花嫁は猫又⁉︎

みやぢ

文字の大きさ
28 / 31

河童の宿<1>

しおりを挟む
翌朝、目覚めるとにあはまだ眠っていた。

起こさないようにそっと布団を出て縁側に腰かけているとしばらくしてにあが起きてきた。

「にあ、おはよう」

「おはよう、たける…」

お互いに昨夜のことを思い出して顔を赤らめていた。

隣に座ってきたにあは僕の肩にもたれかかってきてひとことだけ言った。

「ありがと…」

これ以上の言葉はいらなかった。

しばらくして仲居さんが朝食の用意ができたことを告げに来た。

大広間での朝食だったけれど、オフシーズンだけあって食事をとっているのは僕たちを含めて数組だけだった。

そして他の宿泊客が部屋に戻ったのを見計らったように宿のご主人が僕たちのところへやって来た。

「少しお話させていただいてよろしいでしょうか?ここでは他人の眼もありますので…」

そう言って小さな和室へ通された。

「つかぬことをお伺いしますがあなた様は龍神さまのご眷属ではありませんか?」

唐突にそう言われて僕は面食らったけど今さら隠すことでもないのでそうだと答えた。

「失礼いたしました、実はわたしどもは河童の一族でして…」

そう言われて僕は納得した、というのもここへ来てからなんとなく感じるものがあったからだ。

「やはりそうでしたか」

「われら水辺に住まうあやかしにとっては龍神さまは守護神といえます、そのご眷属に失礼があってはと思い、あえて明かさせていただきました」

伝説の河童「河太郎がたろう」から連綿と続く河童の一族としてこの地に根付いた暮らしをいているのだそうだ。

彼が言うには最近温泉の出が悪くなり、いろいろ調べても原因がわからず、肝心の泉源に近づこうにも結界が張られたように彼らでは近づけないのだそうだった。

「何か霊的な障害が起こってるとしか思えないのです…」

「そうなんですね…でも僕の力でお役に立てるか」

「龍神さまのお力なら少なくとも結界の中に入ることはおそらく可能かと思います」

「…と言っても僕は1/4しか龍神の血筋が…」

「お願いします!」

額を床に擦り付けるばかりに頭を下げるご主人に気押されて僕はとりあえず見に行くことを約束した。

そして宿の裏山の中腹にある泉源に僕とにあ、そしてご主人の三人は向かった。

「ここです、わたしは何故かこれ以上中には入れないのです」

にあのいた祠と同じくらいの大きさの小屋だった、入り口に建てられた柱には注連縄が渡してある。

「この注連縄は?」

「龍神さまをお祀りしておりますので…」

そして注連縄をくぐる時、何か空気が変わった気がした。

「にあ、何かいる…気をつけて」

そして僕は小屋の扉を開いた…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...