ダークエルフは洞窟の果てに幸せを掴む

みやぢ

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王都の暮らし

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半ばエミリアに押し切られるような形で彼女との交際が始まったわけだけれど、僕にとってもなんだか生活に張りが出てきたような気がする。

そんなある日、出張所の事務員アイラに呼び止められた。
彼女は現地で採用したドワーフ族の女性で事務関係を一手に担ってくれている。

「愼太郎さん、収穫祭にはあのダークエルフの軍人さんと行かれるのですか?」

「そう言えばそういう時期でしたね、すっかり忘れてましたよ」

「ふふっ、この国の女性は収穫祭に着飾ってお出かけするのが一番の楽しみなんですよ、それは私たちドワーフもエルフの皆さんも変わらないのです」

そうだった、この国では秋にあたる季節にその年の芳醇な収穫を祝って盛大なお祭りが開かれるのだ。

「アイラさんも行かれるのですか?」

「もちろんですよ、子供たちも楽しみにしていますしね」

その日は王都のいたるところに市が立ちさまざまな催しが行われるのだ。

まだ出張所ができる前に一度その時期に来たことがあった。

街の広場にもたくさんの露店が立ち、肉の焼ける香ばしい香りや焼き菓子の甘い香りが立ち込めていた。

この国に住むさまざまな種族の子どもたちが目をキラキラさせて走り回っていたのをよく覚えている。

言ってみれば僕たちの世界での秋祭りの縁日みたいなものだ。

収穫祭まであと一週間ほどになったある日、一緒に食事をしているときにエミリアが切り出してきた。

「ねぇ、愼太郎…収穫祭の日はお仕事なの?」

いちおう会社としてはこちらの暦に合わせて祝祭日はお休みにしている。

「仕事はお休みだけど?」

そう答えるとエミリアは少し恥ずかしそうな表情でこう言った。

「わたしもお休みもらっているし慎太郎さえ良ければ収穫祭に一緒に行きませんか…」

「もちろんだよ、一緒に行こう」

そう言うとエミリアの表情がぱぁっと明るくなった。

「よかった、こういうのわたし初めてだったから断られたらどうしようかと…」

普段は軍人らしくキリッとしている彼女だけれど付き合いはじめると意外に可愛いところもあると感じるようになってきていた。

彼女達ダークエルフを含めエルフ族は基本女性しかいないのでこういうことに疎いのはわからなくはないけれど…

とにかく収穫祭へエミリアと一緒に行くことになって、ふたりで楽しめるといいな、そう思うと自然に笑みがこぼれてきた。








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