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~第一章~
13話
しおりを挟む次の日、傷のせいで高熱を出してしまったお兄様にゆっくり休んんで貰えるように私はすぐに部屋に戻された。
それは仕方ないだろうと思い、私も素直に離れる
昨日は色んな意味で疲れてしまったお兄様に私と過ごすことで少しでも安心してもらおうと、ずっと私を気にしていた様子でうなされているお兄様に対する処置だったようだ、
さすがにしばらくお母様に会いに行けなくなるお兄様の事と、父のした事を報告しない訳にはいかなかったようでタヌカとルーシーは共に朝からいない。今日はいつも庭師からお花を預かり私に届けてくれる侍女が私に付いてくれていて、色々と私の気を紛らわせようと本を読んでくれたりお花の図鑑を出してくれて沢山の話をしてくれる。
お兄様がお母様のかわりにこなしていた執務など、出来る事はマルゴがタヌカの戻るまで代行し、タヌカにもどうしても出来ない事はお兄様の体調不良で、と待ってもらう事になったようだ。
きっと本来なら体調不良などで仕事を待ってくれるほど甘くはないのだろうけど、今のお母様の状況を知って下さる方々なので快く言いお返事が返ってきたそうだ
もしかしたらお兄様の事を心配したお母様がまた体調が悪くなったりしないだろうかと心配していた私だったがお母様の部屋で会話する三人様子がどれほど緊迫した雰囲気だったのか私が知る由もない事だった。
公爵家当主寝室でノンラに背中を支えてもらいタヌカから昨日あった事を聞き涙をこぼす母タヴィアの姿があった。
その横には深く頭をさげる家令のタヌカと侍女帳のルーシーの姿があった
「本当に申し訳ございませんでした、すべての事を予想しラスウィータ様をお守りするわたくしめの役目を果たせず、お怪我を防ぐ事ができずこのような報告をする事になってしまい........お体の弱ったタヴィア様にまたも心配の種を増やしてしまい、まことに.....まことに、申し訳ありませんでした。
この責任はすべてわたくしめの責任でございますゆえ、どうかこのルーシーには寛大なお心をお願いします。」
タヌカの必死の謝罪に、静かに涙を零していたタヴィアが口を開く...
「いいえ、お前に責など、といません....
息子が立派にこの家の為に動いた事です...わたくしの息子は本当によく頑張ってくれました。
その息子を支えてくれたタヌカに責など問うはずがありません.....
感謝する事はあっても、叱責する事などわたくしにはございませんよ。
それにルーシーにも責など問いません、ルフレーラは日々元気に成長していると話しは聞いておりますし、この間会いに来てくれたあの子の顔を見ていれば分かります。
いつも二人にはわたくしの大切な子ども達を見守り成長させてくれている事にとても感謝しておりますのよ。」
そういって涙を軽く指でぬぐい、微笑みながらありがとうと言うと軽く頭を下げる。
そのような有難いお言葉私ども使用人にはもったいなきお言葉でございます、ですがとても嬉しく思いますのでその言葉を励みにこれからも精一杯お使いさせて貰いますと改めてタヌカとルーシーが頭を深く下げ、これからもこの家とこの優しき立派な主人に誠心誠意お使いする事を心に誓う二人に、さっきの声よりとても元気のない声でタヴィアがさらに語りかけてくる。
「ですが責があるのはわたくしなのかも知れませんね。
夫のネルノイをここまで放置し、勝手をさせてきたのはわたくしです。
後継者の為だけに婿に来てもらった事に負い目があったわたくしがせめてここで生きていく為に不自由のない生活をと、そう思いあまり注意せず好きにさせて来たのですから、責があるとすればそれはわたくしにあるのです。
まさか契約の内容まで忘れるような事になっているような方になっているとは思ってもみませんでしたし、まさか自分の息子に正論を言われたからと言って殴りつけるような方になっているなんて思ってもみませんでした。
もともと自分の子供やこの家の事に興味の無い方だとは
思ってはいましたがそこまで勝手をするようでは一番最初にあの方の家と結んだ約束も考え直さねばならないようですね.......」
そう言って静かに下を向き考えるタヴィアにやはりネルノイを自由にさせてしまった事に対する思いが今まで溜まっていたのだとタヌカは思うのだった。
そしてこの約束と言うのは、今この家をもっとも悩ませている者がこの家に来る事になった時にネルノイの実家と交わされた約束なのだ
それは、まだ元公爵当主がご健在だがご高齢の為、タヴィアに爵位を譲られると言う事が決まった日にそれならば婿養子選定を進めなければならないと言う話になったあの時から始まった。
公爵家の婿にと言う話でも、公爵家の後継者の為に入ってもらうだけなのだ
いくらなんでもそんな都合よく見つかるものでもない、それに入ってくる実家の力が強すぎてタヴィアの当主としての役割に口出しをされても困るのだ。
しかも仕事を手伝ってもらう事は大いに結構だが重要な事には関わる事ができず、男としてはとても肩身の狭い思いをさせてしまう事になる
だから貴族の中でもできるだけ実家の末の兄弟に生まれ、今後自分で身を立てるしかないと言う人物を探したのだが、やはりそんな簡単に見つかる筈もなく困っていた
それはそうだろう。自分達の子供の将来を考え娘ならいざ知らず息子を沢山作る家はいない....
