花嫁は猫又⁉︎

みやぢ

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にあと僕と山の祠<2>

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 白い煙の中から現れた少女は僕に抱きついてほおずりしながら「会いたかった!」と何度も繰り返した。

「ちょっと待って!君はにあなのか?」
 そう僕が言うと少女はほおずりをやめて、こくりと頷いて言った。
「いかにも、そなたがくれた名じゃ」
「いったいどういうこと?」
「説明せねばなるまいな、我はこの祠に住み着いておった猫が「変化へんげ」した猫又じゃ、だが見ての通り祠は壊されてしもうた、欲にまみれた信仰心のかけらも無い愚か者共にな」
にあは続けた
「今の世では我らあやかしの姿すらることができぬものが多くなってしもうて畏れおそれ敬いうやまいの心すら持たぬものが増えておる…」
そこでにあはふと気づいた
「そなた、たけると言ったか、なぜ我の姿がえていた?」
「よくはわからないけど子供の頃から他の人にはえないものがえていたんだ、おじいちゃんが神社の神主なのが関係してるかもしれない」
「そうか、ともかく救ってくれた礼はせねばな…」
「これからどうするの?」
にあは腕組みして考えていた。
「どうするかの…元の姿にはおそらくもう戻れぬしな」
「どうして?」
「そなたに触れた時に全ての力を使って変化へんげした、もう元に戻るだけの力は残っておらぬ」
「そうなんだ…」
「たける、しばらくそなたの家に住まわせてはもらえぬか?」
「うーん、耳と尻尾の付いた女の子連れて帰って母さんがどう言うかだな…」
「常人にはこの耳と尻尾はえんよ、それにこの姿はそなたの好みを映しておる」
「…わかったよ、とりあえず話してみようか」
僕はにあを連れて家へと向かった。

「ただいま」
「おかえりたける、あら?お友達…ってその娘何…猫又?」
「いや、これには訳があって…」
「とにかく離れて!」

母さんは身構えた…

「ぬしにもえるのか、やめておけ、ぬしでははらえんよ」
「そうかしら?」

母さんは小声でなにか呪文のようなものを唱えた、次の瞬間にあは電気が走ったように動きを止めた。
「ふぎゃっ!」
はらえはしなくても動きを止めるくらいなら私にもできるわよ」
「わかった…悪さをするつもりは無い、むしろ我はたけるに救われた身だ」
「母さん!やめてよ」
母さんはまた呪文のようなものを唱え、にあは動けるようになった。
「ふう、どこでこの術を?」
「これでも神主の娘ですからね、ひと通り学ばせてもらったわ」
「そうか…それにしても並大抵の術師ではないな、いくら力をほとんど失ったとはいえ我の動きを封じるとは」
僕には理解できない事だらけだった。

「話を聞かせてもらおうかしら」
「わかったよ」
僕は今までの出来事を母さんに話し始めた。


にあと僕と山の祠 <了>

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