私達の星春群像奮闘記

Remi

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10節 親心、子心

第168話 余計なお世話

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 駅前近くは既に警察による交通規制が始まっていた。

 いつも規制線の中には、真聡《まさと》が事情を説明してくれて入っていた。
 でも、今日は私1人。

 ……入れてもらえるのかな。

 そんな不安を抱えながらも、私はあまり人が集まってない規制線を探す。
 そしてその前に立つ警察官に事情を説明してみる。

 すると、少し時間はかかったけど中に入れてもらえた。


 そして戦闘は、そこから少し移動した駅前のバスターミナルで行われていた。

 私は現状を把握するために歩道橋を上る。

 見渡すと、バスターミナル一面に澱みが大量に湧いていた。
 そんな澱みと戦っている星鎧の鎧の色は黒、赤、黄、青。

 志郎《しろう》を除いた4人が既にいるみたい。


 でも、肝心の堕ち星が見つからない。


 高所に居る私は、辺りを見回してみる。


 確か……前に戦ったときは上から落ちてきた。


 それを思い出した私は、視線を地上から上にあげる。


 するとビルの壁面に夕闇に紛れながら動くものが見えた。


 堕ち星だ。


 私から見て、頭が右下の方を向いている。
 私は視線の先をそっちに変える。


 目に入ったのは、ビルの陰から真聡達と澱みの戦いを見ている私の両親だった。


 いや、なんで2人ともいるの!?
 そして、きっと堕ち星には気づいていない!


 一方、とかげ座の堕ち星は狙いを定めてそうな動きをしている。


 ……このままだと、お父さんとお母さんが危ない。


 でも歩道橋を下りて走っていくと、きっと間に合わない。
 途中で星鎧を生成したとしても。

 
 それに私が庇うだけでも駄目。


 ……だったら、一か八かの賭けだけどやるしかない。


 私は星力を足に集中させる。
 これで多少の衝撃は耐えられるはず。


 息を吸って。


 吐いて。

 
 そして覚悟を決めて、手すりを飛び越えて歩道橋から飛び降りる。


 まずはほぼ真下で放置されている、路線バスの屋根上に着地する。
 そのまま屋根の上を走って、もう一度飛び降りる。

 そして今度は地面の上に着地する。

 両足がジンジンと痛む。

 やっぱり星鎧を纏わず、星力だけだったのは無茶だったかも。
 でも今はそんなこと言ってられない。

 私は止まらずにそのまま走り出す。
 同時に次は右手に星力を集中させる。

 私はまだ、生身でちゃんと武器を生成できたことがない。
 でも今は、成功するのにかけるしかなかった。

 車道と横断歩道を突っ切って、両親と堕ち星の間に何とか滑り込む。

 槍はまだ生成しきれていない。
 手の中で紺色と深紅色の光が混じって渦巻いてる。

 それでも私は、お父さんとお母さんを助けたい一心で槍を持っているつもりで構える。


 だけど、とかげ座は既に落ちてきている。


 私は生成されることを信じて、突き出す動作を取る。


 すると、とかげ座が目の前まで来たそのとき。
 一瞬にして、いつもの深紅色の槍が生成された。 

 とかげ座は突然現れた槍の穂先に接触する。

 私はそのまま槍を押し飛ばす。
 するととかげ座は槍と共に押し飛ばされて、山なりに飛んで背中から地面に落ちる。

 ……槍は途中で消滅したけど。

 だけど、とりあえず何とかなった。
 後ろで両親が私を呼んでるのが聞こえる。

 ……話すなら、今なのかな。


 だけどとかげ座は既に立ち上がって、もう一度突っ込んできている。


 しまった。
 助けるのに必死で2撃目以降は何も考えてなかった。

 私は慌ててギアを喚び出そうとする。
 でもこの距離だと星鎧が生成されるまで間に合わない。

 そのとき。
 雄叫びと共に橙の何かが私を追い抜いて、とかげ座を吹き飛ばした。

「遅くなって悪りぃ。大丈夫か?」

 橙色の星鎧、平原《ひらはら》 志郎《しろう》が振り向きながらそう言った。

 とりあえず、助かった。
 ……何かみんなに助けられてばっかり。

 でも助かったのは事実。
 私は「大丈夫、ありがと」と言いながら志郎の横に並ぶ。

 そして今度こそギアを喚び出そうと左手を動かす。
 だけど、志郎の行動の方が早かった。

「あいつは俺が相手しておくから、鈴保は先に両親と話せよ」

 そう言い残して、志郎は走り去ってしまった。
 「お前の相手は俺がするぜ!」と堕ち星に向かって叫びながら。

 余計なお世話なんだけど……。

 というか、何で志郎がそのこと知ってるの?
 私、言ってないんだけど?


