11 / 40
10.そして戦いは始まる
しおりを挟む
「……明日は行けるのか」
「はい。何時頃出発の予定でしょうか?」
あれから、私達はギクシャクしたままだ。
彼に抱いた恋心と政略の意味。
それ等に折り合いがつけられず──
……違う。決めてしまう事への勇気が持てずにいる。
でも、一つだけハッキリしていること。
私は幸せになりたい。その為には……
ガタガタと馬車が揺れる。
「……そのドレス、似合ってる」
「ありがとうございます」
「だが……あの時のドレスの方がもっと似合っていた」
そんな言葉に思わず笑みが生まれる。
「そうですね。私もあちらのドレスの方が好きよ」
「それならっ」
「でも、これは私の戦闘服なのです」
「………今から行くのは戦場では無く誕生日パーティーだけど?」
社交の経験が無い貴方に取ってはただのパーティーでも、私にとっては違う。パーティーとはただ楽しむ為のものではなく、今後の礎であったり、自分の立ち位置を決める為の大切なステージなの。
だから、ただ似合うとか綺麗かだけではなく、場に合った衣装を纏わなくてはならないのだけど……
たぶん、そんな女の戦いは彼にはまだ理解出来ないだろう。彼にとっては仲の良い学友を祝うだけの場なのだから。
「女性には色々あるのですよ」
だから、こう伝える他無いのよね。
それを聞いて貴方が不機嫌になろうとも。
「……お前はいつも俺を子供扱いする」
そうだっただろうか?でも、どうやっても彼は未成年で学生で3歳下なのは変えようがない事実だ。それを不満に思うのならもっと……
いや、思春期ボーイにそれを言っては駄目な気もする。
最近ようやく気が付いたこと。
彼は父親をライバル視している。
ドレス選びで殊更不機嫌になったのはそのせいなのだろう。中々に失礼な男だ。
その考えは、私を、婚約者の父に懸想する様な馬鹿女だと侮辱していることに気が付かないのだろうか?
だから迷っている。何が正解か。
「これ、婚約者だから」
「………シェリー・ハミルトンと申します。本日はお招き頂きありがとうございます」
この男は本当にっ!思春期で全てが許されると思わないでよっ!
腹の中の怒りはおくびにも出さず、笑顔で挨拶をする私はエライ。大人だと褒めてほしい。
「まあ!ベンが婚約したって本当だったのね!」
…………もう2年も経ちましたけど。
パメラ・クアーク嬢は可愛らしい女性ね。小柄で童顔。ビスクドールの様な少女だ。綺麗に巻かれた淡い金髪にモーブの瞳。デビューしたら男性が群がりそう。
今の言葉は毒を含ませたのか無知なのか悩むところだけど、ベンジャミンと並ぶ姿はお似合いで泣けてくる。
「もういいだろ、中に行こう」
一番のお子様大賞はきっとこの男だ。なぜ私はコレに惚れてしまったのか。顔?やっぱり顔なのか。
「そうね、シェリー様も行きましょう!」
まあ、許しを得ずに名前呼び?可愛いから許しちゃうけど今後が心配ね。でも、彼女のこれはあざとい演技な気もする。女性で生徒会役員に抜擢されるような才女が無能だとは思えない。
「はい、ありがとうございます」
いっそのことケリー先生に会いに行って敵情視察した方がよかったかな。でも、それがバレるとベンジャミンが不機嫌になること間違い無しだったのよね。だってこの男はケリー先生にも嫉妬していた。彼の中での私はどれだけ男好きなのかしら。
「誕生日おめでとうっ!!」
私以外にも婚約者連れがいてホッとする。年上の女性はいないが、男性ならいた。まさかの同級生だった。
「久しぶりだな、まさかここで会うとは思わなかったよ」
「バイロン!本当に久しぶりね」
「お前が突然飛び級してさっさと卒業しやがったからなあ。こないだセイディにも会ったが、全然遊んでくれないって嘆いてたぞ」
「あら、手紙を書かなきゃっ」
懐かしい旧友との会話。ベンジャミンが嫌がるから、最低限しか社交場に出なかったのが良くなかったみたいね。でも、彼もそろそろ16歳だし、少しずつ顔出ししていかないと。
