洋食屋ロマン亭

みやぢ

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おてんばありすのだいぼうけん <2>

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家に入った女の子はしばらくしてアイスを二つ手に持って出てきた。
「いっしょに食べよ!」

山道を歩いてほてった体に冷たいアイスが心地良い。

「今日は楽しかった、ありがとね」
「うん、また遊ぼうね」
そう言ってありすは女の子に見送られておばあちゃんの家へ向かった。



そして時は流れ、進学した新しい学校で二人は再会するのだが…

ありすはこの時の出来事をすっかり忘れてしまっていた。

そしてあの時の女の子さくらはありすのことを男の子だと思い込んでいたので同一人物だとは思わなかったのだ。

だけどお互いの第一印象は『初めて会った気がしない』だった。

もちろんすぐに打ち解け大の仲良しとなった。

ありすの趣味のコスプレに半ば強引に引き込まれるかたちになったさくらだが、本人もまんざらではないようで一緒にコスプレを楽しんでいる。

彼女は日本舞踊を習っているだけあってポーズが綺麗に決まるので撮影するカメラマンからけっこう人気があるそうだ。
ただ教室とのかねあいもあってなかなかイベントに参加できないのが本人の目下の悩みらしい。

土曜日のランチタイムのピークが過ぎお店が落ち着いて閉店までの間、お店の隅のテーブルで二人して悪だくみする姿がもはや恒例となっている。

そういえばかおるさんも高校生くらいまでは母親から日本舞踊を習っていただけに初めて会った時に所作がものすごく綺麗なのに驚かされた記憶がある。
オーナーもかおるさんを初めて見た時「ただものではない」と感じたそうだ。

土曜日の営業もあと少しだ、お店のあるオフィス街は大きな企業が多く社員食堂を完備したところも多いのだが、土曜日は食堂が開いていないらしくてランチタイムはけっこう忙しい。
土曜日に出勤している人のためにせめてランチタイムだけは開けようというオーナーの方針で僕がお店を引き継いだ今もそれは続けている。

最近はさくらが自発的にホールを手伝ってくれて僕の負担も少なくなっているので、正式に雇ったわけではないけれど、ありすの土曜日の分と同額のバイト代を当日払いで渡している。

「ありすちゃん、そろそろ閉める用意しようか」
「はーい」

ありすとさくらはてきぱきと閉店の準備を始めた。
僕はレジを締め、売り上げを計算してさくらのお給料を封筒に入れて用意した。

「終わりました~」
「ありがとう、さくらちゃんおつかれさま」

そう言って封筒を手渡した。

「ありがとうございます」
「あとは僕がするから二人ともあがっていいよ、おつかれさま」
「おつかれさまでした~」
「遊びに行くのはいいけどあまり遅くならないようにね」
「はーい」

平日のディナータイムは終わるのが遅い時間なのでありすを家まで送るのだが、土曜日はランチタイムが終わる三時で閉店する。
だいたいいつもさくらが来ているので終わったあと二人で遊びに行くのが恒例となっている。

今日も二人は連れ立って駅の方へ走っていった。

「やれやれ、高校生は元気だね…」

そうつぶやいて僕はお店のシャッターを下ろした。



 おてんばありすのだいぼうけん<了>
















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