11 / 34
7
しおりを挟む
朝の光がリビングいっぱいに射してくる頃、ソラとユウは寝室に引っ込んだ。遮光カーテンの引かれた寝室は真っ暗で、さながら夜の続きだ。ソラは、そのことになんとなく安堵した。母親と暮らしていた頃、夜は明らかに畏怖と嫌悪の対象だったのに。
「ソラは、朝起きて夜寝た方が良いと思うんだよね。」
電気をつけて、白いシャツを脱ぎ、寝間着代わりのスウェットに着替えながら、ユウが言った。その、いかにも売り物として整えられえた、均整がとれたうつくしい身体から、ソラは視線を逃がした。直視するのが、怖いような気がしたのだ。
「……ユウさんと、一緒でいいんです。」
「でも、身体に悪いよ、この生活は。」
なにか自覚症状があるのだろう、上半身裸のまま、軽く肩など回しながらユウが言う。ソラは、早く服を着てくれ、と思いながら、首を横に振った。
「いいんです。」
本当は、一緒でいい、のではなく、一緒がいい、のだけれど、そんなことを言い出したら、気持ち悪がられるのではないかという気がして、それ以上なにも言えなかった。ユウはスウェットを頭から被りながら、そう? と軽く語尾を上げた。
「……はい。」
「じゃあ、一回様子見だね、しばらく昼夜逆転してたら、多分体調悪くなるから、そしたら生活戻ればいいよ。」
「……はい。」
生まれてから今日に至るまで、ソラの生活リズムはめちゃくちゃだった。夜寝ていても、母親が帰ってきたら外に出て徘徊しているしかなかったし、昼に仮眠をとっていても、母の絶叫や金切声に目を覚ませられ、逃げ出したりもした。そうやって切れ切れに、眠ったり起きたりしていたので、日にちの感覚がろくになかったくらいだ。だから、昼夜逆転だとしても、体調はおそらく悪くはならない。これまでよりは、ましになるはずだ。ただ、ユウにその理屈を話す気にはどうしてもなれなくて、ソラは黙ったまま、借り物のTシャツに着替えて布団にもぐりこんだ。
「明日は少し早く起きて、買い物に行こう。」
こちらもベッドに入ったユウが、ごく当たり前のことを確認するような口調で言う。ソラは、頷くことさえできずに身を固くしていた。明日の約束なんて、これまで与えられたこともないから、信じることなんて到底できなくて。
そんなソラを、眠っていると理解したのだろう。ユウはそれだけ言って口をつぐみ、しばらくすると、安らかな寝息を立てだした。ソラは、しばらく眠れずにユウの台詞を反芻していたけれど、やがて眠気に全身を覆われ、意識を手放した。
「ソラは、朝起きて夜寝た方が良いと思うんだよね。」
電気をつけて、白いシャツを脱ぎ、寝間着代わりのスウェットに着替えながら、ユウが言った。その、いかにも売り物として整えられえた、均整がとれたうつくしい身体から、ソラは視線を逃がした。直視するのが、怖いような気がしたのだ。
「……ユウさんと、一緒でいいんです。」
「でも、身体に悪いよ、この生活は。」
なにか自覚症状があるのだろう、上半身裸のまま、軽く肩など回しながらユウが言う。ソラは、早く服を着てくれ、と思いながら、首を横に振った。
「いいんです。」
本当は、一緒でいい、のではなく、一緒がいい、のだけれど、そんなことを言い出したら、気持ち悪がられるのではないかという気がして、それ以上なにも言えなかった。ユウはスウェットを頭から被りながら、そう? と軽く語尾を上げた。
「……はい。」
「じゃあ、一回様子見だね、しばらく昼夜逆転してたら、多分体調悪くなるから、そしたら生活戻ればいいよ。」
「……はい。」
生まれてから今日に至るまで、ソラの生活リズムはめちゃくちゃだった。夜寝ていても、母親が帰ってきたら外に出て徘徊しているしかなかったし、昼に仮眠をとっていても、母の絶叫や金切声に目を覚ませられ、逃げ出したりもした。そうやって切れ切れに、眠ったり起きたりしていたので、日にちの感覚がろくになかったくらいだ。だから、昼夜逆転だとしても、体調はおそらく悪くはならない。これまでよりは、ましになるはずだ。ただ、ユウにその理屈を話す気にはどうしてもなれなくて、ソラは黙ったまま、借り物のTシャツに着替えて布団にもぐりこんだ。
「明日は少し早く起きて、買い物に行こう。」
こちらもベッドに入ったユウが、ごく当たり前のことを確認するような口調で言う。ソラは、頷くことさえできずに身を固くしていた。明日の約束なんて、これまで与えられたこともないから、信じることなんて到底できなくて。
そんなソラを、眠っていると理解したのだろう。ユウはそれだけ言って口をつぐみ、しばらくすると、安らかな寝息を立てだした。ソラは、しばらく眠れずにユウの台詞を反芻していたけれど、やがて眠気に全身を覆われ、意識を手放した。
11
あなたにおすすめの小説
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる