【書籍化決定】愛など初めからありませんが。

ましろ

文字の大きさ
7 / 67

6.ごっこ遊び

しおりを挟む
ここ数日子供達と過ごして分かったことは、お二人共学力はかなり高いと言うことです。
しっかりとした教師が付き、指導しているということですわね。
でも、情緒面が不安定。これは母親が家を出たせいでしょうか。フェミィ様は、コニー様を守ろうとするあまり、少々攻撃的になってしまっていますし、コニー様はフェミィ様が先回りしてしまう為、言葉を発する機会が減り、自信も失われてしまっています。

「本当に駄目駄目な旦那様ですこと」
「……ミッシェル様、出来ましたらもう少し小声で言っていただけると助かります」
「あら、ノーラン。おはようございます」

ノーランは朝からピシッとしていますのね。

「参考までに旦那様のどの様な所がダメダメなのか教えて頂けますか?」
「あら、主の弱点を探っていらっしゃるの?」
「いえまさか。単なる好奇心です」

意外ですわ。ノーランがこの様なことを言うとは思いませんでした。

「私が勝手に思っただけのことですわよ?」
「もちろん鵜呑みには致しません。ただ、ミッシェル様にはどの様に見えているのか気になっただけですから」

なるほど。人によって見方は変わりますものね。

「そうですわね。たぶん、伯爵様としてはとても優れたお方なのでしょう。ただ、父親としては駄目です」
「バッサリですね?」
「はい。明らかに会話不足ですもの」
「会話……確かに」
「きっと教師から授業の様子を聞き、貴方やメイド長等から普段の生活を聞いて満足する。声掛けは月に何回か。そんな感じなのではありませんか?
ですが、雇われた方々は伯爵様に忖度なさるでしょう。フェミィ様がコニー様を守ろうとトゲトゲになっていることも、コニー様が自信を無くして、ときおり吃音が出ている事もご存じない。違いますか?」

他人の目も必要だけれど、まずは自分の目で、耳で確かめ、そして触れる事で、分かり合えることはたくさんあるのに。

「ですから父親としてはダメダメな落第生だと思いますわ。遠くから綺麗なところだけ眺めて満足しているなんて問題外です」
「……ミッシェル様は凄いですね。あの極悪顔にそこまで言えるだなんて。でも、本人には教えないのですか?」
「なぜです?私は子供達の面倒しか仰せつかっておりませんもの。大きな問題児は範疇外です」
「面倒を見るには含まれない?ですが、お嬢様達には必要なのではありませんか?」

フェミィ様達の為に旦那様を焚きつけろと?

「……どうでしょうか。でも、もし必要だとしても、それは一番最後でいいです。まずはお二人との交流が優先ですもの」

だって大きな問題児は面倒臭いです。居丈高でまったく可愛くないですし。私にとって欠片も楽しくないことなので、一番後回しでいいと思っております。

「そうだわ、ノーランは今お手隙ですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「どうか魔王様になって下さいませ!」
「……は?」


♢♢♢


「魔王!これ以上人々を苦しめるのはやめなちゃい!」
「うっ、やられた~」
「勇者様、この国を守って下さりありがとうございます」
「こうして、世界は平和になりました。おしまい」

本日は勇者様ごっこです。
配役は、勇者様コニー様、お姫様はフェミィ様、魔王はノーラン。私は語り部でした。

「たのちかった!」

やっぱり男の子は勇者様が大好きなのですね。目がキラキラしています。普段よりハッキリと大きな声が出せていましたし、とっても素敵でした。

「コニー様、とても格好良かったですよ」
「ほんと?かっこい?」
「ええ、とっても!」
「私は?ちゃんとお姫様になれてた?」
「フェミィ様も素敵でした。言葉遣いがずいぶんと綺麗になりましたもの」

フェミィ様はお姫様になり切る為に、正しい言葉遣いと発音を練習しました。最近では、『アンタ』等のくだけた言葉はずいぶんと減ってきました。

「私の魔王は如何でしたか?」
「よわそ?」
「ちっとも怖くないから駄目ね」

お二人から手厳しい意見が。せっかく付き合って下さったのに申し訳ありません。

「では、お父君にお願いしては如何でしょう」
「「え」」

旦那様が魔王。似合い過ぎて逆に駄目な気がします。

「……駄目よ。遊んでいないで勉強する様にと叱られてしまうわ」
「こわいからヤダ……」

ごらんなさいませ。この信頼関係の無さを。

「いきなりは無理ですわ。まずは毎日の挨拶とか、基本の基本から始めるべきです」

もう。せっかくの楽しい気分が台無しになってしまいました。

「しあわせさんはど~こだっ♪」
「……みっちぇ?」
「キラキラ笑顔の天使をさがそうっ♫」

突然歌い出した私を不思議そうに見ている。

「ほら、コニー様も歌いましょう?一緒にキラキラにこにこの天使様を探すのよ」

簡単なメロディーを繰り返す。

おずおずと、それでも一緒に歌ってくれる。

「「キラキラ笑顔の天使をさがそう♫」」
「み~つけた!」

コニー様をギュッと抱き締める。

「きゃーっ!アハハッ」

よかった、笑顔が戻りました。

「ズルイわ。ミッチェ、私も仲間に入れてちょうだい!」
「もちろんです」

それからは3人で歌って笑って。

ノーランは楽しそうに笑うフェミィ様達を眩しそうに眺めていました。



しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ

猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。 当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。 それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。 そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。 美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。 「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」 『・・・・オメエの嫁だよ』 執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?

愛してしまって、ごめんなさい

oro
恋愛
「貴様とは白い結婚を貫く。必要が無い限り、私の前に姿を現すな。」 初夜に言われたその言葉を、私は忠実に守っていました。 けれど私は赦されない人間です。 最期に貴方の視界に写ってしまうなんて。 ※全9話。 毎朝7時に更新致します。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

処理中です...