黒の転生騎士

sierra

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第七章

じーちゃんとドラゴンと 5

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 昨日の少女が気になる・・・

 あれから演劇部のメンバーに聞いてみたけど分からなかったし、それらしい留学生も見当たらない、白昼夢でも見てたのだろうか?  もう一度会いたい気持ちに駆り立てられる一方、会ってはならない気持ちにもなる。

 気晴らしに飲み会にも参加してみた。ライン交換をやたらせがまれ気疲れする。申し訳ないが全部断った。場の空気が少し悪くなったかもしれない。友達は『もったいない! 取り敢えず交換すればいいのに』と言うが、返信する気が全くないのに交換するのは意味がないし、返って相手に失礼だと思う。

 一次会が終わり、外に出る。二次会に誘われたが断っていると、変な雰囲気の男が近付いてきた。殺気が漲 (みなぎ) っているのが分かる。

 これだけの殺気に何故、皆気付かないんだ―― ?

 その男がナイフを取り出した。一次会のメンバーの、ある女性を狙っているようだ。皆がナイフに気付く前に、右手を背中に捩じ上げ、地べたにうつ伏せで押さえつけた。途中で頭をよぎった事は`この男は大した敵ではない ‘ 。男が喚き立てている。

「友香!! お前、貢がせるだけ貢がせやがって!! 金が無くなったらお払い箱かよ! 許せねえ!・・・くそ! 放せ!!」 

 甲斐人が落ち着き払って言う。
「警察を呼んでくれ」
「あ、ああ!」
 一人が我に返ったようにスマホを取り出した。が、すぐ傍に交番があると他のメンバーが駆けて行く。すぐに警察官が二人飛んできた。繁華街だったから配置している警官が多いのか、後からも何人かまた駆けつけてきた。
 
 警官からお小言をくらった。『ナイフを持っている人物は危険だから、これからは絶対に刃向かわないように』と。それとは別に『君強いね、何かやっているの?』と興味津々で聞かれた。
 中学の時からの親友で、同じ空手道部の倉岡勝也が「こいつ、この間の全日本大学空手道選手権で優勝したんです」と説明してくれた。『なるほどね――』話はそれで済んで助かった。

 友香という女の子がお礼を言いに来た。
「上杉君、ありがとう。お陰様で助かった。凄い強いのね・・・あの人、ちょっと勘違いをしていて・・・」
「これに懲りたら、男に貢がせるのは止めるんだな」

 友香という子が真っ赤になった。他の女の子達は驚いた後にすっきりしたような顔になる。男共は絶句している。
「甲斐人、何もそこまで言わなくても・・・」
 勝也が間に入ろうとした。
「別に! 私が頼んだ訳じゃないもん! 勝手にあっちがくれたのよ!」
「これいいな、とか、遠まわしに催促しなかったのか?」 
「そんな事! 言ってないわよ! 勝手に察してくれたのよ!」
 全然説得力がない。
「ナイフで刺そうとした行為はもちろん罰せられるべきだが、俺からしたらあの男も被害者だ。自分のした事をよく考えて、ちゃんと反省するんだな。俺はもう帰る――」

 踵を返して駅に向かうと、勝也が追い付いて来た。
 
「甲斐人、どうしたんだよ。何かお前らしくないぞ」
「俺らしいって一体何だよ。当たり前の事を言っただけだ」
「いや、確かにそうだけど。前から正義感は強かったし・・・でも今までのお前なら口には出さずに黙ってだろう? 何か外国人みたいにはっきり口にするようになったなって」

 カイトの歩みが遅くなった。
「俺、変わったか?」
「ああ、根本は変わってないけどな・・・今日、お前の所に泊めろよ。話しが長くなりそうだから」

「あら、勝也君! 久しぶり」
「こんばんは」
「今日勝也、俺の部屋に泊まるから」
「あら、本当? ご飯ちゃんと食べた? お腹空いてない?」
「大丈夫。ちゃんと食べたから・・・もう十一時も過ぎてるし、後で風呂だけ入るかも」
「分かった。タオルの用意だけしとくわね。寝巻きはあんたの何か貸してあげて」
「そうする。おやすみ」
「はい、おやすみ」
 
「おばさん、変わってないな~」
「・・・・・・そうだな」
「どうしたんだよ。その長い間は」
「踏み切りの件以来変なんだ。普通の事が妙に嬉しかったり、涙が出てきたりして、今も『変わらないな』の一言が胸にきて」
「事故の時頭でも打ったのか? まあ、原因はそれだけではないような気がするが・・・。俺、さっきずっとお前の傍で見ていたんだけど、あの男が現れた時、明らかにお前の雰囲気が変わったんだ。」
「雰囲気が?」
「ああ、雰囲気だ」

 勝也は話を続けた。
「普通、目で捉えてから、この男やばい、とか思うじゃないか。でもお前は気配を察して、それからあの男を見つけた―― 。という感じだったぞ。何ていうか、狩りをする獣みたいだった。獣が狩りをする時って、冷静に見えるだろう? 男を見つけてから捕まえるまで終始冷静で、当たり前のような・・・普段からやりなれているように見えた」
(そういえばあの時、感情が全然波立たなかった。唯一考えたのは、大した敵ではないという事。何故`敵 ‘ などと思ったのだろう)

「さっきも言ったけど、前は女性に対してあんな事を言わなかったし・・・」
「ああ、ただあの子のした事は最低だったし、あの女性 (ひと) だったらあんな事しないのにと思ったら」
「あのひとって?」
「あの女性 (ひと) ・・・」

 あの碧い瞳が頭をよぎった。どこかで会ったような気がするのだが、その断片を掴もうとするとすり抜ける。記憶を探ろうとすればするほど、それを阻む何かがある。

 その時耳元で囁かれた。
「思い出して―― もうその後は忘れてもいいから・・・」
 

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