「でも、貴方がレイクス伯爵令嬢と婚約したなんて知らなかったわ」
「薄情な奴だな。まあ、まだ婚約して半年だけどね」
「可愛らしいご令嬢でよかったじゃない?」
「……まあね」
バイロンは次男だから、婿入りするのだろう。
レイクス伯爵家ならば中々良い縁談だと思うけど、乗り気ではないのかしら。
「どうしたの?」
「……モテる男はつらいのよ」
あ~、ベンジャミンタイプか。
バイロンは学園でも人気が高かった。これで嫡男なら!と思っていた令嬢も多かったみたいだし。爽やかでハンサムな友人は、年下令嬢のハートもしっかり掴んでいるようだ。
「どこも同じね」
「……あ~、悪い。お前のとこのがすっごい目で見てる」
しまったわ。久しぶり会えたのが嬉しくてやらかしてしまったみたい。でも、お互いに婚約者がいるのよ?会場内で普通に会話することの何が駄目なのか。
「これは駄目よね」
「……大丈夫か?なんなら説明するが」
「この程度の会話に説明がいるのって普通?」
「あ──……、困っちゃうよな?」
「ね、困っちゃうわね。……ふう。とりあえず、会えて嬉しかったわ。セイディのことも教えてくれてありがと」
「おう、またな」
とりあえずは離れるのが正解だろう。
「シェリー様、お話しましょう!」
途端にクアーク嬢に捕まった。いきなり腕を組まないで欲しい。これが今時の若者なの?
「クアーク嬢」
「まあ!パメラとお呼びください。シェリー様とは仲良くなりたいのです!お姉様になって欲しいくらいですわ」
「……パメラ様」
「はい!シェリーお姉様」
ぐいっぐい来るな!?
「パメラ様のように可愛らしい方にそう言っていただけて光栄ですね」
でも止めて欲しいかな~って。
「わ、本当に柔らかい!」
「え、ちょっ、」
何?腕を組みながら、さらげなく胸に触っ、
「やらしいなぁ。こ~んなポヨンポヨンのお胸で彼を誘惑したの?」
耳元でソッと毒を流し込まれる。
……やっぱり無知じゃなくてあざとい方か。
「はい。何時頃出発の予定でしょうか?」
あれから、私達はギクシャクしたままだ。
彼に抱いた恋心と政略の意味。
それ等に折り合いがつけられず──
……違う。決めてしまう事への勇気が持てずにいる。
でも、一つだけハッキリしていること。
私は幸せになりたい。その為には……
ガタガタと馬車が揺れる。
「……そのドレス、似合ってる」
「ありがとうございます」
「だが……あの時のドレスの方がもっと似合っていた」
そんな言葉に思わず笑みが生まれる。
「そうですね。私もあちらのドレスの方が好きよ」
「それならっ」
「でも、これは私の戦闘服なのです」
「………今から行くのは戦場では無く誕生日パーティーだけど?」
社交の経験が無い貴方に取ってはただのパーティーでも、私にとっては違う。パーティーとはただ楽しむ為のものではなく、今後の礎であったり、自分の立ち位置を決める為の大切なステージなの。
だから、ただ似合うとか綺麗かだけではなく、場に合った衣装を纏わなくてはならないのだけど……
たぶん、そんな女の戦いは彼にはまだ理解出来ないだろう。彼にとっては仲の良い学友を祝うだけの場なのだから。
「女性には色々あるのですよ」
だから、こう伝える他無いのよね。
それを聞いて貴方が不機嫌になろうとも。
「……お前はいつも俺を子供扱いする」
そうだっただろうか?でも、どうやっても彼は未成年で学生で3歳下なのは変えようがない事実だ。それを不満に思うのならもっと……
いや、思春期ボーイにそれを言っては駄目な気もする。
最近ようやく気が付いたこと。
彼は父親をライバル視している。
ドレス選びで殊更不機嫌になったのはそのせいなのだろう。中々に失礼な男だ。
その考えは、私を、婚約者の父に懸想する様な馬鹿女だと侮辱していることに気が付かないのだろうか?
