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結局私たちは、いつもの失恋飲み会みたいに、真夜中までお酒を飲んだ。
最初にダウンしたのは夢菜で、ハイボールの缶を持ったままうとうとしはじめた。私が夢菜から缶をとりあげてテーブルに置くと、夢菜は口の中でもごもごと、まだ飲む、みたいなことを言った。私はそれを聞いて、なんだか胸が苦しくなった。
「また今度飲もう。」
私は胸の苦しさをかき消すみたいにそう言って、夢菜の肩を掴んでその場に転がした。お腹に、万年床から取ったタオルケットをかける。いつものように雑魚寝だな、と思って、コウちゃんの方を見た。すると、コウちゃんももう、ビールの缶をテーブルに置いて、万年床の横らへんに転がっていた。私は部屋の電気を消して、万年床にもぐり込んだ。夢菜の寝息が、すやすやと静かに流れていた。私はぼんやりそれを聞きながら、目を閉じて眠気に身を任せようとした。そこで、ふと気が付く。コウちゃんの寝息が聞こえない。コウちゃんはいつも、小動物みたいな寝息を立てて眠る。
あれ、コウちゃん、寝てないのかな。
一回そう思うと、妙に気になって、目が冴えてしまう、寝返りを打ってコウちゃんの方を向こうとしたとき、背中からがばりと身体を抱え込まれた。え、と驚いたと同時に、かぎ慣れたコウちゃんの匂いに包まれる。
妙なことになっている。私は身体を固くしたけれど、同時にちょっと期待もした。コウちゃんと、一回くらいセックスしてみたい。その気持ちは変わらずに私の中にあった。単純な、子どもの好奇心みたいな顔をして。
数秒の間の後、コウちゃんの手は私のシャツの中に入ってきた。ぷつん、と、ブラジャーのホックが外される。その手つきは、不誠実なくらい鮮やかだった。私は、ちょっと前まで交際していた大学生のことを思い出した。はじめてのとき、私のブラジャーを外せずにもたもたしていた男の子。
胸の方にコウちゃんの手が這ってくるのを待ったけれど、なかなかコウちゃんの手は動かない、長い、沈黙があった。
私は痺れを切らして、寝返りを打ってコウちゃんの方に向こうとした。すると、その動作を察したコウちゃんが、私をぎゅっと抱いて動きをふうじてきた。
「やっぱり蘭子は夢菜みたいにはならないね。」
耳元で囁かれた、言葉。私を責めるみたいでもなければ、嘆くみたいでもなく、ただの事実確認みたいに、なんならちょっと安堵の色さえ浮かべて。
その数秒後、コウちゃんの腕がほどけた。首だけで振り向いてみると、コウちゃんはこちらに背中を向けて寝ているようだった。しばらくすると、いつもの小動物みたいな寝息が聞こえてくる。
私は、眠れなかった。じっと天井を見上げてコウちゃんの言った意味を考えていたけれど、分からないうちに、カーテンから朝の光が差し込んできてしまった。
コウちゃんが、帰ってしまう。
引き留めたかったのかもしれない。でも、私は引き留め方も知らなかった。やがて目を覚ましたコウちゃんと夢菜は、いつもみたいに、じゃあ、と手を振って帰って行った。それが、コウちゃんが生きている間の最後の失恋飲み会になった。
最初にダウンしたのは夢菜で、ハイボールの缶を持ったままうとうとしはじめた。私が夢菜から缶をとりあげてテーブルに置くと、夢菜は口の中でもごもごと、まだ飲む、みたいなことを言った。私はそれを聞いて、なんだか胸が苦しくなった。
「また今度飲もう。」
私は胸の苦しさをかき消すみたいにそう言って、夢菜の肩を掴んでその場に転がした。お腹に、万年床から取ったタオルケットをかける。いつものように雑魚寝だな、と思って、コウちゃんの方を見た。すると、コウちゃんももう、ビールの缶をテーブルに置いて、万年床の横らへんに転がっていた。私は部屋の電気を消して、万年床にもぐり込んだ。夢菜の寝息が、すやすやと静かに流れていた。私はぼんやりそれを聞きながら、目を閉じて眠気に身を任せようとした。そこで、ふと気が付く。コウちゃんの寝息が聞こえない。コウちゃんはいつも、小動物みたいな寝息を立てて眠る。
あれ、コウちゃん、寝てないのかな。
一回そう思うと、妙に気になって、目が冴えてしまう、寝返りを打ってコウちゃんの方を向こうとしたとき、背中からがばりと身体を抱え込まれた。え、と驚いたと同時に、かぎ慣れたコウちゃんの匂いに包まれる。
妙なことになっている。私は身体を固くしたけれど、同時にちょっと期待もした。コウちゃんと、一回くらいセックスしてみたい。その気持ちは変わらずに私の中にあった。単純な、子どもの好奇心みたいな顔をして。
数秒の間の後、コウちゃんの手は私のシャツの中に入ってきた。ぷつん、と、ブラジャーのホックが外される。その手つきは、不誠実なくらい鮮やかだった。私は、ちょっと前まで交際していた大学生のことを思い出した。はじめてのとき、私のブラジャーを外せずにもたもたしていた男の子。
胸の方にコウちゃんの手が這ってくるのを待ったけれど、なかなかコウちゃんの手は動かない、長い、沈黙があった。
私は痺れを切らして、寝返りを打ってコウちゃんの方に向こうとした。すると、その動作を察したコウちゃんが、私をぎゅっと抱いて動きをふうじてきた。
「やっぱり蘭子は夢菜みたいにはならないね。」
耳元で囁かれた、言葉。私を責めるみたいでもなければ、嘆くみたいでもなく、ただの事実確認みたいに、なんならちょっと安堵の色さえ浮かべて。
その数秒後、コウちゃんの腕がほどけた。首だけで振り向いてみると、コウちゃんはこちらに背中を向けて寝ているようだった。しばらくすると、いつもの小動物みたいな寝息が聞こえてくる。
私は、眠れなかった。じっと天井を見上げてコウちゃんの言った意味を考えていたけれど、分からないうちに、カーテンから朝の光が差し込んできてしまった。
コウちゃんが、帰ってしまう。
引き留めたかったのかもしれない。でも、私は引き留め方も知らなかった。やがて目を覚ましたコウちゃんと夢菜は、いつもみたいに、じゃあ、と手を振って帰って行った。それが、コウちゃんが生きている間の最後の失恋飲み会になった。
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