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守護神
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祖母は、私たちの守護神だった。
寝たきりで目も覚まさない祖母が寝ていた六畳間。そこが私と永遠子の全てだった。はじめてキスをしたのも、はじめてセックスをしたのも、その六畳間だった。
母も姉も弟も父も寄り付かないその部屋で、私達は毎日を過ごした。学校が終わると一緒にその部屋へ入り、時々はそのままそこで眠った。母は、永遠子を客間に泊めるように言ったけれど、私たちは笑ってそれを拒んだ。祖母が守ってくれるこの部屋以外の場所では、私たちは恋人同士でいられなかったから。
中学1年生のときに東京から引っ越してきた永遠子は、この田舎の町で明らかに一人だけ垢ぬけていた。残酷な子供たちは、そんな永遠子を受け入れはしなかった。私も、当初は彼女を受け入れなかった。ただ、理由は他の子どもたちとは違っていた。
怖かったのだ。うつくしい永遠子が。
恋に落ちたのは、先生に連れられて教室に入ってきた彼女を見た瞬間だった。
「新島永遠子です、よろしくお願いします。」
深々と頭を下げた彼女の髪から、桜の花弁がひとひら散って落ちた。校庭に咲いている桜の花など、当たり前のものすぎてきれいだと思ったことすらなかったけれど、永遠子の長い黒髪から落ちた花びらに、私は目を奪われ、呼吸すらなくした。
私は、女の子が好きなのかもしれない。
ぼんやりと考え、恐怖していた感情がくっきりと形になった瞬間だった。
私は、女の子が好きだ。そして、新島永遠子に一目ぼれをしている。
中学一年生になったばかりの私に、そんなことが認められるわけがなかった。
幸い、と言っていいのか、私が所属していた仲良しグループは、永遠子を無視した。そのグループには、クラスで一番気が強くて可愛かった陽奈子がいたし、人数も大きかったので、クラスで影響力があった。自然な流れで、永遠子はクラスではぐれ者になった。
永遠子は、それでも平気な顔をしていた。そのことが、さらに子供たちの神経を逆なでした。あの子は田舎者を馬鹿にしている、と。
透明人間みたいに扱われるようになった永遠子は、やはりそれでも平気な顔をしていた。
そんな永遠子が泣いているのを見たのは、季節が夏に移り変わる頃だった。
下校時、私は仲良しグループの中で、帰る方向が同じだった沙代と一緒に帰っていた。ところがその日、沙代は風邪を引いて休んでおり、私は一人で下校することになった。
学校を出て、田んぼのあぜ道をひたすら歩いていた私は、自分の前を歩いている髪の長い華奢な女の子に気が付いた。
新島永遠子だ。
これまで帰り道が同じだということすら知らなかった私は、驚いて思わず足を止めてしまった。すると、私の気配に気が付いたのであろう永遠子が、くるりと振り向いた。彼女の切れ長い両目には、いっぱいに涙がたまっていた。
寝たきりで目も覚まさない祖母が寝ていた六畳間。そこが私と永遠子の全てだった。はじめてキスをしたのも、はじめてセックスをしたのも、その六畳間だった。
母も姉も弟も父も寄り付かないその部屋で、私達は毎日を過ごした。学校が終わると一緒にその部屋へ入り、時々はそのままそこで眠った。母は、永遠子を客間に泊めるように言ったけれど、私たちは笑ってそれを拒んだ。祖母が守ってくれるこの部屋以外の場所では、私たちは恋人同士でいられなかったから。
中学1年生のときに東京から引っ越してきた永遠子は、この田舎の町で明らかに一人だけ垢ぬけていた。残酷な子供たちは、そんな永遠子を受け入れはしなかった。私も、当初は彼女を受け入れなかった。ただ、理由は他の子どもたちとは違っていた。
怖かったのだ。うつくしい永遠子が。
恋に落ちたのは、先生に連れられて教室に入ってきた彼女を見た瞬間だった。
「新島永遠子です、よろしくお願いします。」
深々と頭を下げた彼女の髪から、桜の花弁がひとひら散って落ちた。校庭に咲いている桜の花など、当たり前のものすぎてきれいだと思ったことすらなかったけれど、永遠子の長い黒髪から落ちた花びらに、私は目を奪われ、呼吸すらなくした。
私は、女の子が好きなのかもしれない。
ぼんやりと考え、恐怖していた感情がくっきりと形になった瞬間だった。
私は、女の子が好きだ。そして、新島永遠子に一目ぼれをしている。
中学一年生になったばかりの私に、そんなことが認められるわけがなかった。
幸い、と言っていいのか、私が所属していた仲良しグループは、永遠子を無視した。そのグループには、クラスで一番気が強くて可愛かった陽奈子がいたし、人数も大きかったので、クラスで影響力があった。自然な流れで、永遠子はクラスではぐれ者になった。
永遠子は、それでも平気な顔をしていた。そのことが、さらに子供たちの神経を逆なでした。あの子は田舎者を馬鹿にしている、と。
透明人間みたいに扱われるようになった永遠子は、やはりそれでも平気な顔をしていた。
そんな永遠子が泣いているのを見たのは、季節が夏に移り変わる頃だった。
下校時、私は仲良しグループの中で、帰る方向が同じだった沙代と一緒に帰っていた。ところがその日、沙代は風邪を引いて休んでおり、私は一人で下校することになった。
学校を出て、田んぼのあぜ道をひたすら歩いていた私は、自分の前を歩いている髪の長い華奢な女の子に気が付いた。
新島永遠子だ。
これまで帰り道が同じだということすら知らなかった私は、驚いて思わず足を止めてしまった。すると、私の気配に気が付いたのであろう永遠子が、くるりと振り向いた。彼女の切れ長い両目には、いっぱいに涙がたまっていた。
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