だから迷っている。何が正解か。
「これ、婚約者だから」
「………シェリー・ハミルトンと申します。本日はお招き頂きありがとうございます」
この男は本当にっ!思春期で全てが許されると思わないでよっ!
腹の中の怒りはおくびにも出さず、笑顔で挨拶をする私はエライ。大人だと褒めてほしい。
「まあ!ベンが婚約したって本当だったのね!」
…………もう2年も経ちましたけど。
パメラ・クアーク嬢は可愛らしい女性ね。小柄で童顔。ビスクドールの様な少女だ。綺麗に巻かれた淡い金髪にモーブの瞳。デビューしたら男性が群がりそう。
今の言葉は毒を含ませたのか無知なのか悩むところだけど、ベンジャミンと並ぶ姿はお似合いで泣けてくる。
「もういいだろ、中に行こう」
一番のお子様大賞はきっとこの男だ。なぜ私はコレに惚れてしまったのか。顔?やっぱり顔なのか。
「そうね、シェリー様も行きましょう!」
まあ、許しを得ずに名前呼び?可愛いから許しちゃうけど今後が心配ね。でも、彼女のこれはあざとい演技な気もする。女性で生徒会役員に抜擢されるような才女が無能だとは思えない。
「はい、ありがとうございます」
いっそのことケリー先生に会いに行って敵情視察した方がよかったかな。でも、それがバレるとベンジャミンが不機嫌になること間違い無しだったのよね。だってこの男はケリー先生にも嫉妬していた。彼の中での私はどれだけ男好きなのかしら。
「誕生日おめでとうっ!!」
私以外にも婚約者連れがいてホッとする。年上の女性はいないが、男性ならいた。まさかの同級生だった。
「久しぶりだな、まさかここで会うとは思わなかったよ」
「バイロン!本当に久しぶりね」
「お前が突然飛び級してさっさと卒業しやがったからなあ。こないだセイディにも会ったが、全然遊んでくれないって嘆いてたぞ」
「あら、手紙を書かなきゃっ」
懐かしい旧友との会話。ベンジャミンが嫌がるから、最低限しか社交場に出なかったのが良くなかったみたいね。でも、彼もそろそろ16歳だし、少しずつ顔出ししていかないと。
「でも、貴方がレイクス伯爵令嬢と婚約したなんて知らなかったわ」
「薄情な奴だな。まあ、まだ婚約して半年だけどね」
「可愛らしいご令嬢でよかったじゃない?」
「……まあね」
バイロンは次男だから、婿入りするのだろう。
レイクス伯爵家ならば中々良い縁談だと思うけど、乗り気ではないのかしら。
「どうしたの?」
「……モテる男はつらいのよ」
あ~、ベンジャミンタイプか。
バイロンは学園でも人気が高かった。これで嫡男なら!と思っていた令嬢も多かったみたいだし。爽やかでハンサムな友人は、年下令嬢のハートもしっかり掴んでいるようだ。
「どこも同じね」
「……あ~、悪い。お前のとこのがすっごい目で見てる」
しまったわ。久しぶり会えたのが嬉しくてやらかしてしまったみたい。でも、お互いに婚約者がいるのよ?会場内で普通に会話することの何が駄目なのか。
「これは駄目よね」
「……大丈夫か?なんなら説明するが」
「この程度の会話に説明がいるのって普通?」
「あ──……、困っちゃうよな?」
「ね、困っちゃうわね。……ふう。とりあえず、会えて嬉しかったわ。セイディのことも教えてくれてありがと」
「おう、またな」
とりあえずは離れるのが正解だろう。
「シェリー様、お話しましょう!」
途端にクアーク嬢に捕まった。いきなり腕を組まないで欲しい。これが今時の若者なの?