 ……でも今話さないと、私はまた逃げてしまうかもしれない。


 私は振り返って、両親の顔を見る。

 心配そうな顔をして、私の名前を呟く両親。
 私は、覚悟を決めて自分の想いを口にする。

「……別に、私はお父さんとお母さんが本当に嫌いなわけじゃない。ちょっと行き過ぎた心配とか愛情表現は嫌だけど。
 だけど、2人が私のことがとても大切で、心配してくれてるのは……分かってるつもり。
 ……でも私は、この力に選ばれたからには戦いたい。
 それに、他の皆に戦いを任せて、自分だけ逃げるなんてしたくない」

 とりあえず、言えた。
 あとは、2人が何て言うか。

 衝撃音が聞こえる街中で、私は両親が口を開くのを待つ。

 すると、お母さんが「でも……」と口を開いた。

「ママはすずほちゃんが傷つくのは見たくないわ……」
「ママの言う通りだ。実際、陸上で怪我を……」
「そうよ。あんなに空っぽなすずほちゃん、もう見たくないわ」

 ……そっか。
 2人は私が怪我をして大会に出れなくて、全部投げ出したくなったことを今も気にしてくれてるんだ。

 今思うと、最初に陸上を止められたのもそういう挫折があるかもと思ってくれてたのかな。

 ……いや、それはそれで過保護が過ぎるでしょ。

 それに、そうやって逃げてても何も始まらないし。


 あと今の私は、あのときの私とは違う。


 私は深く息を吐いて「……大丈夫」と口を開く。

「今は、ちゃんと大事な友達も、頼れる仲間もいるから。
 それに戦いから逃げて、肝心な時に目の前の誰かを助けれない方が嫌だし」

 私はそう言い切って、まっすぐに両親の目を見る。

 ……こうやってまっすぐ見るの、いつぶりかな。

 すると、お母さんが「すずほちゃん!」と言いながら駆け寄ってきて私を抱きしめた。

 外だからやめて欲しい。

 ……でも、今だけは仕方ないかな。

 私がそう思ってると、お母さんが言葉をかけてくる。

「……止めても無駄よね。
 でもすずほちゃん、1つだけ約束して?」
「なに?」
「絶対、無事で帰ってきてね」
「そうだな。親を残して先に逝くなんて親不孝は絶対に、パパ許さないからな」

 お父さんも近づいてきてそう言った。
 私は2人の言葉に「わかってる」と返事をする。

 ちょっと大げさな気がする。
 でも、それだけ私のことを愛してくれてるってことの表れだと思えた。

 そして私はお母さんの腕の中から出て「行ってきます。2人は警察官がいるところまで逃げてね」と伝える。

「行っておいで」
「気を付けてね」

 お父さんとお母さんはそう言ってくれた。

 私は体の向きを180度反対に向けて、戦いの場へ視線を戻す。

 志郎を始め、仲間たちがとかげ座の堕ち星と戦っている。


 私は左手をお腹の上に翳して、レプリギアを喚び出す。
 そして、次に左手を時計の7時の場所に掲げてプレートを生成する。それをレプリギアの上から入れて、左手を7時場所から時計回りで一周する。
 最後に左手を引き、右手を前斜め上に突き出す。


 もう気になることも、迷うこともない。


「星鎧、生装!」


 その言葉と同時に右手でレプリギア上部のボタンを押す。
 するとレプリギアから蠍座が飛び出し、私の身体は紺色の光りに包まれる。

 光の中で私は紺色のアンダースーツと紺色と深紅色の鎧に包まれる。


 そして、光は晴れる。


 私は一直線にとかげ座へ走り出す。

 ビル前の歩道から車道に出て、ロータリーへと戻る。
 戦う仲間たちの間をすり抜けて、とかげ座との間合いに入る。

 そして、渾身の一発の右ストレートを叩き込む。

 とかげ座は不意の一撃を受け吹き飛んだ。
 一方、私の参戦に気づいたみんなが、口々に私の名前を口にする。

 そのまま紺と赤の鎧、由衣《ゆい》が私に近づいてきて「話は……出来た?」と聞いてきた。

「……うん。迷惑かけてごめん。
 あとは私がやるから。今まで休んでたようなもんだし」

 そう返して、私はとかげ座と向き合う。
 するとちょうど、とかげ座も構えなおしたところだった。

「幸セ……壊ス!!!!」

 そう叫びながら距離を詰めてくる。
 私は槍を生成して、向かってくるとかげ座を突く。

 しかし、左に避けられた。
 そのまま飛びかかってくる。

 私は後ろに飛び下がって反撃の体制に入る。

 攻撃が空ぶったとかげ座。
 そこに半透明の羊、水、斬撃が直撃して、さらに最後に爆発した。

「鈴保《すずほ》まで突っ走ってどうするんだよ!」
「そうそう!みんながいるんだからみんなで助け合お?」

 志郎と由衣がそう言って私の横に並んできた。
 それに続いて真聡、佑希《ゆうき》、日和《ひより》も。

 やっぱりあの怒涛の攻撃はみんなの援護だったらしい。

 ……でもあの量は軽く虐めでしょ。

 そう思いながら私は「ごめん、あとありがと」と口にする。


 その言葉の後、日和が「……それよりさ」と呟いた。

「堕ち星。どこいったの?」
「「あ」」
「「「え」」」

 真聡と佑希、そして私と由衣と志郎の声が重なった。

 急いで全員であたりを見回す。
 だけど、どこにもその姿がない。

 どうやらあの援護の後、少し話している間に姿を見失ったらしい。

 全員、すぐにお互いに距離を取って警戒態勢に入る。
 真聡が「上も警戒しろ。ビルの壁とかよく見ろ」と言っている。

 この流れは何度やってきた。
 お父さんとお母さんを逃がした今、恐らくとかげ座の狙いは私だけ。


 ……つまり。


 私は周りを見るのをやめて、真上を見上げる。


 気が付いたのは良かった。
 ただ、少し遅かった。


 見上げたときには既に、とかげ座が上から迫っていた。


 避けようとするけれど、間に合わなかった。


 みんなも、私を助けようとするけれど間に合わなかった。


 私は、後ろに着地したとかげ座によって蹴り飛ばされた。
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