花嫁は猫又⁉︎

河童の宿＜2＞

小屋の扉を開けるとただならぬ雰囲気が漂ってきた。

暗がりの中で何かが動く気配がした、そしてシャーッという威嚇とも取れる声がした。

「ちょっとやばいかもな…にあ、ご主人と隠れてて」

次の瞬間、何かが飛びかかってきた！

「くっ…！」

僕は小さく祝詞を唱えた。

パァァン！と弾けるように何者かは跳ね返った。

今の僕では防御するのが精一杯だ、どうすれば…

「たける！伏せろっ‼︎」

背後から声が聞こえ、反射的に僕はしゃがみ込んだ。

エネルギーの塊のような何かが頭上を通り過ぎていく感じがした。

そしてそれは黒い影に直撃し、悲鳴のような声をあげて動きを止めた。

振り返るとそこにはかずま叔父さんがいた。

「たける、怪我はないか？」

「うん、大丈夫」

「さがってろ、奴はまだ生きてる」

そう言うと叔父さんは横にいた山伏のような大男と小屋へ入って行った。

「りょうま、封じるぞ！」

「おう！」

りょうまと呼ばれたその山伏は護符を手に身構えた。

叔父さんが祝詞を唱えると青白い炎のようなものに包まれてその黒い影のようなものはもがきながら小さくなっていく、
そしてそこには小さな石ころのようなものが残った。

山伏がその石ころを護符で包んで懐から出した小さな壺に入れ、さらに壺の蓋に護符を貼り付けて封印した。

「ふう、終わったな…」

「叔父さん、どうしてここに？」

「街の人に頼まれてな…お前こそなんでここにいる？」

僕はにあと旅行に来ていること、そして泊まっている宿の主人に頼まれて見に来たことを伝えた。

「そうか、お前も別のルートで解決に動いていたわけか」

その時山伏が僕に声をかけてきた。

「たけるさんですね、息子…てんまがお世話になってます」

「え？てんまくんのお父さん⁉︎」

予想もつかなかった言葉に僕は面食らった。

「私も先生…たけるさんのおじいさんの元で学ばせていただきました」

そして物陰に隠れていたにあと宿のご主人が出てきた。

「無事に終わったようですね、ありがとうございます」

丁寧に頭を下げたご主人はバツの悪そうな顔で続けた。

「街の方からも依頼があったのですね、知らずに出過ぎた真似をしてたけるさんを危ない目に…」

「もう済んだことだ、気に病むことじゃない」

そう言って叔父さんが制した。

「あれって一体何だっただろう？」

そう呟いた僕にかずま叔父さんは

「おそらく祀られていた龍神の一部、たぶん爪だろうがそれが禍津神まがつかみに変化したものだろう」

「そうなんだ…」

「禍いわざわいをもたらす神もいるってことだ」

そして僕たちは山を降り、街に報告に行くという叔父さんたちと麓で別れた。