「クアーク嬢」
「まあ!パメラとお呼びください。シェリー様とは仲良くなりたいのです!お姉様になって欲しいくらいですわ」
「……パメラ様」
「はい!シェリーお姉様」
ぐいっぐい来るな!?
「パメラ様のように可愛らしい方にそう言っていただけて光栄ですね」
でも止めて欲しいかな~って。
「わ、本当に柔らかい!」
「え、ちょっ、」
何?腕を組みながら、さらげなく胸に触っ、
「やらしいなぁ。こ~んなポヨンポヨンのお胸で彼を誘惑したの?」
耳元でソッと毒を流し込まれる。
……やっぱり無知じゃなくてあざとい方か。
1,462
あなたにおすすめの小説
ハイパー王太子殿下の隣はツライよ! ~突然の婚約解消~
緑谷めい
恋愛
私は公爵令嬢ナタリー・ランシス。17歳。
4歳年上の婚約者アルベルト王太子殿下は、超優秀で超絶イケメン!
一応美人の私だけれど、ハイパー王太子殿下の隣はツライものがある。
あれれ、おかしいぞ? ついに自分がゴミに思えてきましたわ!?
王太子殿下の弟、第2王子のロベルト殿下と私は、仲の良い幼馴染。
そのロベルト様の婚約者である隣国のエリーゼ王女と、私の婚約者のアルベルト王太子殿下が、結婚することになった!? よって、私と王太子殿下は、婚約解消してお別れ!? えっ!? 決定ですか? はっ? 一体どういうこと!?
* ハッピーエンドです。
大嫌いな令嬢
緑谷めい
恋愛
ボージェ侯爵家令嬢アンヌはアシャール侯爵家令嬢オレリアが大嫌いである。ほとんど「憎んでいる」と言っていい程に。
同家格の侯爵家に、たまたま同じ年、同じ性別で産まれたアンヌとオレリア。アンヌには5歳年上の兄がいてオレリアには1つ下の弟がいる、という点は少し違うが、ともに実家を継ぐ男兄弟がいて、自らは将来他家に嫁ぐ立場である、という事は同じだ。その為、幼い頃から何かにつけて、二人の令嬢は周囲から比較をされ続けて来た。
アンヌはうんざりしていた。
アンヌは可愛らしい容姿している。だが、オレリアは幼い頃から「可愛い」では表現しきれぬ、特別な美しさに恵まれた令嬢だった。そして、成長するにつれ、ますますその美貌に磨きがかかっている。
そんな二人は今年13歳になり、ともに王立貴族学園に入学した。
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
王太子殿下の小夜曲
緑谷めい
恋愛
私は侯爵家令嬢フローラ・クライン。私が初めてバルド王太子殿下とお会いしたのは、殿下も私も共に10歳だった春のこと。私は知らないうちに王太子殿下の婚約者候補になっていた。けれど婚約者候補は私を含めて4人。その中には私の憧れの公爵家令嬢マーガレット様もいらっしゃった。これはもう出来レースだわ。王太子殿下の婚約者は完璧令嬢マーガレット様で決まりでしょ! 自分はただの数合わせだと確信した私は、とてもお気楽にバルド王太子殿下との顔合わせに招かれた王宮へ向かったのだが、そこで待ち受けていたのは……!? フローラの明日はどっちだ!?
ロザリーの新婚生活
緑谷めい
恋愛
主人公はアンペール伯爵家長女ロザリー。17歳。
アンペール伯爵家は領地で自然災害が続き、多額の復興費用を必要としていた。ロザリーはその費用を得る為、財力に富むベルクール伯爵家の跡取り息子セストと結婚する。
このお話は、そんな政略結婚をしたロザリーとセストの新婚生活の物語。
【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる