コウちゃんと一回くらいセックスしてみたかったな

美里

文字の大きさ
15 / 18

しおりを挟む
 夢菜は手の甲でぐいりと涙を拭うと、黙って部屋を出ていった。煙草を吸いに行ったのだろうか。自分の失恋でもないのに?
 私は首を傾げ、コウちゃんを見た。コウちゃんは、すいすいと水みたいにビールを干していた。
 「……夢菜、どこ行ったのかな?」
 「部屋でしょ。煙草吸いに。」
 「自分が失恋したわけでもないのに?」
 私が訊くと、コウちゃんは軽く眉を寄せた。その表情を見ていた私は、なんだか責められている感じがして、いい気はしなかった。
 「なんで夢菜が泣くの?」
 さらに問いを重ねると、コウちゃんは今度は私を呆れた目で見てきた。なんでそんな分かりきったことを、とでも言いたげな目だった。
 「そりゃ、悲しいからでしょ。」
 「でも、夢菜の失恋じゃないのよ。それに、私は泣くほど傷ついてもいないし。」
 「蘭子って、案外冷血だよね。」
 コウちゃんの目も、表情も、物言いも、私は気にくわなかった。だって、私は悪いことはしていない。失恋したのは私の勝手だし、失恋飲み会を開いたのは夢菜の勝手だ。そこで泣いたのが夢菜の勝手なら、訳が分からず戸惑うのは私の勝手なはずだ。冷血、だなんて言われる筋合いはない。
 私は怒りにまかせて、温くなった檸檬サワーを飲み干した。コウちゃんは、目だけで笑って私を見た。なによ、と、私が怒ろうとしたとき、夢菜が戻ってきた。目を赤く泣き腫らして、煙草の匂いと一緒に。
 ちょっとふらつきながらテーブルにつき、新しいハイボールの缶を開ける夢菜を見ていると、私はなにも言えなくなってしまった。本当に、私は冷血なのかもしれない、とも思った。
 「……俺、帰ろうかな。」
 ぽつん、と、コウちゃんが言った。私と夢菜は、一斉にコウちゃんを見た。コウちゃんが、飲み会の途中でそんなことを言いだすのははじめてだった。コウちゃんはいつでも、夢菜に付き合って酒をたらふく飲み、翌日の朝に帰って行く。なのに、どうしたのだろうか。
 「なんで?」
 そう言ったのは私で、
 「邪魔になんか、してないよ。」
 そう言ったのは夢菜だった。
 邪魔ってなんのこと、と、私は驚いてしまった。なんというか、私たちの間には、そんな単語なんてないだろう、と思って。
 コウちゃんは、私と夢菜を順番に見て、ふわりと目もとを緩めて笑った。そして、嘘嘘、まだまだ飲むよ、と言って、ビールの缶を傾けた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

田舎の幼馴染に囲い込まれた

兎角
恋愛
25.10/21 殴り書きの続き更新 都会に飛び出した田舎娘が渋々帰郷した田舎のムチムチ幼馴染に囲い込まれてズブズブになる予定 ※殴り書きなので改行などない状態です…そのうち直します。

処理中です...