洋食屋ロマン亭

みやぢ

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夏祭りの夜に<2>

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そして夏祭り当日、僕は会場の準備のため早朝から神社へ来ていた。

宮司さまから作業の安全を願う祝詞をあげてもらい、各自作業を始めた。

氏子のみんなは手慣れたもので大きなトラブルも無くおおかたの作業は終わった。

そうしているあいだに縁日の露店の人たちも続々と集まっている。
露店の設営を合間に見てまわると最近のキャラクター物の流行りなどがよく分かる。
子どもの頃は縁日に胸躍らせたものだがこうやってお祭りの裏方をするようになるといろいろ見方も変わってきている。

やがて本殿の方から和楽器の音色が聞こえ始めて神事が始まった。

設営の状況をひとわたり見て回って問題はなさそうなので氏子の詰めてるテントへ戻りひと休みする事にした。

武者行列がスタートする頃には境内はお客さんでいっぱいになっていた。

しばらくして詰所にまどかさんがやってきた。
「おーい翔ちゃーん、自慢の嫁さんがきてるぞ」
誰かが茶化すように言った。
御神酒が入っていることもあり皆ご機嫌だ。
「やれやれ…」
詰所のテントから出るとそこには浴衣姿のまどかさんがいた。

「ひさしぶりに着てみたけどどう?」
「良く似合ってるよ」
「うれしいな、最近こうやって純粋にお祭り楽しむことできなかったもの」

それはそうだ、氏子である僕はともかくまどかさんの事務所は慢性の人手不足だったからたいてい彼女も裏方仕事に駆り出されていたのだ。

「じゃあ行こっか」
「そうだね」

僕とまどかさんは手を繋いで歩き出した。

そして縁日の露店でふと足を止めた。
そこは子供向けのアクセサリーの露店だった。
「そういえば翔ちゃんにここで指輪買ってもらったよね」
一緒に暮らし始めてまだ間もないころ、まどかさんを元気づけたくてお祭りに連れ出した。

そのとき縁日の露店でねだられて買った子供向けの安物の指輪。

「そうだったね、あのあと学校に着けて行って先生に没収されそうになったよね」
「そこまで覚えてるのね…」
「そりゃ忘れないよ、二人で必死で先生に頭下げて返してもらったもの」

でもあのときの嬉しそうな顔は忘れられない。

「ふふっ、実は今日着けてきてるんだ」
「えっ?」

まどかさんの指には見覚えのある指輪がはめられていた。

普段まどかさんはあまり物を欲しがらない、クリスマスや誕生日に「なにが欲しい?」と尋ねても何でもいいと言っていつも悩まされていた。

かといって贈られた物にはものすごく喜ぶし大事にしている。

考えてみればこの時以来まどかさんが僕に何かをねだるといったことはなかった。

「大事にしてくれてるんだね」
「あの頃の翔ちゃんは両親が亡くなったばかりのわたしをずっと元気付けようとしてくれてたもの…だから初めて翔ちゃんがくれたこの指輪はわたしにとって最高の宝物なの」

そう言ってまどかさんは笑った。

そうだ、そしてあの夏祭りの夜、僕たちは約束した「なにがあってもずっと一緒にいよう」と。

その約束だけは違えるわけにはいかない、あらためてそう思った。

夏祭りの夜に <了>










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