黒の転生騎士

sierra

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第七章

じーちゃんとドラゴンと 4  思い出して

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 次の日、一通り検査が終わった甲斐人は異常なし、という事で退院する事になる。荷物をまとめていると、幼児を連れた若い女性がノックをして入ってきた。

「上杉さんですね? 昨日は翔 (しょう) を助けて下さって本当にありがとうございました。上杉さんに何事もなくて、本当に・・・本当に良かったです・・・」
 女性は昨日の事を思い出したのか、泣きながらお礼を言い続ける。

「いや、もう、何事もなかったんで、ほんと気になさらないで下さい」
 男の子が甲斐人の片足を、両手で抱き締めるように掴んで見上げている。その姿が何とも可愛らしい。
「抱っこしてもいいですか?」
「あ、この子ったら! どうぞ、人見知りする子なんですけど、珍しいわ」
 甲斐人が抱き上げると、縋り付いてきて身体をすりすりとすりつけた。
(あれ、この感覚、前にどこかで・・・)

「甲斐人、迎えに来たわよ。あら、昨日の」
「はい、本当にありがとうございました」
 甲斐人の母親が入って来た事で、その思いは中断された。男の子を下に下ろすと、とことこと歩いて今度は母親の足に引っ付いている。三歳位であろうか? 別れ際に男の子が口を開いた。
「お兄ちゃん、また会おうね」
 暗示めいて聞こえたのは何故だろう?

「近く、警察から表彰されるらしいわよ」
「え、・・・何か恥かしいな」
「表彰なんかより、何度も言うようだけど、助かって本当に良かった・・・」
「母さん・・・」
「何であんたが泣いてんのよ! いつもはこんな時笑い飛ばすくせに」
 バーンと背中を叩かれた。

 次の日、身体も大丈夫そうなので大学に行く。母親が弁当を持たせてくれた。学食でも食べるが空手をやっているせいで、それだけでは量が足りないからだ。栄養バランスの良い弁当をいつも作ってくれて、感謝している。
 
 英語の講義の時間に小テストがあった。今日はいつもより解けている気がする。問題を解いてて何故か若干の違和感を覚えるが。

 16時30分から空手道部の練習に出る。周りからは心配されたが、身体の調子もいいし大丈夫だ。ただ身体が少し重い気がする。技の切れはいい。
 組んだ相手に俺の空手が変わったと言われた。普段実践で使っているような、鋭さと怖さを感じると。空手道選手権で優勝したからだろうか?

 夕飯は久しぶりに家族三人が揃って食べた。とても美味しく幸せに感じる。三人揃うのが久しぶりだからだろうか?こんなに嬉しく感じるなんて。

 次の日、大学で英語の教授に呼び出された。昨日の小テストの事らしい。珍しく全問解けたから、カンニングと思われているのだろうか。ノックをして、入室すると目の前のソファに座るように言われた。
 ソファに座ると、昨日の小テストを目の前に出される。英語の教授はそれなりに年齢はいっているが、なかなかの美人である。

「上杉君、貴方の昨日のテストなんだけど・・・」
「はい」
「ある意味、高得点なんだけどね・・・答えをラテン語で書いていなければ」
「へ・・・? 俺、ラテン語なんて分かりません」
「でも、これ貴方の字よね? 英語の源はラテン語なの。ラテン語をこれだけ知り尽くしていたから、ここまで答えられたのかも。でも、答えの言い回しが、古臭いというか、生きて生活したような感じというか・・・まるで中世のヨーロッパで暮らしていたような・・・」
 
「中世のヨーロッパ・・・」
「上杉君、大丈夫? 顔色が悪いわよ?」   
「え・・・? ああ、大丈夫です。すいません」
「本当は、何でラテン語で答えを書いたか、もっと詳しく聞きたいんだけど、この後に私、用事があるのよ。貴方も具合が悪そうだし。又の機会にしましょう」
「はい、分かりました。それでお願いします」

 何だろう? 踏み切りの件以来、何でこんなに違和感を感じるんだ――

 そのまま空手道部の練習に向かう。休憩の時に体育館の外に出て、皆で風に当たっていると飲み会に誘われた。
「お願いだよ! 甲斐人が来たら、女の子がたくさん来るんだ!」
「悪い、あまり興味がない」
「お前、ほんっとにクールだよな。彼女ほしい! とか思わないのか?」
「あまり・・・」
「お前! その素材でもったいないぞ!!」
「まあまあ、こいつも危ない目にあったばかりだし、行く気がしないんだろう」

 他の部員が間に入ってくれた時、体育館の端の木の下に、青いロングドレスを着た女性が立っているのが見えた。体育館の舞台だけを使って演劇部が練習したいと言っていたのを思い出す。青いロングドレスを着ているのもその為の衣装だろう。
 よく見ると、ウィッグではなく本物の金髪のようだし、体型も日本人のそれと異なる。
(留学生かな? 場所が分からないのか?)
 
 甲斐人は走って行くと、その女性の前に立った。近くで見ると女性、というよりはまだ少女のように見える。
「君、演劇部だったら・・・」
 その少女はゆっくりと顔を上げると、右手で甲斐人の頬に触れた。碧い瞳に透き通るような肌に、ゆるくカーブした金の髪。

「私を思い出して――」

「君は・・・」
 記憶の底に何かが触れた。

「甲斐人! どうした~、練習始まるぞ!」
「いや、この女の子が・・・」
「女の子? どこにいるんだ?」
 周りを見回すと、誰もいない。
「いや、今ここに!」
「やっぱりお前、今日の飲み会来いよ。それは彼女がいない禁断症状だ」
「そこ! 早く戻ってこい!!」
 コーチにどやされて、走って体育館に戻った。 

 
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