ごめんなさい、お淑やかじゃないんです。

ましろ

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14.本当の優しさ (没収試合)

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あら?飲み物を取りに行くって言ったのに、エミディオ様が会場から出て行こうとしている。
一緒にいるのは……エリアス?


「あの、ディーナ様申し訳ありません。少し席を外します」
「あら」
「え!ちょーっと待ってもらえないかな?!」


……怪しい……


「……グイド様、何か知ってますね?」
「いや、いや~、どうしようかな。あのね、君の事を任されているから一人で行動はさせられないんだけど」


何よ、その手回しの良さ。


「それじゃあ私と一緒に後を追いましょうか」
「ディーナ?!」
「だって。アリーチェさんを頼むとは言われたけど、移動するなとは言われなかったわ。だから行きましょ?心配なんでしょう」
「……ありがとうございます」
「あなたはマリベルのことよろしくね」


どうやらグイド様は尻に敷かれているようだ。


「たぶん、休憩室の方かしら。あそこは悪さをするのを防ぐ為に、隣からも入れるの。そちらに行きましょう」
「あの、ありがとうございます」


お礼を言うと嬉しそうな顔をされる。


「私達もエミディオのことは心配していたのよ。でも、貴方達二人がとっても自然に側にいるから。
なんだか安心しちゃったわ。困ったオジサンだけど、よろしくね?」


なんだか誤解されてる気もするけど、何と言って訂正したらいいのか分からない。

私は契約妻で娘で、彼は父親で狼さんで?
説明にならないわ。


「あの、別にそういうわけではなくて」
「では、あなたは今、誰を心配しているの?」


誰?


「……私は……」


エミディオ様の事しか考えていなかった……


「普通はあんな強面で体も大きい男性が若い細身の青年を険悪な顔で連れて行ったら、殆どの人が青年を心配するわね。
貴方の中では違ったみたいだけど?」


バレてる!でもだって!
エミディオ様は、頭がいいし、力も強し、大人だし、負ける要素はまったく無いけど!
でも、お人好しだから。

バカみたいに優しいから……

優しい人は時々損をするもの。



「さて、ここからは喋ったら駄目よ」


音を立てないようにドアを開け、そっと中に入る。ディーナ様が指で示す方に移動する。
隣からエリアスの怒鳴り声が聞こえた。





「あなたは愛人がいるくせに、アリーチェを金で買ったのか!最低な男だ!さっさと彼女を開放しろ!!」


は?何を言ってるの?!
思わず口を開こうとしてディーナ様に抑えられる。

(どうして邪魔するんですか!)
(もう少し聞いてあげましょう?)


「君は今日、兄君の代理でここに来たのだろう。その様に騒ぎ立てて彼の顔に泥を塗るつもりなのか?」
「誤魔化さないでください!」
「そして今日はマリベルの誕生日だ。騒ぎになれば彼女が悲しむし、グイド達だって君を許さない。
その覚悟あっての行動か?」
「~っ、だからどうした!さっさと答えろ!」


エリアスってこんなに馬鹿だったの?勉強が出来てもこんなに馬鹿でどうするの!


「まず第一に君に私とアリーチェのことをとやかく言われる理由がない」
「それは!」
「君がアリーチェを好きだからか?」
「っ!そうだ!私の方が彼女を幸せにできる!」


……エリアスが私の事を?
いやいやいや、無い。無いわ~、絶対に私をエミディオ様以上に幸せになんて出来ません!


(モテモテね)
(まったく嬉しくありません)


「無理だな。君が大切にしているのは君自身の恋心であってアリーチェではない」
「違う!」
「どこがだ?お前はあの子の立場を考えて行動していない。本当に彼女のことを大切に思っているなら、ここで騒ぎを起こそうだなんて考えないだろう」
「はっ!自分の醜聞をバラされたくないだけだろう、爵位を継ぐ為にアリーチェを金で買ったくせに!」


……殴る。絶対に殴ろう。

なぜ無関係のアンタが口を挟むのよ。
エミディオ様を傷つけるなんて許さないから!


ガタンっ


「……その話をお前にしたのは誰だ」
「ちょっ、離せ……」
「さっさと言え。10,9,8,…」
「サンティ子爵令息だ!」


うそ、義兄様が来てるの?


「ゴミはひとつじゃなかったか……」


こわっ、エミディオ様の声が怖い。


「……もし、その話を誰かにしたら徹底的にお前の兄を潰すぞ」
「どうして兄さんを!」
「お前は彼の代理だろう。今日、ここにお前を寄越した責任があるからだ」



あ~!もう駄目!


「はい、ストップ!終了です!」


あ、エミディオ様がびっくりしてる。


「もう、らしくないことを言わないでください。彼のお兄様が可哀想だわ」
「……今立ち上げてるチームに入れて馬車馬の如く働かせるだけだ」


めちゃめちゃ正攻法ね?


「でも駄目よ!」
「……わかったよ。やらない」
「ん。さて、エリアス!」
「は、はい!」
「あなた死ぬ程迷惑よ」
「!」


なぜ驚くの。当たり前でしょう。


「あなたね、私があの義父や義兄から虐められてたのを知っているでしょう!なのにどうしてそんな奴の言うことを信じるのよ!」
「あ、」
「エミディオ様に恋人がいたのは本当よ。私もお会いしたもの。とても素敵な方だったわ。でももう終わったことです。
私はエミディオ様に嫁げて本当に幸せなの。私のことが好き?好きなら何をしても許されると思ってるの?恋に酔ってヒーローごっこがしたいだけじゃない。
そんなあなたは愛情深いわけでも、優しいわけでもないわ。
私の気持ちを聞きもしないで暴走して。
あなたが好きなのは私じゃなくて、あなたの脳内の妄想アリーチェよ!」


はぁ、少しスッキリしたわ。


「違うんだ……私は本当に前から君の事が……」
「平民だと思っていた時は何も言わなかったじゃない。だったら人妻だって同じでしょ。
いえ、そっちの方がなお悪いわ。

私はもう、あなたを友達だと思わない。
二度と話しかけないでね。

エミディオ様、ディーナ様、行きましょう」

「そんな、待ってくれよっ」


うるさいな。あ、


「忘れてたわ」


エリアスの方を振り向くと嬉しそうな期待に満ちた顔をする。違うし。


バシッ!!


「っ痛い!」
「煩い。エミディオ様を傷付けた罰よ。
今度こそさよなら」



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