三親等

美里

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 諒ちゃんは、背負ってたバックパックを下すと、中から黒い保冷バックを取り出した。私が子どもの頃から、ずっと使っている古い保冷バックだ。その中から出てきたのは、おにぎりが四つ。どれも黄色い卵にくるまれている。
 「……また、オムライス。」
 私が思わず呟くと、諒ちゃんは口笛をやめて低く笑った。
 「好きだろ?」
 「……うん。」
 諒ちゃんが小さめのおにぎりを二つ、私に寄越す。私はサランラップをむいて、それを一口齧った。馴染んだチキンライスの味。
 船井くんは、今頃どうしているだろうか。デートはやめたい、と、昨晩電話をすると、うん、とだけ短く頷いた男の子は。
 「……もう、男の子とデートって、しないかも。」
 船井くんに申し訳ないような気がしてそう言った私を、諒ちゃんは意外そうに眉を上げて見た。
 「なんで?」
 「なんでって……じゃあ、諒ちゃんはなんで女のひととデートするの?」
 短い、間ができた。諒ちゃんは銀色の魔法瓶に詰めたお茶を啜り、私の頭ごしに緑に燃える葉っぱを眺めているようだった。
 「……なんでだろうな。」
 「好きだからじゃ、ないの?」
 「真希は? 船井くんのこと、好きじゃなかったの?」
 私は言葉に詰まり、黙って首を傾げた。好きとか好きじゃないとかいうくらい、私は船井くんのことを知らない気がした。同じクラスで、この前の席替えまでは、隣の席に座っていた男の子。優しかった、と思う。話も時々したけれど、その話し方が。だけど、船井くんの友達から、船井が今度の土曜空いてたら会いたいって、なんて言われるまで、私は船井くんのことをきちんと一人の人間として把握もしていなかった気がする。
 「……いいひとって、言ってた。咲ちゃんが。」
 咲ちゃんは、私の友達で、男の子との付き合い方について、かなり詳しい。自分は今、塾の先生と良い中になったりしている。
 「真希は? いいひとだって思ってたの?」
 「……うん。」
 嘘では、なかった。静かな声で喋る、成績のいい、ノートを貸してくれた、いいひと。でも、そのいいひとと、なんで二回デートしてみたのかも、三回めは断ったのかも、キスをしてみる気にならなかったのかも、よく分からない。気持ちが、曖昧模糊としている。
 「そっか。」
 諒ちゃんが、伸びてきた髪を風に揺らしながら唇を笑わせた。
 「そのうち、もっといいやつが見つかる。キスは、それからにすればいい。」
 うん、と、私は頷いた。そして、諒ちゃんと、もう船井くんの話はせずにおにぎりを食べ、山を下りた。今度は二人で、口笛を吹いて。
 
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