15 / 19
2
しおりを挟む
「明日はマックがいいねー。てりたま食べたい。」
「それな。じゃあマック期待してる。」
ルリ子と寝るのは楽だ。セックスもしなくていいし、腕枕やハグの必要もない。セミダブルのベッドで、お互い身体が触れあうこともなく、ただ眠る。肩がこらないし、変なところの筋も傷めない。
「鏡ちゃん今度はいつまでここにいるの?」
「目途が立ってないんだよなー、それが。」
鏡太郎としては随分軽い気持ちで口にしたそれだった。それなのに、真上を向いて寝ていたルリ子が、ぐるん、と首を鏡太郎の方にめぐらした。いきなり、からくり人形みたいに。
「だめだよ、それは。」
思ってもいなかった反応に驚いた鏡太郎は、完全に素の口調で、え、なんで、と訊きかえした。
確かにこれまでは、ルリ子の家に泊まるときはいつでも次の行き先の目途はあった。次の女があと三日もあれば転がせる、とか、喧嘩した女の機嫌を取るのに多分二日はかかる、とか。
けれどこんなにくっきりと滞在を拒まれるとは思ってもみなかった。
「だめに決まってるじゃん。だってルリ子だって、うるさい女みたいになるかもよ。」
「ならないだろ、あんたは。」
「今はね。だって鏡ちゃん、そういう女、嫌いじゃない。」
突如としてあやしくなる雲行き。鏡太郎はなんとなく息を潜めたまま、正面から真っ直ぐ自分を見つめて来るルリ子の視線から目を逸らした。
「あんた、俺が好きなの?」
問えばルリ子は馬鹿にしたように鼻で笑った。
「まさか。」
「だったら、別に……。」
「でも、一人は寂しいじゃん。」
「寂しいか?」
「寂しいよ。だから鏡ちゃんだって女の家ふらふらしてるんでしょ。」
そう言われて、鏡太郎は曖昧に首をひねって無言を貫いた。
寂しいから女の家をふらふらしている自覚はなかった。単純に家と金がないからふらふらしているだけで。
「でもね、どんなにふらふらしたって、どこにもいないのよ。」
「誰が?」
「鏡ちゃんが、好きな人。」
すぱっと空気を切るような小気味いいルリ子の物言いは、鏡太郎の脳裏にくっきりと茜の面影を思い出させた。最初で最後のセックス。ずっと笑っていた茜。
「……わかってるよ。」
「わかってないよ。」
「わかってる。」
「わかってない。」
いつもさらりとしていて、鏡太郎のことなんてどうでもいいような素振りをするルリ子が、今日は鏡太郎を離そうとしない。
「それな。じゃあマック期待してる。」
ルリ子と寝るのは楽だ。セックスもしなくていいし、腕枕やハグの必要もない。セミダブルのベッドで、お互い身体が触れあうこともなく、ただ眠る。肩がこらないし、変なところの筋も傷めない。
「鏡ちゃん今度はいつまでここにいるの?」
「目途が立ってないんだよなー、それが。」
鏡太郎としては随分軽い気持ちで口にしたそれだった。それなのに、真上を向いて寝ていたルリ子が、ぐるん、と首を鏡太郎の方にめぐらした。いきなり、からくり人形みたいに。
「だめだよ、それは。」
思ってもいなかった反応に驚いた鏡太郎は、完全に素の口調で、え、なんで、と訊きかえした。
確かにこれまでは、ルリ子の家に泊まるときはいつでも次の行き先の目途はあった。次の女があと三日もあれば転がせる、とか、喧嘩した女の機嫌を取るのに多分二日はかかる、とか。
けれどこんなにくっきりと滞在を拒まれるとは思ってもみなかった。
「だめに決まってるじゃん。だってルリ子だって、うるさい女みたいになるかもよ。」
「ならないだろ、あんたは。」
「今はね。だって鏡ちゃん、そういう女、嫌いじゃない。」
突如としてあやしくなる雲行き。鏡太郎はなんとなく息を潜めたまま、正面から真っ直ぐ自分を見つめて来るルリ子の視線から目を逸らした。
「あんた、俺が好きなの?」
問えばルリ子は馬鹿にしたように鼻で笑った。
「まさか。」
「だったら、別に……。」
「でも、一人は寂しいじゃん。」
「寂しいか?」
「寂しいよ。だから鏡ちゃんだって女の家ふらふらしてるんでしょ。」
そう言われて、鏡太郎は曖昧に首をひねって無言を貫いた。
寂しいから女の家をふらふらしている自覚はなかった。単純に家と金がないからふらふらしているだけで。
「でもね、どんなにふらふらしたって、どこにもいないのよ。」
「誰が?」
「鏡ちゃんが、好きな人。」
すぱっと空気を切るような小気味いいルリ子の物言いは、鏡太郎の脳裏にくっきりと茜の面影を思い出させた。最初で最後のセックス。ずっと笑っていた茜。
「……わかってるよ。」
「わかってないよ。」
「わかってる。」
「わかってない。」
いつもさらりとしていて、鏡太郎のことなんてどうでもいいような素振りをするルリ子が、今日は鏡太郎を離そうとしない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる