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15.ずっと前から守られていた (ミーティング)
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「待ちなさい、アリーチェ」
さっさと出ていこうと思ったのにエミディオ様に呼び止められてしまった。
「……何ですか」
私、今とっても怒ってるんですど!
「少し落ち着こうか」
そう言って優しく頭を撫でられる。
悔しいけど、少し気持ちが落ち着いた。
「彼はね、男の子にありがちなお姫様を守る騎士になりたかっただけだよ。少しやり過ぎだけどね」
えー、そんなものに憧れるんだ。
「正しくはないが、私の様な人相の悪い年上の男に頑張って意見したんだ。その勇気だけは認めてあげてもいいんじゃないか。
それに、自分達の関係をかなり美化してはいたかもしれないが、君を守りたかったのは本当だろうし、君の友人だろう?
たった一度の過ちで切り捨てていいのか?」
「……だって、あなたを傷つけたわ」
それが何よりも許せない。
「私が?残念ながら、こんな子犬がキャンキャン絡んで来たくらいで傷付くことはないな」
子犬……なるほど。狼の相手ではないわね。
くそぅ、大人だわ。
「……私はすごく嫌だったのよ」
「そうか。ではきちんと謝罪してもらおう」
ポンッと軽く肩を叩かれ、エリアスの方に体を向けさせられる。エリアスは涙目だ。
「……エリアス。二度とエミディオ様の悪口を言わないで。次に言ったら本当に絶交よ」
「あ、その、ごめん!……君は今幸せなの?」
「すっごく幸せよ。……心配してくれてありがとう。あと、好きになってくれてありがと。でも、私はその気持ちに答えられない。あなたを友人以上には見れないわ。ごめんね」
たぶん、あの頃に告白してくれても受け入れることはなかっただろう。何というか……可愛い弟?くらいの気持ちだったし。
「……しっかり振ってくれてありがとう。
あの、さっきは失礼な事を言って申し訳ありませんでした。アリーチェと仲直りをするチャンスを下さり感謝致します!」
よかった。自分からエミディオ様に謝罪してくれた。根は悪い子じゃないのよね。少し夢見がちなだけで。乙女か。
「いいわねぇ、青春してて!
それに比べてエミディオは……もう少し彼に嫉妬するとかないの?」
「嫉妬?コレに?……図書館で勉強を教えてくれる友人の話は聞いていたが、異性としての意識は欠片も感じられなかったからな。男に見られていない奴に嫉妬なぞする訳も無い」
あぁ、エリアスが落ち込んでる。どんまい!
「いやね、可愛くないわ」
「私が可愛かったらおかしいだろう」
可愛いときあるけどな。
でも、ディーナ様には教えたくない。
私だけの強くて優しい、少しだけ可愛い所もある、大切な狼さんだから。
「エリアス」
「はい!」
「謝罪は受け取った。だが、許す代わりに頼みがある」
「私にですか?」
「あぁ、先程言っていた、サンティ子爵令息から聞いたことを証言してもらいたい」
証言って、誰に?なんの為に……
「あの、証言するのは構いませんが、それによってアリーチェが困ったりは」
「この子が不利になることをするわけがないだろう?
そうだな、ただ、実家が無くなるだけの話だ」
「「「えっ?!」」」
実家が無くなるってどういうこと?!
「ちょっとエミディオ!実家が無くなるってアリーチェさんが泣くわよ!」
「え、泣きませんけど。様を見ろ!とは思いますね」
「……あら、そうなの」
「はい。父は母がいる頃から浮気して、正妻より先に子供を二人も作っていた屑ですから。母が死んでからはその浮気相手とすぐに再婚して皆で私を虐めてきましたよ。
自分達は散財するくせに、お金が無いからと私だけ学校を辞めさせられて、服とかもろくに買ってもらえなくて。使用人が減ったからと家事までやらされました。
エリアスに会った時、あまりにみすぼらしい格好だったから平民だと思われたくらいです。さすがに恥ずかしくて貴族だとは名乗れなかったですね。
それにエミディオ様の前に54歳離婚歴3回の変態金持ちに売られそうになりました。
……私、恨んでもいいですよね?」
そう話すと、ビキッという音が響いた。
ディーナ様の持っている扇子が折れた音だった。
「……まぁ、そんなゴミが存在してるの。まさか私の可愛いマリベルの誕生日にそんなゴミ屑が混ざっていただなんて!
貴方は私達の大切なお友達よ。絶対に守ってあげるわ。エミディオ、方法は?」
ディーナ様、本当に私を友達だと思って下さっているのね。やだ、嬉しい。エミディオ様と出会ってから幸せな事だらけだわ。
「君との結婚に契約書はないと言ったが、本当は一つだけあるんだ」
「えっ」
あったの?それならどうしてあの時……
「契約内容は、今後サンティ子爵家はアリーチェには関わらないこと。そして、この結婚についてアリーチェが不利になる様な発言を誰かにした場合、賠償金として三億エラをアリーチェに支払うこと。この二つだ」
三億って……それより何なのその契約内容は。
「……どうして私の事なの?」
「私は自分で決めた事だが、令嬢は当主にはあまり逆らえないだろう。喜んでいるとは聞いていたが、本心とは限らない。残念ながら君の父上は屑だと思ったからな。後々君からお金を巻き上げたり、あることないこと話して迷惑をかけられる気しかしなかった。
だから保険は必要だろう?最初は三億だなんて、と渋っていたが、何もしなければいいだけのことだ。そう言ったらやっとサインしたよ」
やだ、この人。本当にどうしよう……
普通は自分の為の契約書を作るべきでしょう!
