思議だった。もうここにはいたくないと、心底思っているのに。
美雨は、なにも言わなかった。函崎も、なにも言わなかった。滉青に、なにか言えるような権利なんてそもそもなかった。
滉青は、義務というか、いっそ使命みたいな気分で、美雨の視線の中で行為を続けた。生贄の儀式にでも捧げられたみたいな心持がしていた。美雨と、函崎のための生贄。ずっと、分かってはいたけれど、当たり前のこととして理解してはいたけれど、物語の主人公は美雨と函崎で、自分は途中参加したただの脇役でしかない。そのことを、滉青は深く深く実感しながら、多分最後になるのであろう函崎の身体を、もう感覚なんて分からなくなりながらも、ヒモとしての手順に沿って抱いていた。
中学を卒業してすぐに、いい思い出のない親戚宅を飛び出した滉青は、それからずっと、ヒモとしてなんとか食ってきた。セックスは、自分の身体一つしか持たない彼に、当然のようについて回った。はじめてのセックスは、道端に蹲っていた滉青に、一夜の宿を与えてくれたおんなに襲われて。滉青は、そのおんなに母性の片鱗すら感じていたのに。そのときも、こんなに惨めなことは二度とないだろうと思ったけれど、これは、そのときをこえる。それなのに、目の前に広げられた白い肌を手放すことができない。
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離して、と、必死になった滉青が彼の名前を呼ぶと同時に、静かにひそめられた足音がして、寝室のドアが開いた。当然ながら、美雨だった。
玄関には、滉青のスニーカーに並んで函崎の革靴も脱いであったのだから、誰かが中にいることは、というか、函崎が中にいることは、美雨だって分かっていただろう。電気のついた、明るい部屋のベッドの上、絡み合う男二人分の身体。滉青は、美雨が出ていくことを願ったのだけれど、そうはならなかった。美雨は、そのままその場に腰を下して華奢な膝を抱え、長い髪を肩の後ろに払うと、じっと滉青と函崎を見つめた。滉青は、その場からの逃げ出すか、いっそ消えてしまいたい気持ちになったのだけれど、それでもまだ、性欲が 萎えていないのが不思議だった。もうここにはいたくないと、心底思っているのに。
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