27 / 35
8
しおりを挟む
ユキを拾って祐一宅まで持ってきたのは、ユキの買主に呼び出された青井だった。背中に縛り付けた毛布の包み。中には血と精液とよく分らない粘液にまみれたユキ。
生まれたての馬の子みたいだ、と、ユキの金髪がぬらぬらと光るのを見ながら、安奈は思った。
こうなるだろうと分かってはいた。この前ユキが愛人契約をした時だってそうだったから。買主は、契約期間中はユキをどう扱っても構わない。それで契約期間が切れるその日に、ユキをずたぼろに犯しつくして返却する。そういう男は多かった。
電話で早朝にたたき起こされた祐一は、もはや見慣れているユキの絶望的な姿を見て、それでもきちんと慌てた。なんて健康的なリアクション。
安奈と青井はぼうっと突っ立っていた。中学校のグラウンドに引き戻されたみたいな気分で。
「安奈、お湯沸かして! 青井、包帯と消毒液買ってきて!」
「金ないけど。」
「ユキの鞄に札束はいってるでしょ!」
極限まで汚れたユキを、躊躇いなく自分のベッドに寝かせた祐一は、安奈が沸かしたお湯で彼の身体を丁寧に拭き清める。
大丈夫、死なないよ、これくらいじゃ。
経験上安奈はそう言い切れるのだが、絶対に祐一が怒るので黙っている。黙ったまま、部屋の隅に突っ立っている。
「ほい、包帯と消毒。」
お使いから帰って来た青井も、そうすることが決められているみたいに、ふらりと安奈の隣に並んだ。することがない同士。できることがない同士。
「ユキ、ユキ、」
何度も必死の声で呼びかけながら、祐一がユキの体中の傷に消毒液をぶちまけ、包帯やガーゼで覆っていく。
「いつものことじゃん。」
隣の青井にだけ聞こえるように安奈がひっそりと言うと、青井も小さく肩をすくめるように頷いた。
いつものこと。
薄く目を開いたユキが、安奈と青井を見て困ったように曖昧に口を開いた。口の両脇は無残に裂けてて血が流れているし、口を開けたところで声などもはや出るはずもないだろうに。
「……それでも、かなしいのね。」
ほとんど独り言のそれには、今度は青井もなにも答えなかった。
分かってる、安奈だって毎日のように今のユキに近い姿になるまで乱交を繰り返している。人になにを言える筋合もない。
狭いがきちんと整頓された祐一の寝室に、ユキ、ユキ、と、必死の声だけが延々と響いている。
生まれたての馬の子みたいだ、と、ユキの金髪がぬらぬらと光るのを見ながら、安奈は思った。
こうなるだろうと分かってはいた。この前ユキが愛人契約をした時だってそうだったから。買主は、契約期間中はユキをどう扱っても構わない。それで契約期間が切れるその日に、ユキをずたぼろに犯しつくして返却する。そういう男は多かった。
電話で早朝にたたき起こされた祐一は、もはや見慣れているユキの絶望的な姿を見て、それでもきちんと慌てた。なんて健康的なリアクション。
安奈と青井はぼうっと突っ立っていた。中学校のグラウンドに引き戻されたみたいな気分で。
「安奈、お湯沸かして! 青井、包帯と消毒液買ってきて!」
「金ないけど。」
「ユキの鞄に札束はいってるでしょ!」
極限まで汚れたユキを、躊躇いなく自分のベッドに寝かせた祐一は、安奈が沸かしたお湯で彼の身体を丁寧に拭き清める。
大丈夫、死なないよ、これくらいじゃ。
経験上安奈はそう言い切れるのだが、絶対に祐一が怒るので黙っている。黙ったまま、部屋の隅に突っ立っている。
「ほい、包帯と消毒。」
お使いから帰って来た青井も、そうすることが決められているみたいに、ふらりと安奈の隣に並んだ。することがない同士。できることがない同士。
「ユキ、ユキ、」
何度も必死の声で呼びかけながら、祐一がユキの体中の傷に消毒液をぶちまけ、包帯やガーゼで覆っていく。
「いつものことじゃん。」
隣の青井にだけ聞こえるように安奈がひっそりと言うと、青井も小さく肩をすくめるように頷いた。
いつものこと。
薄く目を開いたユキが、安奈と青井を見て困ったように曖昧に口を開いた。口の両脇は無残に裂けてて血が流れているし、口を開けたところで声などもはや出るはずもないだろうに。
「……それでも、かなしいのね。」
ほとんど独り言のそれには、今度は青井もなにも答えなかった。
分かってる、安奈だって毎日のように今のユキに近い姿になるまで乱交を繰り返している。人になにを言える筋合もない。
狭いがきちんと整頓された祐一の寝室に、ユキ、ユキ、と、必死の声だけが延々と響いている。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる