黒の転生騎士

sierra

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第七章

じーちゃんとドラゴンと 3  転生前の・・・

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(何で泣いてる?いや、鳴いてるか・・・)
 その右側に視線を転じると、普通の豹より大きさが二倍はありそうな黒豹が、その子供を狙っていた。
(神様の子供を狙うのか?)

 黒豹は、舌なめずりをしながらドラゴンの子供に近付いている。子供はピーピー鳴きながら、後ずさりしていたが、大きな岩に行く手を阻まれた。 

 普通の二倍はある黒豹に自分が敵うはずはない、と考える前に咄嗟に身体が動いていた。矢を番えて木の陰から進み出ると、少しずつ子供ドラゴンの前に移動する。黒豹はじっとカイトを見据えていたが、歯を剥きだして、唸りを声を上げると一回飛び掛るように威嚇した。
 カイトが尚も動じずに矢で眉間を狙っていると、急に興味を失くしたような顔になり、尾を振りながら去って行った。

「大丈夫か?」
 跪くと同時に、子供ドラゴンが腕の中に飛び込んできた。
「お兄ちゃん!」
「わ!!」
 飛び込んできた勢いで尻餅をつく。子供ドラゴンはカイトの腕の中で身体をすりすりとすりつけている。
「え・・・お前、喋れるのか?・・・いや、何か頭の中に響いているような」
「そうだよ、直接頭に語りかけてるんだよ。お兄ちゃん、また僕を助けてくれたね」
 カイトは頭を捻った。子供ドラゴンを助けた覚えはないのだが、何故か知っている気がする。

 急に辺りが暗くなったと思ったら、バサバサと羽ばたく翼の音がした。嫌な予感がして真上を見ると、ドラゴンが下りてくる所だった。
(潰される!!)
 子供ドラゴンを抱えて、急いで場所を移動する。
「だいじょうぶだよ。お父さんは僕達を潰さないように着地するよ」
「君のお父さんか・・・」

 確かに着地という言葉が相応しい大きさだ。翼の羽ばたきで周りに風が起こっている。嵐のようなその中で、目の前に黒い鱗に覆われ、立派な翼と、鋭い爪と牙を具 (そな) えたドラゴンが下り立った。身体から発する堂々とした霊的な雰囲気に圧倒される。

「お前・・・マティアスの孫だな。波動が同じだ・・・我が名はカエレス、世に言う戦いの神だ。息子を助けてくれた礼を言うぞ。名は何と申す?」

「私はカイトと申します。お礼の言葉は有難く頂戴いたします。」
(波動で分かるのか・・・うん? じーちゃんと知り合い?)と考えていると、腕の中にいた子供ドラゴンがパタパタと父の所に飛んで行こうとした。が、途中で落ちた。また飛んで、また落ちた。何回か繰り返してやっと父ドラゴンに辿りついた。

 まだよく飛べないようだ。固い鱗というよりは、ホワホワした毛が所々に生えていて、生え変わりの途中という感じだ。まだ赤ちゃんドラゴンなのかもしれない。
 赤ちゃんドラゴンが父親に耳打ちをした。
「そうか、そうだったのか・・・お前は前世でもこの子を助けてくれたそうだな」

「ドラゴンの子供を助けた覚えは、まさか・・・?」
「そう、そのまさかだ。この子はお前が踏み切りで助けた幼児の生まれ変わりだ」
「でもその子何才ですか? 俺が助けたのは18年前で・・・」
「転生に時系列は関係ない。違う世界の違う時間に生まれ変わることもあるからな」

話しに赤ちゃんドラゴンが加わってきた。
「カイト、僕カイトに助けてもらった後に、お母さんと謝りに行ったんだよ。絶対に怒られると思ったんだけど、カイトのお父さんも、お母さんも許してくれて、『君だけでも助かって良かった。二人共死んでしまったら意味がない』って言ってくれたんだ」

 自分が死ぬ時も同じ事を考えた。カイトはその言葉に、涙が頬を伝うのを感じる。手の甲で拭うと、赤ちゃんドラゴンの話しにまた耳を傾けた。

「僕のうち、お父さんがいなくて、おじいちゃんも、おばあちゃんもいなくて、僕とママだけだったんだ。上杉のおじいちゃんが・・・えっと、おじいちゃんって呼んでいいって言ってくれて。それで上杉のおじいちゃんが、空手を教えてくれて、試合の時とか、おじいちゃんとおばあちゃんが応援しに来てくれて。本当に嬉しかった。それでね、僕大きくなって、空手の世界大会に出たんだよ!」

「本当か!?」
「うん、優勝はできなくて、二位だったんだけどね。でも、凄い喜んでくれて『カイトもきっと喜んでいる』って」 
「うん、凄く嬉しい・・・君を助けて本当に良かった。君が僕の両親を幸せにしてくれたんだね」
 赤ちゃんドラゴンも嬉しそうにしている。

「話の途中で悪いが、カイト、お前は転生前の世界に戻る気はないか?」
「え・・・どういう事ですか?」
「お前は、転生前と転生後、二回息子を助けてくれた訳だし、それに天寿を全うしてないだろう?私の力なら、踏み切りの地点からやり直す事ができるぞ」

「完全にあちらの世界に戻ってしまうのですか?」
「そうだが、心配はいらない。あちらに戻ってから、一週間後に私がお前にどちらの世界がいいか問う。その時に返事をしてくれたらいい」
 
こちらに帰ってこれなかったら答えはNOだが、帰れるのであれば――
「お願いします」
「承知した。呪文を唱えるからそのままでいろ」

 呪文を唱え始めたドラゴンが思い出したように言った。
「ああ、それからあちらに帰ったら、こちらの記憶はなくなるから。もし、一週間後に思い出せなかったら、お前はそのままあちらの住人だ」
「え・・・? ちょっ! ちょっと待って!! 止めます!! 止めにして下さい!」
「もう遅い、唱え終わったわ。思い出せない時は、こちらの世界にそれ位の想いしかなかったという事だ」
 カイトの周りを白い光が包んだ。そこから出ようとした瞬間、カイトの身体が消失した。

「甲斐人、甲斐人!・・・良かった! 目を覚ましたわ!」
 目を薄く開けると、病室のベッドで寝かされていた。
「・・・母さん?」
「もう! 驚かさないでよ! 心臓が止まるかと思ったじゃない!」
「助けた子供も無事だったぞ。お前も大した怪我もなく本当に良かった」

 泣いている母親の前で、ぼーっとしてる俺に、子供を助ける為に閉まった踏み切りに入り、電車に轢かれそうになったが、ぎりぎりの所で助かった事を父親が話してくれた。
「甲斐人、どうした? 何で泣いているんだ?」
「分からない・・・父さんと母さんを見たら、なぜか嬉しくて涙が出てきて・・・」
「ほっとしたからか? まあ無事で良かった」

 でも・・・何か大事な事を忘れている気がする。

 何だろう――



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