私はあなたの何番目ですか?

ましろ

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懐かしい夢を見た。

まだ学生の頃、騎士科のセシリオが模擬戦に出ていた。彼はとても人気があった。騎士としての腕もさることながら、美しい銀糸の髪に紫紺の瞳。その美貌に見惚れる女性が多く、試合があると彼を見に来る女性が後を絶たなかった。


「ルシア、見に来てくれたの?」


綺麗な女性が大勢いようとも、彼は私の元へ真っ直ぐやってくる。まるで、他の人など目に入らないかのように。


「お疲れ様。格好良かったわ!でも怪我はない?治すわよ?」

「ん~、じゃあ疲れたから癒やして。ルシアがいれば元気になるから」


そう言ってギュッと抱きしめてくる。


「もう、汗だらけのくせに!」


そう文句を言いながら、でも本当は嬉しくて、私も彼を抱きしめる。あの頃は何も不安などなかった。



目が覚めて、夢と現実の落差にうんざりした。
彼は変わっていない。今も私を大切にしてくれているし、本当に私と離れたくなかっただけだろう。その思いは嬉しいのだ。でも、私の仕事の事をどう考えているのか不安がよぎる。
彼も応援してくれていたはず。大丈夫よね?


「騎士になったあなたがどんな怪我をしても、私が絶対に治すからね!」


学生の頃、彼にそう約束した。その思いはもちろん変わってはいない。彼を愛しているし、彼を癒すのは私でありたい。
……でも、それだけで終わりたくない。私は医療魔法士として、多くの人を助けたいのだ。その為にこの力を授かったと思っている。
そんな考えは思い上がりなのだろうか──





「ルシア、院長が来てほしいって言ってたよ」

「分かった、すぐ行くわ」


朝一番に院長からの呼び出し。まさか王宮からエルディア行きの話が来ている?まだ了承していないのに!
私は急ぎ足で院長室に向かった。


「ルシア、大変なことになったな」

「院長、申し訳ありません」

「いや、本当の所はどうなんだ?上からはクルス卿の希望で、婚姻前ではあるが特例として伴侶の扱いで同行を許すと伝令が来たよ」


やはり医療魔法士としてではなく、治癒魔法が使える女性として同伴させるだけのつもりだったのね。
それは誰の考えなの?


「……いえ、私も昨日の夕方に聞いたばかりで返事もしていません。今日しっかり話し合うつもりでした」

「そうか。だが、残念ながらこれは正式な通達だ。エルディア行きを取り消すことは難しいだろう」

「……私はどういう扱いになるのでしょう」

「このままでは本当に単なるクルス卿の同伴者だ。それはさすがに許せないからな。医療魔法士として行けるように交渉しよう。こちらとしても君に抜けられるのは痛手だ。ただでは渡さんよ。1年間の研修、かな。ぜひエルディアの技術を持ち帰ってくれ」

「ありがとうございます!」

「ただなぁ、エルディアはまだまだ働く女性が少ない。かなりやりづらいぞ。どうする?このまま同伴者でいることもできる。君が決めていい」


そう。エルディアはまだまだ男尊女卑の意識が強い。社会に出ているのは男性が多く、女性の仕事は家を守ること。政治においても王妃はあまり表には出ない。だからクラウディア王女のようにか弱い方でも許されるのだろう。
そんな場所で医療魔法士として働くことができるのか。でも、ただひたすらセシリオを待つだけの日々なんて嫌だ。


「医療魔法士として行かせてください」


やってやるわ。私は私らしく生きたい!
エルディアの技術を学べるのはありがたいわ。自分のスキルアップのために行けるなら喜んで行こう。





「セシリオ、昨日はごめんね」

「いや、俺こそごめん。ルシアの気持を考えていなかった。仕事だってあるのに。本当に悪かった!」


よかった。謝ってくれた。俺に着いてくるのは当たり前だろうとか言われたらどうしようかと思った。


「ううん、私と離れたくないって思ってくれたのは嬉しかったわ。1年は長いもの」

「そうだよな、いつも俺の都合で振り回してごめんな。でも、本当に1年だけだ。戻ったらすぐに結婚しよう。絶対に幸せにするから!」

「うん、嬉しい」


やっぱり彼のことが好き。大丈夫よ、セシリオだって私を愛してくれている。
たった1年。それくらいの寄り道はどうってことない。


「あとひと月なら急いで準備しないとね。セシリオはもう始めてるの?」

「いや、まだ全然。ルシアは次の休みはいつ?必要なものとか一緒に買いに行こう。久しぶりのデートだ」

「ふふ、いいわね。今回のお詫びとして美味しいご飯をご馳走して?」

「よし、まかせろ。どこに行こうか。あ!その前にルシアのご両親に挨拶に行かなきゃ!」

「そうね、まだ伝えてないの忘れてた」

「今日行ったらさすがに迷惑だよな」


どうだろう。彼のせいでエルディアに行くことになるなんて、先に私から話しておいた方がいいわよね。


「とりあえず私から説明しておくわ。週末にでもゆっくり話しましょう」

「……本当にごめんな」

「もう謝るのはおしまいね。私もエルディアの医療には興味があったし、1年間しっかり勉強させてもらうわ。だから大丈夫よ」

「……ありがとう。ルシア、愛してるよ」

「私もよ」


触れるだけの優しい口づけ。
彼からの思いが伝わる。私の思いも届いているといい。愛してる。

愛しているのに……

彼が私の仕事をどう考えているのか、どうしても聞くことが出来なかった。


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