花嫁は猫又⁉︎

みやぢ

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僕とにあの二人旅<1>

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僕とにあは旅行に出発する前日の夜、荷造りの最終確認をしていた。

「たける、明日は楽しみだね」

いつになくにあは嬉しそうだった。

「初めての旅行だし、なによりもたけると一緒だもの」

そう言ってニコニコと荷物をまとめていた。

僕も持っていく物を確かめて早めに床に着いた。

そして当日の朝、僕とにあは駅で列車が来るのを待っていた。

そして定刻通りに列車がホームに滑り込んできた、僕たちはボックスシートに座ってガイドブックを広げて行程を眺めている。

列車で約二時間半ほどの山裾にある温泉宿、有名な観光地ではないけれど豊かな自然が売りのようだった。

すぐそばに大きな川が流れていて、河童伝説があって町ではそれを町おこしに利用しているらしい。

そしてそういう地方に伝わる伝説のたぐいをまとめた本を書いた有名な学者の生まれ故郷でもあり、生家が記念館になってるそうだ。

「なぁたける、河童って居ると思う?」

「そうだね、ちょっと前までならにわかには信じられなかっただろうけど、こうやってにあや他のあやかしと繋がってる今なら居ると思えるよ」

「会ってみたいね」

「そうだね、ぜひ会ってみたいね」

やがて列車は乗り換え駅についた、ここからはローカル色豊かな路線になる。

少し古い車両にゴトゴト揺られながら目的の駅に着いた。

宿の人が迎えに来るまでにはまだかなり時間があるので荷物をコインロッカーに預けて駅周辺を観光することにした。

駅の観光案内所でいろいろ教えてもらって、お昼ご飯を兼ねて妖怪にまつわる観光施設を訪ねることにした。

小高い丘にある広い公園のあちこちに妖怪を形取った立像が配されていて、一緒に記念写真を撮ることもできる。

「ほら、猫又もいるよ」

すこしおどろおどろしい姿の猫又の像の前でにあがポーズをとる。

「わたしもこんな怖い姿に見えてるんだろうか?」

「そんなことはないよ、にあは可愛いよ」

そう言うとにあは顔を赤らめた。

「ばか…」

公園の中にある食堂でお昼ご飯にしたのだけど、
地元の特産品をふんだんに使ったお膳は美味しくてボリューム満点で2人ともお腹いっぱいになった。

「おいしかった~」

「ほんと、お腹いっぱいになったね」

にあも満足げだった。

そろそろ宿の人が迎えに来る時間になったので駅へ戻って荷物を取り出してると、向こうから一杯に膨らんだスーパーの袋をぶら下げた男の子がやってきた、そして僕たちの目の前でその袋が破れて中身を盛大にぶちまけてしまった。

「わーっ!破れちゃった‼︎どうしよう…」

僕とにあは転がった中身を拾い集めた。

「ごめんなさい…ありがとうございます」

男の子はそう言って頭を下げた。

「困ったなぁ…どうやって持って帰ろう」

男の子が困った表情をしているのを見て僕はひらめいた。

「ちょっと待ってて…」

僕はそう言うと駅のお土産屋さんに駆け込んで事情を話して大きめの袋を分けてもらった。

「これなら大丈夫だろう」

「ありがとうございます」

男の子が深々と頭を下げた。

「ご旅行ですか?」

「そうなんだ、もうすぐ宿の人が迎えにきてくれるんだ」

「宿って…もしかして清流館ですか?」

「そうだけど?」

「今日来るお客さんって貴方たちだったんですね」

「?」

「あっ!すみません、僕清流館の息子で三太って言います」

「えっ!息子さんだったの⁉︎」

「買い出しに来てて父さんがお客さん迎えに来るから一緒に帰ろうって言ってて…」

そう話していると駅のロータリーに一台のワゴン車が滑り込んできた。

側面に「清流館」と大きく書いてあるワゴン車から小柄なおじさんが降りてきて僕の名前を呼んだ。

おじさんと三太くんが荷物を積み込んでくれて僕たちも乗り込んだ。

出発する前におじさんが運転席から僕たちの方を向いて
「息子がお世話になったそうで、ありがとうございます」
と言って車を走らせた。
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