黒の転生騎士

sierra

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第七章

じーちゃんとドラゴンと 6  哀しみの・・・

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 次の日の朝、母親に叩き起こされた。

「今日は翔君が遊びに来る日でしょう! いい加減起きなさい!」
 そうだった。やたら懐かれて、今度の土曜日だったら空いてるよ、と約束をしたのだ。横を見たら、勝也も一緒に叩き起こされていた。

「相変わらずだなあ、おばさん」
 階段を下りていると、後ろを付いて来た勝也が欠伸をしながら言った。またいつもの日常なのに幸せを感じる。

遅い朝ごはんを勝也と一緒に食べて、ぼーっとしている所に、翔君と翔君のお母さんが尋ねてきた。
「おにいちゃん!」
 屈託のない笑顔に癒される。何を思ったのか、目の前で空手の型のようなものを披露してくれた。

「この子に上杉さんが空手の大会で優勝した事を言ったら`見たい ‘ ってねだられて、空手の動画を見せたら、真似をし始めたんですよ」

「ああ、それは嬉しいです。もう少し大きくなったら、習わせるのもいいかもしれませんね」
「・・・うちは、主人がおりませんので、少し難しいかもしれません。習うのにはやはり色々とお金がかかりそうですし」

「父が、公民館を借りて、週に一度空手を教えているんです。日曜日の午前中で、公民館を借りる費用と、ちょっとした諸経費だけで済みます。最初に、怪我をした時のための保険には入らないといけませんが、それを抜いたら一ヶ月で500円位です。父だけでなく、そこを卒業した人達が交代で教えています。俺が行く事もあるし、もし気が向いたらいかがですか?」

「それはとてもいいですね! ありがとうございます。何才から始められますか?」
「5歳位からが多いですよ」
「その時は、是非伺わせて頂きます」
 翔君の母親が笑顔になる。勝也が何とはなしに近くで話を聞いていた。

 母さんに声を掛けられた。
「甲斐人、大学の英語の教授の鈴浦さんって方から、電話が入っているわよ」
「え・・・何で俺に・・・?」
 この間のテストの事だろうか? でも今日は土曜日だし。殆ど授業も無い日であるのに、なぜだろう?

「はい、変わりました。上杉甲斐人です」
「ああ、上杉君! いてくれて良かった! 今日時間ある!? お願いだから来てくれない!? ラテン語ができる人がいなくて、困ってるの!」
「俺、ラテン語できませんし、先生ができるのではないんですか? それに今知り合いが来てて」
 翔君がこちらの電話を気にしている。察した勝也が翔君に何か話しかけて、俺に向かって笑顔で親指を立ててみせた。

「あれだけできれば大丈夫よ! 私はかじった程度なの。お願い!! バイト代を弾むし! 助けると思って」
「・・・分かりました。どちらに伺えばいいんですか?」
「上野の緑美術館に来て! 受付に名前を言っておくから。`名もなき中世の巨匠展 ‘ という絵画展を今度開催するんだけど、それに展示する絵の原題と説明文を訳してほしいの」
「お役に立てるか分かりませんが、すぐに行きます」

 玄関まで送りにきた勝也と翔君に声を掛ける。
「翔君、ごめんな。また今度時間を取るから、今日は勝也お兄ちゃんと遊んでもらってくれ。勝也、ありがとう。恩にきるよ」
「いや、泊めてもらったしな。それに今日のバイト代で奢ってくれるの期待してるぜ」
「ああ、バーンと奢るよ」
 出ようとすると、俺の背中に向かって勝也が言った。
「甲斐人、お前、根本は変わってないけど何て言うか、成長した感じがする」

 美術館に着くと一般客は入れなかったが関係者は入れるようで、名前を言ったらすぐに通された。
「ああ、上杉君! 良かった! 来てくれて」
 
「もう絵の展示も行われてるんですね」
「そうなの、とにかく急ぐのよ。英語の原題と説明文がついてた筈なんだけど、なぜか紛失してしまって。ラテン語の原文しかないの。こちらに来て、早速頼むわ」

 驚いた事に、ラテン語が簡単に訳せた。言い回しが古かったりおかしい時は鈴浦教授が直してくれた。展示された絵もちゃんと見て確認しながら、一枚一枚訳していく。

「さあ、次が最後の一枚よ。これがこの展覧会のメインなの」
 その飾られた絵を見て愕然とした。手元にあるラテン語で書かれた原題を見る。
「上杉君、それは?」

「・・・哀しみの・・・リリアーナ・・・」
 
 

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