長子や次子ならば実家の爵位をついだり、政略的な婿養子で尚且つその家の当主になれる事もある。
でも、今探してるのは次の後継者を作る為だけに夫となるものなのだ。
いくらなんでも、はいどうぞと自分たちの子供がこれから肩身の狭くなるような家に渡すわけがない
仲のいい交流がある貴族達には申し訳ないがさすがに受け入れられないと言われてしまい、まぁ仕方ないと快く断りを受け入れ、探し続ける
そんな時に見つけたのがネルノイの実家の子爵家だった。
公爵家に婿養子に入れるには少々位が低かったが、この際タヴィアの夫にするのにいい年齢でこちらの想いの通りに婿養子に了承してくれると言うのだ
何故その子爵家が婿養子に出すのを了承してくれたのか経緯を聞けば、昔から続く子爵の家系なのだがこれといった功績も名産もなく子爵領も今は町程度の大きさしかなくほとんど貴族としての生活ではなくなり、すこしお金のあるくらいの平民と同じくらいでもう没落寸前だったのだと言う。
それでも一人息子であるネルノイに苦労を掛けまいと色々と手はうったがすべてうまくいかずもうどこかの娘しかいない貴族の元に婿にだし自分たちの代でこの子爵家を王家に返上するつもりだったと言う
それでも没落しかけの家の息子をとってくれる家などなく適齢期が近づき困っていた所にこの話を聞いたのでダメもとで来たのだと。
その代わりにと言ってこの子爵家と政略的な婚姻を結ぶ時に向こうの子爵家の当主からお願いされ、約束をかわしたのだ。
それは公爵家との約束ではなく、次期当主であるタヴィア個人との約束で、しかもきちんとした書面がある約束なのでたがえることの出来ない物なのだが....それくらいはと、快く書面にサインをしたのだった。
その約束と言うのは....
・もし自分たちが亡くなり子爵位を国王に返上しても、それを理由に離縁をしない。
・後継者が産まれたからと言って離縁しない。
・公爵家でネルノイに対しぞんざいな扱いをしない。
簡単に説明をするとこの3つで、本来はもっときちんとした書き方をしているのだが要約すればこのようになる。
タヴィアがこの約束をする事で安心して自分たちはまかせられると言うのだ。
ネルノイの親である子爵の最後の願いと聞きタヴィアも必ず守るので安心してほしいと言い、なるべく不自由のない生活を約束した。
この約束が今後タヴィアがネルノイに自由を与えてしまう原因にもなるのだが、そもそも公爵家に泥を塗るようなマネをしなければ好きにしてくれてよかったのだ...
自分に愛する子供たちをくれ、執務で忙しい日々に文句を言われることもなく妻としてあーしろこーしろと言われる事もない。時々横暴な事も言うがそれを含めたとしても自分の生活に満足していたから何も言わなかったと言うのもある
ただし、タヴィアもネルノイと契約を別にしてるのだ。
一つは仕事をしてくれるなら、自由にできるお金をひと月に一度渡すと言う事だが....
あと二つある。
それは、どんなに嫌でも2人子供が欲しいと言う事。
愛のない政略結婚の為自分との行為が嫌かもしれないがそれだけは守ってほしくてこれを契約にいれた。
タヴィア自身が一人っ子で小さい時から兄弟に憧れを持っていたのだ
だからせめて二人と言う契約にした
もう一つは公爵家に婿養子に入るにあたって、これからは自分も公爵家として見られるのだからそれ相応の立ち振る舞いをし、タヴィアに子供を作ってくれれば自由にしてくれて構わないがそれなりの自覚を持ってこれから行動してほしいと言う事だった。
そしてネルノイは約束どうり与えた仕事は今まではこなしてきたし、使用人に対する態度は悪いが子供も二人作ってくれた。外に出ることは多かったが、それでも悪い噂などは聞かなかったため、タヴィア自身が何かを言う必要もなかった.......
だがある日を境に、今までよりもタヴィアや使用人、息子に対する態度がさらに悪化したのだった......
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