19 / 31
天狗の住む森<2>
しおりを挟む
翌朝、目が覚めるとにあは縁側で外の景色を眺めていた。
「どうしたの?」
「ここはわたしの住んでいた山に似ているからなんだか落ち着くの」
「そう、少しゆっくりしよう」
隣に座るとにあは僕に身体を預けてきた。
「ずっとこうしていたいね」
蝉時雨の中でふたりは言葉を発することなくお互いの鼓動を感じていた。
しばらくしててんまくんが朝食の用意ができたことを告げに来た。
「おはようございます、朝食の用意ができました」
「ありがとう、すぐに行きます」
食堂へ行くと住職さまが待っていた。
「おはようございます、山寺なのでたいしたものはお出しできませんが…」
お寺の朝食らしい質素なお膳だったけれど一つ一つのお料理の味は素晴らしかった。
帰り支度をして部屋を出ると洋服に着替えたてんまくんが待っていた。
「街に出るのでそれ相応の格好をしないと、と思って…」
てんまくんは照れくさそうにしていたが、年相応に少年らしくてよく似合っている。
「別に変じゃないよ、よく似合ってるよ」
そういうとてんまくんは嬉しそうに笑った。
山裾のバス停から僕たちはバスに乗って家へと向かった、てんまくんはひさしぶりに乗るバスに緊張気味だった。
「ありがとうございました」
バスが終点の駅前に着いて僕は三人分の料金をバスの料金箱に入れた。
そして電車の切符を買って一枚てんまくんに渡すと不思議そうな顔で受け取った。
「たけるさん、僕電車に乗るのは初めてなんです」
「そうなんだ、その切符を僕がするとおりに改札機に入れるんだよ」
「こうして…わっ‼︎」
にあもそうだったが恐る恐る切符を改札機に入れたてんまくんは勢いよく切符が吸い込まれたのに驚いた表情をしていた。
こうして僕たちは家に帰ってきた。
「ただいま~」
玄関を開けるとたまが走ってきた。
「たける兄さま~あらっ…その方は?」
「今日からしばらくうちで暮らすてんまくんだよ」
「てんまです…今日からお世話になります」
「小天狗さんでいらっしゃるのね…」
てんまくんは同年代の見た目のたまを見て少し照れたような表情をした。
そしてたまも少し頬を赤らめているようにみえた。
「いらっしゃい、てんまくんだったわね」
母さんがやってきててんまくんを出迎えた。
「お世話になります」
「自分の家だと思って過ごしてくれていいのよ、たまちゃんのいい遊び相手になりそうね」
こうしててんまくんはわが家の一員となった。
僕が学校へ行ってる間はたまの相手をしているそうだ。
そして僕たちがお社の奉仕に行く日は一緒に行っていろいろなことをおじいちゃんやみずきさんから学んでいる。
今日もお社の奉仕から帰ってくるとパタパタとたまが玄関まで走ってきた。
「てんまさま~!」
「わっ!たまさん…ただいまです」
たまはてんまくんのことが気に入ったようで真っ先に抱きつくようになった。
てんまくんはまだそういうことに慣れないようで困惑してるけれど…
「どうしたの?」
「ここはわたしの住んでいた山に似ているからなんだか落ち着くの」
「そう、少しゆっくりしよう」
隣に座るとにあは僕に身体を預けてきた。
「ずっとこうしていたいね」
蝉時雨の中でふたりは言葉を発することなくお互いの鼓動を感じていた。
しばらくしててんまくんが朝食の用意ができたことを告げに来た。
「おはようございます、朝食の用意ができました」
「ありがとう、すぐに行きます」
食堂へ行くと住職さまが待っていた。
「おはようございます、山寺なのでたいしたものはお出しできませんが…」
お寺の朝食らしい質素なお膳だったけれど一つ一つのお料理の味は素晴らしかった。
帰り支度をして部屋を出ると洋服に着替えたてんまくんが待っていた。
「街に出るのでそれ相応の格好をしないと、と思って…」
てんまくんは照れくさそうにしていたが、年相応に少年らしくてよく似合っている。
「別に変じゃないよ、よく似合ってるよ」
そういうとてんまくんは嬉しそうに笑った。
山裾のバス停から僕たちはバスに乗って家へと向かった、てんまくんはひさしぶりに乗るバスに緊張気味だった。
「ありがとうございました」
バスが終点の駅前に着いて僕は三人分の料金をバスの料金箱に入れた。
そして電車の切符を買って一枚てんまくんに渡すと不思議そうな顔で受け取った。
「たけるさん、僕電車に乗るのは初めてなんです」
「そうなんだ、その切符を僕がするとおりに改札機に入れるんだよ」
「こうして…わっ‼︎」
にあもそうだったが恐る恐る切符を改札機に入れたてんまくんは勢いよく切符が吸い込まれたのに驚いた表情をしていた。
こうして僕たちは家に帰ってきた。
「ただいま~」
玄関を開けるとたまが走ってきた。
「たける兄さま~あらっ…その方は?」
「今日からしばらくうちで暮らすてんまくんだよ」
「てんまです…今日からお世話になります」
「小天狗さんでいらっしゃるのね…」
てんまくんは同年代の見た目のたまを見て少し照れたような表情をした。
そしてたまも少し頬を赤らめているようにみえた。
「いらっしゃい、てんまくんだったわね」
母さんがやってきててんまくんを出迎えた。
「お世話になります」
「自分の家だと思って過ごしてくれていいのよ、たまちゃんのいい遊び相手になりそうね」
こうしててんまくんはわが家の一員となった。
僕が学校へ行ってる間はたまの相手をしているそうだ。
そして僕たちがお社の奉仕に行く日は一緒に行っていろいろなことをおじいちゃんやみずきさんから学んでいる。
今日もお社の奉仕から帰ってくるとパタパタとたまが玄関まで走ってきた。
「てんまさま~!」
「わっ!たまさん…ただいまです」
たまはてんまくんのことが気に入ったようで真っ先に抱きつくようになった。
てんまくんはまだそういうことに慣れないようで困惑してるけれど…
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる