花嫁は猫又⁉︎

みやぢ

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天狗の住む森<1>

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夏の盛りのある日、おじいちゃんのお使いで僕とにあは山深い村にあるお寺を訪ねることになった。

電車とバスを乗り継いでようやく山のふもとに着いてここからは地図を頼りに歩いて行く。

蝉時雨の中お寺の山門までたどり着き、僕たちはひと休みすることにした。

「にあ、大丈夫?」
「うん、まだ大丈夫」
「もう少し休んだら行こう」

参道を歩いていると草むらからガサっと何かが動く気配がした、これだけ山深いと鹿や猿などの野生動物がいてもおかしくはない、僕たちは注意を払いながら山道を歩いて行った。

やがて本堂までたどり着くとおじいちゃんと同じくらいの歳格好のお坊さんが境内を掃き清めていた。

「こんにちは」
「たけるさんですね、遠いところご苦労さまでした」

おじいちゃんの親友の住職さまだった。

お寺の食堂へ案内されて僕たちはそこで待つことになった。

「たける、あの住職さまも…」
「うん、たぶんそうだろうね」

にあも何かしらあやかしの気配を感じ取っていたようだ。

しばらくして住職さまが戻ってきて、僕たちと向かい合って座った。

「たけふみさんはお元気にされていますか?」
「はい」
「そうですか、よかった」

そして住職さまはお寺の由来と自身の出自について話してくれた。

「たけるさんもお気付きだと思いますが、私はこの森に住まう天狗の末裔なのです」

住職さまが話を続けていると、トントンとふすまを叩く音がして作務衣を着た少年がお茶を持って入ってきた。
「失礼します、お茶をお持ちしました」
「孫のてんまです、この子をたけふみさんのもとで人間界の修行をさせることにしました」
「てんまです、よろしくお願いします」

歳格好はたまとおなじくらいの少年だった、もっともたまは付喪神なのではるかに歳上なのだけど…

「山門からずっと見守らせていただきました、この山には猪なども出るので…」
「なるほど、あの気配は君だったんだね」
「お気付きだったんですね、さすがです」

そう言っててんまはにっこりと笑った。

「ところでそちらの方は…」
「あぁ、にあは一緒に住んでる猫又だよ」

てんまは照れたような表情をした。

そしてその夜はお寺の宿坊に泊めてもらった。

「なぁたける、わたしは考えを改めなければいけないのかもしれない」
「どうして?」
「あやかしはもっと息を潜めて生きているものだと思っていたが、天狗さまや化け狸のみんなを見てそうではないかもしれないと思い始めたんだ」
「…」
「でもあやかしにとって住みにくい世の中なのは間違いではないけど」
「そうだね、だから僕は人とあやかしが共存できる場所を作りたいんだ」
「わたしもたけるの気持ちがわかった気がする」
「だからにあ、そばにいて手伝って欲しいんだ」
「…うん」

そうして夜はふけていった。









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