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第三章
ロングボウにエントリー
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――武術大会前日。こちらは大会本部。――
「サイラス副団長、今お時間よろしいですか?」
「カイトどうした?少しならあるぞ。明日の事か?」
「一ヶ月前に体術の部である希望を出したんですけど、こちらに書類上がってきてますか?」
「はん?何の事だ。おまえからの希望は上がってないぞ。」
カイトはやっぱり、という顔をした。サイラスは水を飲もうと口に含む。(リーフシュタインは湧き水が豊富なので水がそのまま飲めます。)
「体術の部を総当たり戦にしてほしいと希望を出したのですが。」
ぶっ、と水を吐き出した。
「おまっ・・・!無理に決まってるだろう!一体何試合やる事になると思ってる?それに今日の明日だし・・・と、これはおまえのせいじゃないな。次から俺に直接持ってこい。しかし何でまた総当り戦がいいんだ?」
「せっかく強い奴らが集まって来るので、全員と手合わせしたいんです。」
「ふ~ん、やっぱりお前は面白いな。他の奴らはいかに楽をして勝ち抜くかを考えているのに。」
「シード扱いにしてお前の試合数を少なくするつもりだったが、シード権を他に譲るか?俺にできるのはこれ位だ。」
「はい、それで結構です。ありがとうございます」
カイトはふと思い付いて尋ねた。
「サイラス副団長は今年ロングボウの部で出場しないのですか?」
ロングボウとは長弓の事である。長さ120cmを越え、扱いが難しく熟練を要する。
「ああ、出たら優勝する自信はあるけどな。今年は裏方に徹する事にした。前からゆっくり試合を見てみたいと思ってたし・・・まあ、実際仕事が多くてゆっくり見るのは難しそうだが。」
優勝する実力があるのに、出場しないなんて、そのほうが面白いと思うがそれには触れずにカイトは退席しようとした。
「それからお前をロングボウでエントリーしといたから。」
「は・・・?」
「楽しみにしてるぞ。」
サイラスがにっこりと笑ってる。
「いや、あの、いきなりですか?それに俺ロングボウはあまり・・・ショートボウ(短弓)なら騎馬して射れるように結構練習しましたが、ロングボウは自信ありません。」(注・本来コンポジットボウ〔合成弓〕という名称が海外ではよく使われますが、分かりやすいようにショートボウでいきます)
「歩兵隊長のグスタフから聞いてるぞ。お前のロングボウの腕はなかなかのものだと。」
カイトは負けず嫌いである。故に人より練習してしまうのであった・・・本人あまり自覚ないが。
「ロングボウは三人までエントリーできるからな。今年は俺が抜けた分、お前に入ってもらう。他は去年と同じメンバーで、グスタフとサファイア様付きの騎士のラザファムだ。」
「ベストは尽くします・・・」
これからロングボウの手入れをする事を思うと、少し気が重くなるカイトであった。
「サイラス副団長、今お時間よろしいですか?」
「カイトどうした?少しならあるぞ。明日の事か?」
「一ヶ月前に体術の部である希望を出したんですけど、こちらに書類上がってきてますか?」
「はん?何の事だ。おまえからの希望は上がってないぞ。」
カイトはやっぱり、という顔をした。サイラスは水を飲もうと口に含む。(リーフシュタインは湧き水が豊富なので水がそのまま飲めます。)
「体術の部を総当たり戦にしてほしいと希望を出したのですが。」
ぶっ、と水を吐き出した。
「おまっ・・・!無理に決まってるだろう!一体何試合やる事になると思ってる?それに今日の明日だし・・・と、これはおまえのせいじゃないな。次から俺に直接持ってこい。しかし何でまた総当り戦がいいんだ?」
「せっかく強い奴らが集まって来るので、全員と手合わせしたいんです。」
「ふ~ん、やっぱりお前は面白いな。他の奴らはいかに楽をして勝ち抜くかを考えているのに。」
「シード扱いにしてお前の試合数を少なくするつもりだったが、シード権を他に譲るか?俺にできるのはこれ位だ。」
「はい、それで結構です。ありがとうございます」
カイトはふと思い付いて尋ねた。
「サイラス副団長は今年ロングボウの部で出場しないのですか?」
ロングボウとは長弓の事である。長さ120cmを越え、扱いが難しく熟練を要する。
「ああ、出たら優勝する自信はあるけどな。今年は裏方に徹する事にした。前からゆっくり試合を見てみたいと思ってたし・・・まあ、実際仕事が多くてゆっくり見るのは難しそうだが。」
優勝する実力があるのに、出場しないなんて、そのほうが面白いと思うがそれには触れずにカイトは退席しようとした。
「それからお前をロングボウでエントリーしといたから。」
「は・・・?」
「楽しみにしてるぞ。」
サイラスがにっこりと笑ってる。
「いや、あの、いきなりですか?それに俺ロングボウはあまり・・・ショートボウ(短弓)なら騎馬して射れるように結構練習しましたが、ロングボウは自信ありません。」(注・本来コンポジットボウ〔合成弓〕という名称が海外ではよく使われますが、分かりやすいようにショートボウでいきます)
「歩兵隊長のグスタフから聞いてるぞ。お前のロングボウの腕はなかなかのものだと。」
カイトは負けず嫌いである。故に人より練習してしまうのであった・・・本人あまり自覚ないが。
「ロングボウは三人までエントリーできるからな。今年は俺が抜けた分、お前に入ってもらう。他は去年と同じメンバーで、グスタフとサファイア様付きの騎士のラザファムだ。」
「ベストは尽くします・・・」
これからロングボウの手入れをする事を思うと、少し気が重くなるカイトであった。
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