5 / 20
2
しおりを挟む
「脱いで。」
私は男の膝に馬乗りになり、シャツの襟首をひっつかんだ。
「脱いでよ。」
そのまま、癇癪を起こした子供みたいに、無理やり引っ張ってシャツを引き剥がそうとすると、男はさほど驚いた様子もなく、自分の手でシャツのボタンを外した。
「なんなの。着ろって言ったり、脱げって言ったり。」
発せられた言葉も、あくまでもさらりとしていて、動揺の色はまるでなかった。
うるさいな、と、私は男の唇を自分のそれで噛みつくように塞いだ。
「抱けよ。香也にしてるみたいに。」
半分喚くような声が出た。完全に、頭に血が上っていったのだ。
男はそれでも動じず、シャツを脱ぐと平然と私のワンピースのファスナーを下ろした。
「なに? アナルセックスがお好みなの?」
完全に、バカにされている。
腹は立った。でもそれより今は、この男に抱かれたかった。
私は、香也がこの男から離れられない理由を知りたかったのだ。それがこの男のセックスにあるのだとしたら、香也を諦められるのかもしれない。だって、私は香也を抱けはしないから。
女抱くのは久しぶりだなあ、と、歌うように男が言った。
「抱いたこと、あるの?」
「あるよ。昔ね。今は男ばっかりだな。」
香也の話を聞いているだけでも、目の前の男が一途とは程遠い性格をしていることは分かっていた。
それが、悔しかったのかもしれない。私には、香也しかいないのに。
「ずるい。」
言葉は勝手に喉から滑り落ちてきた。自分でも言うつもりなんかない言葉だったから、私は自分で自分の発言に驚き、固まってしまった。
すると香也の男は、軽く首を傾げて私の顔を覗き込んできた。
真っ黒い瞳をしていた。見つめられたら、この人に愛されているのではないかと勘違いしそうになるくらい、まっすぐで黒い瞳。
「そんなに香也がほしいなら、やるよ。俺、あんたのこと結構好きよ?」
最低な台詞だと思った。それでも私はその言葉にすがった。
「ほしい。」
私の声は涙にまみれていた。目からは一粒のそれも流れては来ないくせに。
「いいよ。」
男はあっさり頷くと、私の肩を掴み、布団へそっと押し倒してきた。
男の大きな身体が覆いかぶさってくる。私は目を閉じて、男の体温を感じていた。香也も、この体温を感じていたはずだ、と思いながら。
私は男の膝に馬乗りになり、シャツの襟首をひっつかんだ。
「脱いでよ。」
そのまま、癇癪を起こした子供みたいに、無理やり引っ張ってシャツを引き剥がそうとすると、男はさほど驚いた様子もなく、自分の手でシャツのボタンを外した。
「なんなの。着ろって言ったり、脱げって言ったり。」
発せられた言葉も、あくまでもさらりとしていて、動揺の色はまるでなかった。
うるさいな、と、私は男の唇を自分のそれで噛みつくように塞いだ。
「抱けよ。香也にしてるみたいに。」
半分喚くような声が出た。完全に、頭に血が上っていったのだ。
男はそれでも動じず、シャツを脱ぐと平然と私のワンピースのファスナーを下ろした。
「なに? アナルセックスがお好みなの?」
完全に、バカにされている。
腹は立った。でもそれより今は、この男に抱かれたかった。
私は、香也がこの男から離れられない理由を知りたかったのだ。それがこの男のセックスにあるのだとしたら、香也を諦められるのかもしれない。だって、私は香也を抱けはしないから。
女抱くのは久しぶりだなあ、と、歌うように男が言った。
「抱いたこと、あるの?」
「あるよ。昔ね。今は男ばっかりだな。」
香也の話を聞いているだけでも、目の前の男が一途とは程遠い性格をしていることは分かっていた。
それが、悔しかったのかもしれない。私には、香也しかいないのに。
「ずるい。」
言葉は勝手に喉から滑り落ちてきた。自分でも言うつもりなんかない言葉だったから、私は自分で自分の発言に驚き、固まってしまった。
すると香也の男は、軽く首を傾げて私の顔を覗き込んできた。
真っ黒い瞳をしていた。見つめられたら、この人に愛されているのではないかと勘違いしそうになるくらい、まっすぐで黒い瞳。
「そんなに香也がほしいなら、やるよ。俺、あんたのこと結構好きよ?」
最低な台詞だと思った。それでも私はその言葉にすがった。
「ほしい。」
私の声は涙にまみれていた。目からは一粒のそれも流れては来ないくせに。
「いいよ。」
男はあっさり頷くと、私の肩を掴み、布団へそっと押し倒してきた。
男の大きな身体が覆いかぶさってくる。私は目を閉じて、男の体温を感じていた。香也も、この体温を感じていたはずだ、と思いながら。
0
あなたにおすすめの小説
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる