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夏祭りの夜に<1>
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この街の中心部から少しはずれた場所にわりと名の知れた神社がある。
鎌倉時代の武将を祀っているとかで観光客もけっこうくるらしい。
従妹のあやちゃんが奉仕している神社でもある。
そして僕も親父が氏子総代だったこともあり、お祭りなどの行事のときは駆り出されることになる。
土曜日のランチ営業が終わったあと夏祭りの打ち合わせのために神社へ向かった。
だいたいいつものメンバーなので役割分担をサッと決めてあとは世間話に花が咲く、僕はメンバーの中でも最年少であまり話す事もないので実質座って話を聞くだけだ。
やがて宮司さまが解散を告げたので帰ろうとすると能舞台で巫女舞の練習をしてるのが目に入った。
あやちゃんだった。
「あやちゃん」
「あ、お兄ちゃん!」
「お祭りの打ち合わせだったんだ」
「そうなんだ、もう終わるから一緒に帰らない?」
「いいよ」
あやちゃんが着替えるのを待って一緒に境内を出た。
「お祭りが近いから大変だね」
「そうなのよ、今年は特に剣舞が当たってるからね」
この神社の夏祭りでは剣舞や武者行列があり、観光客にも人気がある。
剣舞は巫女さんの持ち回りで今年はあやちゃんの番だそうで、ある意味お祭りのクライマックスなのでプレッシャーも半端ないらしい。
「お兄ちゃん今年のお役は?」
「割と暇なお役だよ、ラッキーだった」
「よかったねー」
親父が海外へ行ったあと引き継いでからひと通りの役割は経験してるのでもう慣れたものだ。
「じゃあわたしの剣舞もしっかり見れそうね」
「そうだね、久しぶりにお祭りの最中はゆっくりさせてもらえそうだよ」
「そのかわり準備と後片付けが大変だけど…」
「まぁね」
あやちゃんとこうやって一緒に歩くのもひさしぶりだ。
伯母さん、あやちゃんの母親は親父の姉にあたり、この街に越してきたのも伯母さんが住んでいることもあったようだ。
一人っ子だった僕を気遣って、ゆき姉とあやちゃんを連れてよくうちに遊びに来ていて三人でよく遊んだものだ。
特にあやちゃんとは歳が近いこともあり、学校への行き帰りが一緒だったことも多かった、それだけにまどかさんと暮らし始めて二人の距離が急速に縮まっていたときは複雑だったと思う。
正直言ってその時まで僕はあやちゃんの気持ちに気付いていなかったと言える。
気付いていたとしてもあの頃の僕にはどうしていいかわからなかったと思うが…
だけど今こうやって居られるのは彼女の中でなにかが変わったのだろう。
「お兄ちゃんどうしたの?」
考え込んでしまっていた僕を心配した顔で覗きこんできた。
「何でもないよ、それよりあやちゃんご奉仕楽しいかい?」
「うん!楽しいよ、みんな仲良いから神職のお勉強も教えあってる」
「そりゃよかったね」
神社の事となると目をキラキラさせているあやちゃんを見ると僕の懸念もどこかへ行ってしまう。
やがてあやちゃんの家の近くまで来た。
「お兄ちゃんありがとね」
「うん、剣舞の練習がんばってね」
満面の笑みのあやちゃんに見送られて家へ向かった。
帰宅するとまどかさんが夕食の支度をしていた。
「おかえりなさい、お祭りの打ち合わせどうだった?」
「会場の設営と片付けだからお祭りのあいだはわりと暇になりそうだよ」
「今年はゆっくり見れそうね、わたしも今回はメンバーからはずれてるし」
「そうなの?」
「珍しく他のイベントと被らなかったから人手は足りてるんだって」
「あやちゃんが剣舞に当たってるから一緒に見ようか」
「いいわね、楽しみだわ」
まどかさんはうれしそうに笑った。
鎌倉時代の武将を祀っているとかで観光客もけっこうくるらしい。
従妹のあやちゃんが奉仕している神社でもある。
そして僕も親父が氏子総代だったこともあり、お祭りなどの行事のときは駆り出されることになる。
土曜日のランチ営業が終わったあと夏祭りの打ち合わせのために神社へ向かった。
だいたいいつものメンバーなので役割分担をサッと決めてあとは世間話に花が咲く、僕はメンバーの中でも最年少であまり話す事もないので実質座って話を聞くだけだ。
やがて宮司さまが解散を告げたので帰ろうとすると能舞台で巫女舞の練習をしてるのが目に入った。
あやちゃんだった。
「あやちゃん」
「あ、お兄ちゃん!」
「お祭りの打ち合わせだったんだ」
「そうなんだ、もう終わるから一緒に帰らない?」
「いいよ」
あやちゃんが着替えるのを待って一緒に境内を出た。
「お祭りが近いから大変だね」
「そうなのよ、今年は特に剣舞が当たってるからね」
この神社の夏祭りでは剣舞や武者行列があり、観光客にも人気がある。
剣舞は巫女さんの持ち回りで今年はあやちゃんの番だそうで、ある意味お祭りのクライマックスなのでプレッシャーも半端ないらしい。
「お兄ちゃん今年のお役は?」
「割と暇なお役だよ、ラッキーだった」
「よかったねー」
親父が海外へ行ったあと引き継いでからひと通りの役割は経験してるのでもう慣れたものだ。
「じゃあわたしの剣舞もしっかり見れそうね」
「そうだね、久しぶりにお祭りの最中はゆっくりさせてもらえそうだよ」
「そのかわり準備と後片付けが大変だけど…」
「まぁね」
あやちゃんとこうやって一緒に歩くのもひさしぶりだ。
伯母さん、あやちゃんの母親は親父の姉にあたり、この街に越してきたのも伯母さんが住んでいることもあったようだ。
一人っ子だった僕を気遣って、ゆき姉とあやちゃんを連れてよくうちに遊びに来ていて三人でよく遊んだものだ。
特にあやちゃんとは歳が近いこともあり、学校への行き帰りが一緒だったことも多かった、それだけにまどかさんと暮らし始めて二人の距離が急速に縮まっていたときは複雑だったと思う。
正直言ってその時まで僕はあやちゃんの気持ちに気付いていなかったと言える。
気付いていたとしてもあの頃の僕にはどうしていいかわからなかったと思うが…
だけど今こうやって居られるのは彼女の中でなにかが変わったのだろう。
「お兄ちゃんどうしたの?」
考え込んでしまっていた僕を心配した顔で覗きこんできた。
「何でもないよ、それよりあやちゃんご奉仕楽しいかい?」
「うん!楽しいよ、みんな仲良いから神職のお勉強も教えあってる」
「そりゃよかったね」
神社の事となると目をキラキラさせているあやちゃんを見ると僕の懸念もどこかへ行ってしまう。
やがてあやちゃんの家の近くまで来た。
「お兄ちゃんありがとね」
「うん、剣舞の練習がんばってね」
満面の笑みのあやちゃんに見送られて家へ向かった。
帰宅するとまどかさんが夕食の支度をしていた。
「おかえりなさい、お祭りの打ち合わせどうだった?」
「会場の設営と片付けだからお祭りのあいだはわりと暇になりそうだよ」
「今年はゆっくり見れそうね、わたしも今回はメンバーからはずれてるし」
「そうなの?」
「珍しく他のイベントと被らなかったから人手は足りてるんだって」
「あやちゃんが剣舞に当たってるから一緒に見ようか」
「いいわね、楽しみだわ」
まどかさんはうれしそうに笑った。
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