駄目な奴でもなんとか生きていこうと思います

アオ

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サヴァリッシュ王国

閑話4.5 黒曜騎士団長アレフガートside

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しかし俺はとんでもない間違いを犯した。

シヅルに俺がシヅルのことが嫌いだと誤解されていたのだ。
しかも、俺のせいで。見守っているつもりで眺めていても俺の凶悪で鋭く見える細い目では睨んでいるようにしか見えない。自分でも鏡をみてそう思う。
また、俺のつまらない独占欲が暴走し、使用人たちにシヅルにはなるべく近づくな命令してしまったのも問題だった。ジェームスあたりの古参の使用人らは俺の胸中を察していたらしいが、それも俺の両親や俺の性質を知っているからだ。竜人についての知識が浅いシヅルはそれを自分が悪いからだと思い込んで自分の存在を下にしたに見るようだ。

まったく困ったものだ。自分の不器用さに腹が立つ。
俺の気持ちの暴走で大事な大事なシヅルのこころを傷つけてどうする?

どうにもならないじゃないか。嫌われるだけだ。
………嫌われる…?


あのかわいいシヅルが俺のことを見て、キュッと眉をひそめて泣きそうになりながら俺を嫌がるのか?想像するだけで、自分の情けなさとシヅルが自分を嫌うことに対する行き場のない怒りと無理やりにでも手籠めにしてしまいたくなる衝動が生まれる。


ああ、でも嫌がるシヅルもいいかもしれない。あの透き通った美しい瞳を涙にぬらすのは少しそそる。
泣いているシヅルの自由を奪って服を無理やり裂き、手や顔と同じ真っ白な肌とその上にあるふたつのピンク色の小粒を思うがままにいじったらどのように啼くのだろうか。


ッ!
なんてことを…なんてことを想像しているのだ!俺は!
先ほど反省したばかりではないか、シヅルに対する態度をしっかりすべきだと。それなのになぜこんな誘惑にかられるのか…。

やっぱりシヅルが魅力的すぎるのがいけないだろう。
せめて俺の考えることは想像のうちに収めて置き、シヅルが大人になったときすぐに番契約が結べるような仲にならなくては…。




―――

俺がシヅルに対する態度を考えていると、執務室のドアがノックされた。足音などからしてジェームスだろう。一体なんのようか、シヅルのことならもう嫌だな。シヅルの事を俺以外の者に語られるとジェームスであろうと嫉妬や怒りがわいてくるからだ。

「失礼します。」

やはりジェームスだ。

「なんだ、もう小言は聞き飽きたぞ。」
「違いますよ、坊ちゃま。おそらく急を要する手紙が二通届いております。」
「誰からだ?」
「王家と公爵閣下からです。」

飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。なんだって?王家と父上?
また厄介な。父上はどうせ番の事だろう。王室からとはなんだ?今まで俺自身に届くことなかったのに。父上からのを後回しにし、王家からのものを読む。
そこには思わず頭を抱えたくなる案件が書かれていた。

要約すると「シヅルに騎士を助けた褒美をやるから王城へ来い」ということだった。


あ゙あ゙あ゙ん⁉王城にシヅルを連れていくだ…と…?
あの人の出入りが多い王城に、下世話なことしか考えていない連中がうじゃうじゃいる謁見の場に、つれていくのか!?天使を!
いやいや駄目だ。許せるわけがない。少し考えるだけで鳥肌が立つ。
下手するとシヅルを連れて国外逃亡したくなるレベルだ。

「やはりシヅル様の謁見のことでしょうか?恐れながら坊ちゃま、いくら無表情でも考えることがわかりますので提案させていただいてもよろしいでしょうか。」
「なんだ?」
「おそらく辞退は不可能ですので、なるばく少人数のときに謁見の予定を組んでいただくのです。」
「なるほど…」

ジェームスのいいたいことはわかる。話が通じない第一王妃と第一王子や民から搾取し自分が潤うことしか考えていない貴族どもがいないときを狙えばいいわけだ。
それならば簡単だ。
あとはシヅルをどうやって見せずに行かせるかだ。
そこは俺がついて行って牽制すれば十分だろう。国王陛下たちは歴史を通して竜人の番への執着を学び知っているはずだからな。

「それほど心配されなくても、シヅル様を怖がらせて嫌われかけているでしょう坊ちゃまにはもっと考えるべきことがある気がしますが。」

まったくもって面目ないな。
たしかにシヅルの警戒を解くのが先か…。



そんなアレフガートを見てはたしてシヅルに嫌われないようにうまくいくのか心配になるジェームスであった。
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