ちぃちゃんと僕

みやぢ

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プロローグ

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高校を卒業後、就職してもうすぐ一年になろうとする頃、事件は起きた。

月初めの朝礼で常務が突然、
「今月末で当社は廃業することになりました」
と告げた。

古参の社員の人たちは薄々勘付いていたのか大きな動揺はなかった。

しかし、僕にとっては大問題だ。

小さな会社なので社員寮はなく、普通のアパートを借りて住んでいるので家賃、光熱費などは当たり前に発生する。

当面は失業保険でしのげるが、勤続年数が短いのでそう長くはもらえないから遊んでいるわけにもいかない。

どうしよう…そう考えているうちに月日は過ぎていく。

昼休みにふと広げた新聞の求人欄に目をとめた。

街の対岸に浮かぶ大きな島、天城島。
近々本土とつながる橋が開通するので島全体をあげたイベントが催される、その会場での住込みのアルバイトの求人だった。

団体客の記念撮影の誘導や撮影、写真の販売などの仕事らしい。

高校時代写真部に所属していた僕にとっては興味深い仕事だった。

隣町の写真材料メーカーの営業所で面接があるそうだ。

さっそく広告に書かれた電話番号にかけてみた。

面接の日程と時間はすぐに決まった。

面接当日は仕事内容の説明と簡単な質問に答えてすぐに終わった。

期間はイベント開催の二週間前から終了まで。

島内の事務所の近所のマンションを借り上げて寮にしてそこから通うことになるそうだった。

数日後、採用の連絡が来た、とりあえず寮に入居してから他県で今開催中の国際的な博覧会の会場へ一週間の研修に行くことになる。

そして今の勤め先での後片付けを終えてアルバイト先への赴任を待つだけとなった。

会期当初から参加するのは僕とニシさんと言う少し年上の男性の二人だけだった。

連絡船の乗り場でニシさんと待ち合わせて一緒に島へ向かった。

ニシさんは浅黒く日焼けした豪快な性格の人で、道中のバスですっかり僕たちは意気投合した。

バス停から少し歩いたところに「天城フォトサービス」の事務所はあった。

島全体が観光地のこの島で遊覧船の発着する港のそばにある。

この港で遊覧船に乗る団体客の記念撮影をするのが主な仕事らしい。

事務所で顔合わせをして簡単に説明を受けて近くの寮へと案内された。

ごく普通の2LDKのマンションで一階にスーパーがテナントとして入っているので買い物には困らなさそうだ。

港の周辺に観光客向けの施設があるぐらいのひなびた漁村だった。

コンビニは無く、スーパーと喫茶店は7時で閉店してしまう、あとはお酒を提供する居酒屋やスナックが何軒か開いているだけだ。

夜は退屈しそうだな…

二日後、僕とニシさんは研修へと出発した。

研修先への移動は一日仕事だった。

最寄り駅まで研修先の人が車で迎えに来てくれていた。

全く知らなかったのだけど、観光地で記念撮影をしている業者の全国組織があって、今回のような大きなイベントの時は何社かが寄り集まって合同で仕事をするのだそうだ。

今回の博覧会でも全国から集まった寄り合い所帯のような感じだった。

会場近くのマンションを寮代わりにして
全国からアルバイトが集まっている。

一週間だけだったけれど皆優しくしてくれた。

研修から戻ってからは実際に会場の駐車場でお客の誘導などのロールプレイに明け暮れた。

この時からキノシタさんという提携先の会社の人とハセガワさんというアルバイトの女性が加わった。

バスだけでなく時々客船でも団体客が来るのでそれをどう捌くか入念に話し合った。

そして会期が始まる前々日、お休みをもらえたので僕は自宅へ原付バイクを取りに戻った。

同じ日にニシさんも自家用車を取りに帰っていた。

そして、いよいよ開幕の日を迎えた。






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