伯爵令嬢エリカは王子の恋を応援します!なのにグイグイこられて、あなたは男装王女の筈ですよね?

sierra

文字の大きさ
33 / 79

33 君が膝枕をしてくれるなら

しおりを挟む
 昼食をとった後、二人は珈琲を飲みながらソファでくつろいでいた。

 ダニエルがあくびを噛み殺す。

「ダニエル様、眠そうですね」

 すっと距離を縮めたダニエルが、顔を近づけてきた。

「ダニエル! 眠そうですね!」

 慌てて”様”抜きで呼ぶエリカ。

「ああ、少し疲れた」

 彼は顔を離しながら、残念そうな顔をする。

(確かにお兄様の言っていた通り溺愛で、……友愛ではないような気がする……)

「す、少しお眠りになってください。昼休憩の間だけでも」

「いいや、今日はもう仕事に戻らないと」

「少し眠ったほうがすっきりして、仕事が捗りますよ?」

「君が膝枕をしてくれるなら」

 見つめられて……、胸が高鳴り、頬にも熱が上ってくる。
 
(どうしよう。きっと今、顔が赤い)

 以前のエリカなら、気にせず『どうぞ!』と膝を差し出したはずだ。

 それなのに妙に恥ずかしくてもじもじしてしまい、その言葉が言えないでいる。

(女神役の件以来、妙に意識してしまって……)

 返事をしないエリカに”嫌がっている”と思ったようで、表情を和らげた王子が話題を変えようとした。

「もう十分休んだから大丈…」

「どうぞ……」

 とても小さな声で、エリカが応じた。

 ダニエルが微笑んだ。

「エリカ、無理をしなくても、嫌なことは嫌と言っていいんだ」

「いいえ、わたくしの膝でダニエルが少しでも休めるならどうぞ。でもかえって落ち着かないと思いますよ……?」

「君の膝以上に、落ち着くところなんてないさ」

 エリカはうるさく鳴る胸の鼓動を意識しながら、ソファの上で座り直し、スカートをフンワリとさせた。

「わたくしの膝が落ち着くかどうかなんて、ご存じないではありませんか」

「知らなくても分かる」

 王子がソファに横たわり、エリカの膝に頭をのせた。

(良かった。あちら向きで横になってくれて。お腹にダニエル様の顔が当たったら、どうしようかと思った)

「やはり寝心地がいい」

 初めはカチコチに固まっていたエリカだが、暫くすると力が抜けた。

 王子がいつの間にか寝息を立てていることに気づく。

「疲れていたんですね……」

 呟いて膝の上のダニエルを見下ろす。

 長いブロンドの髪を束ねている紐が、解けかけていた。

 結婚が決まるまで髪を切ってはいけないという、王家のしきたり。

 女性である事を公表するまで長い髪でいられるよう、ゲームの製作者が考えた設定なのだろう。

(結び直してあげよう) 
 
 紐の端を摘んでシュルっと解き、濃いブロンドの髪にそっと触れる。
しおりを挟む
感想 74

あなたにおすすめの小説

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

頑張らない政略結婚

ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」 結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。 好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。 ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ! 五話完結、毎日更新

死を回避するために筋トレをすることにした侯爵令嬢は、学園のパーフェクトな王子さまとして男爵令嬢な美男子を慈しむ。

石河 翠
恋愛
かつて男爵令嬢ダナに学園で階段から突き落とされ、死亡した侯爵令嬢アントニア。死に戻ったアントニアは男爵令嬢と自分が助かる道を考え、筋トレを始めることにした。 騎士である父に弟子入りし、鍛練にいそしんだ結果、アントニアは見目麗しい男装の麗人に。かつての婚約者である王太子を圧倒する学園の王子さまになったのだ。 前回の人生で死亡した因縁の階段で、アントニアは再びダナに出会う。転落しかけたダナを助けたアントニアは、ダナの秘密に気がつき……。 乙女ゲームのヒロインをやらされているダナを助けるために筋トレに打ち込んだ男装令嬢と、男前な彼女に惚れてしまった男爵令嬢な令息の恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。表紙は、写真ACよりチョコラテさまの作品(作品写真ID:23786147)をお借りしております。

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

地味顔令嬢の私を「嘘の告白」で笑いものにするつもりですか? 結構です、なら本気で惚れさせてから逆にこっちが盛大に振ってあげます!

日々埋没。
恋愛
「お前が好きだ。この俺と付き合ってくれないか?」    学園のアイドル、マルスからの突然の告白。  憧れの人からの言葉に喜んだのも束の間、伯爵令嬢リーンベイルは偶然知ってしまう。それが退屈しのぎの「嘘の告白(ウソコク)」だったことを。 「あの地味顔令嬢が俺に釣り合うわけないだろ。ドッキリのプラカードでも用意しとくわ」  親友のミネルバと共に怒りに震える彼女は、復讐を決意する。まずは父の言いつけで隠していた「絶世の美貌」を解禁! 嘘の恋を「真実の恋(マジコク)」に変えさせ、最高のタイミングで彼を地獄へ突き落とす――。 「……今さら本気になった? 冗談はやめてください、これドッキリですよ?」

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

変人魔術師に一目惚れされて結婚しました

ミダ ワタル
恋愛
田舎領主の娘で行儀見習に王宮に出されたはずが、王妃様に気に入られ第一侍女として忙しくも充実の日々を送っていたマリーベル。 国中の有力者が集まる王の誕生祭の日、王宮の廊下ど真ん中で突然求婚され、彼女の意思も婚姻を結ぶにあたって重要な諸問題もそっちのけであっと間に結婚することに。 しかも相手は最強の魔術使いにして変人と名高い男だった―。 麗しい美貌と胡散臭い話術で周囲を丸め込み、地位と財力を駆使してマリーベルを追い込んでくる魔術師に抵抗・反発しているはずなのに、穏便に離婚どころかなんだかどんどん周囲からは素敵な夫婦扱いに……どうしてこうなるの?! ※サブタイトルに*がついているのはR回です。 ※表紙画像はまるぶち銀河さん(Twitter: @maru_galaxy)に描いていただきました。

処理中です...