私はあなたの何番目ですか?

ましろ

文字の大きさ
87 / 88
番外編

ラファエル3度目の恋 【中編】

しおりを挟む
あの頃と変わらない荒れた指先。
貴族令嬢でありながら、美しい顔に反して、彼女の手はいつも痛々しく荒れていた。
それでも毅然とした態度で、誰に馬鹿にされようともしっかりと前を向き颯爽と歩く姿に感銘を覚えたものだ。

「あの頃の僕は、まだ破れた恋が忘れられなくて、……まだ、忘れたくなくて。君にそれ以上興味を持たないように目を逸らした。
でも、やっぱり駄目だね。やっと恋を終わらせて、この国に帰った途端に君を見つけてしまうんだもの」

今度は絶対に逃げないって決めていたんだ。

「そんな5年も前のことを言われましても。それに私は二度も結婚しています。
……私はもう純潔ではありません。貴方に相応しい相手では無いのです」
「僕の恋した相手は叔父の妻だったよ。10歳年上で、それでも本気で好きだった。純潔ではなくなっても子を身篭っても、僕には一等素敵な女性で、手に入れることが許されるなら本気で手をのばしただろう。
君が僕のことが生理的に無理だとか、そういう理由なら諦めるよ。でも、今言ったことだけが断る理由なら僕は絶対に諦めないから」
「ですが!」
「君は不貞を働いた訳じゃない。ただ、妻としての役目を立派に果たしただけだ。それの何が悪い?」
「……子が、出来ませんでした」
「だってたった一年くらいだろ?それにどちらが原因かも分からない。それに。僕はね、君と仲良くなりたいのであって子が目的ではないよ。それを考えるのはもっと後の事だ。神様からの授かりものを前倒しで考えるなんておかしいだろう?」

そこまで伝えると、レイナは忌々しげにそっぽを向いた。

「……先輩に口で勝てる気がしないです」
「やった。じゃあ、僕のことはラファと呼んで。よろしくね、レイナ」
「私って気取って話していたくせに」
「レイナには正直な姿を見せたいんだ。まずは踊ろうよ!」
「えっ?!」

レイナの手を引いて踊り始める。
あれ、ウルタードのダンスって少し違ったっけ?

「ちょっと、無理矢理引っ張って来てステップ間違えないでください!」
「思い出すからちょっと待って!」

もうダンスはめちゃくちゃ。でもなんだかすっごく楽しい。 

「ん、思い出してきた!」
「もう、遅いですよっ」

レイナも笑っている。

「ダンスは失敗だけど笑顔が見れてよかった」
「笑顔じゃないわ、失笑ですよ」
「嘘だ、すっごく素敵な笑顔だった!」
「……もう、知らないっ」
「拗ねてても可愛いね」

そっか。3度目の恋は初めて年下の女の子だ。
今度こそ守れる?今度こそ側にいられるかな。

「何を考えているのですか?」
「ん?ん~、もう一曲踊りたいなって」
「駄目ですよ、婚約者でもないのに」
「恋人でしょう?」
「えっ?!」
「結婚を前提のお付き合いは恋人だよ?」

レイナの顔が真っ赤だ。こんなに純真で二度も結婚?可愛いしかない。

「もうステップは思い出したから大丈夫だよ。
レイナ、僕と踊っていただけますか?」

ほら、そんな潤んだ瞳で僕を見るくせに。
お願いだから、手をのばして?

「……はい」

今度は落ち着いて。でも、心臓はさっきよりもドキドキしている。

「手を取ってくれてありがとう」
「……はい」

あ、この香り。さっきははしゃぎ過ぎて気付かなかった。仄かに感じる優しい香り。

「変わらないね、いまでもハーブを育ててる?」
「先輩も本当に変わらないです。何故まだ覚えているのですか」
「それは……気になる女の子だったから?」

香水の匂いをプンプンさせてる女の子はちょっと苦手。そんな中、レイナが纏う香りはとても好ましかった。

「……タラシだわ」
「そ?タラされてくれる?」

それなら凄く嬉しいのだけど。

こうして夜会は幸せなまま終わった。


──だけど。


「さて。レイナを今から攫ってもいいかな」
「はいっ?」
「よかった、了承してくれて。行こうか」
「えっ?!違います、驚いただけです!」
「だって、このまま家に帰ったら叱られるよ?どうせ嘘を吐いてこの夜会に参加したんでしょう?」

下手したら、僕が申し込む前に勝手に別の男との婚約を結ばれてしまうかもしれない。

「僕はね、本当に困った時は遠慮せずに周りに助けを求めるよ。今、君を家族から守るには僕の力だけでは足りない。だから、アルに助けを求めようと思って」
「アルって……」
「オルティス男爵だよ。行こう」

戸惑うレイナを半ば無理矢理馬車に乗せる。
彼女が乗ってきた馬車には言付けを。

「強引でごめんね」
「……悪いと思っているのですか?」
「急過ぎる自覚はあるよ。でも、後悔はしたくない」
「じゃあ…、謝らないで下さい」
「うん」

本当は少し緊張していたみたいだ。
拒絶されたらどうしようって。

だって、僕が好きになる人はいつも違う相手を選ぶから。

お願い、僕を望んで。





しおりを挟む
感想 206

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。

さよなら、私の初恋の人

キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。 破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。 出会いは10歳。 世話係に任命されたのも10歳。 それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。 そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。 だけどいつまでも子供のままではいられない。 ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。 いつもながらの完全ご都合主義。 作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。 直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。 ※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』 誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。 小説家になろうさんでも時差投稿します。

ほんの少しの仕返し

turarin
恋愛
公爵夫人のアリーは気づいてしまった。夫のイディオンが、離婚して戻ってきた従姉妹フリンと恋をしていることを。 アリーの実家クレバー侯爵家は、王国一の商会を経営している。その財力を頼られての政略結婚であった。 アリーは皇太子マークと幼なじみであり、マークには皇太子妃にと求められていたが、クレバー侯爵家の影響力が大きくなることを恐れた国王が認めなかった。 皇太子妃教育まで終えている、優秀なアリーは、陰に日向にイディオンを支えてきたが、真実を知って、怒りに震えた。侯爵家からの離縁は難しい。 ならば、周りから、離縁を勧めてもらいましょう。日々、ちょっとずつ、仕返ししていけばいいのです。 もうすぐです。 さようなら、イディオン たくさんのお気に入りや♥ありがとうございます。感激しています。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

処理中です...