父親に似て性格悪いかもって思っていたくせに、どうしてそんな女を守る為の契約書だけ作ってるの!
どうしよう……この人は狼さんじゃなくて……
馬鹿みたいに優しい、男の人だ
さっさと出ていこうと思ったのにエミディオ様に呼び止められてしまった。
「……何ですか」
私、今とっても怒ってるんですど!
「少し落ち着こうか」
そう言って優しく頭を撫でられる。
悔しいけど、少し気持ちが落ち着いた。
「彼はね、男の子にありがちなお姫様を守る騎士になりたかっただけだよ。少しやり過ぎだけどね」
えー、そんなものに憧れるんだ。
「正しくはないが、私の様な人相の悪い年上の男に頑張って意見したんだ。その勇気だけは認めてあげてもいいんじゃないか。
それに、自分達の関係をかなり美化してはいたかもしれないが、君を守りたかったのは本当だろうし、君の友人だろう?
たった一度の過ちで切り捨てていいのか?」
「……だって、あなたを傷つけたわ」
それが何よりも許せない。
「私が?残念ながら、こんな子犬がキャンキャン絡んで来たくらいで傷付くことはないな」
子犬……なるほど。狼の相手ではないわね。
くそぅ、大人だわ。
「……私はすごく嫌だったのよ」
「そうか。ではきちんと謝罪してもらおう」
ポンッと軽く肩を叩かれ、エリアスの方に体を向けさせられる。エリアスは涙目だ。
「……エリアス。二度とエミディオ様の悪口を言わないで。次に言ったら本当に絶交よ」
「あ、その、ごめん!……君は今幸せなの?」
「すっごく幸せよ。……心配してくれてありがとう。あと、好きになってくれてありがと。でも、私はその気持ちに答えられない。あなたを友人以上には見れないわ。ごめんね」
たぶん、あの頃に告白してくれても受け入れることはなかっただろう。何というか……可愛い弟?くらいの気持ちだったし。
「……しっかり振ってくれてありがとう。
あの、さっきは失礼な事を言って申し訳ありませんでした。アリーチェと仲直りをするチャンスを下さり感謝致します!」
よかった。自分からエミディオ様に謝罪してくれた。根は悪い子じゃないのよね。少し夢見がちなだけで。乙女か。
「いいわねぇ、青春してて!
それに比べてエミディオは……もう少し彼に嫉妬するとかないの?」
「嫉妬?コレに?……図書館で勉強を教えてくれる友人の話は聞いていたが、異性としての意識は欠片も感じられなかったからな。男に見られていない奴に嫉妬なぞする訳も無い」
あぁ、エリアスが落ち込んでる。どんまい!
「いやね、可愛くないわ」
「私が可愛かったらおかしいだろう」
可愛いときあるけどな。
でも、ディーナ様には教えたくない。
私だけの強くて優しい、少しだけ可愛い所もある、大切な狼さんだから。
「エリアス」
「はい!」
「謝罪は受け取った。だが、許す代わりに頼みがある」
「私にですか?」
「あぁ、先程言っていた、サンティ子爵令息から聞いたことを証言してもらいたい」
証言って、誰に?なんの為に……
「あの、証言するのは構いませんが、それによってアリーチェが困ったりは」
「この子が不利になることをするわけがないだろう?
そうだな、ただ、実家が無くなるだけの話だ」
「「「えっ?!」」」
実家が無くなるってどういうこと?!
「ちょっとエミディオ!実家が無くなるってアリーチェさんが泣くわよ!」
「え、泣きませんけど。様を見ろ!とは思いますね」
「……あら、そうなの」
「はい。父は母がいる頃から浮気して、正妻より先に子供を二人も作っていた屑ですから。母が死んでからはその浮気相手とすぐに再婚して皆で私を虐めてきましたよ。
自分達は散財するくせに、お金が無いからと私だけ学校を辞めさせられて、服とかもろくに買ってもらえなくて。使用人が減ったからと家事までやらされました。
エリアスに会った時、あまりにみすぼらしい格好だったから平民だと思われたくらいです。さすがに恥ずかしくて貴族だとは名乗れなかったですね。
それにエミディオ様の前に54歳離婚歴3回の変態金持ちに売られそうになりました。
……私、恨んでもいいですよね?」
そう話すと、ビキッという音が響いた。
ディーナ様の持っている扇子が折れた音だった。
「……まぁ、そんなゴミが存在してるの。まさか私の可愛いマリベルの誕生日にそんなゴミ屑が混ざっていただなんて!
貴方は私達の大切なお友達よ。絶対に守ってあげるわ。エミディオ、方法は?」
ディーナ様、本当に私を友達だと思って下さっているのね。やだ、嬉しい。エミディオ様と出会ってから幸せな事だらけだわ。
「君との結婚に契約書はないと言ったが、本当は一つだけあるんだ」
「えっ」
あったの?それならどうしてあの時……
「契約内容は、今後サンティ子爵家はアリーチェには関わらないこと。そして、この結婚についてアリーチェが不利になる様な発言を誰かにした場合、賠償金として三億エラをアリーチェに支払うこと。この二つだ」
三億って……それより何なのその契約内容は。
「……どうして私の事なの?」
「私は自分で決めた事だが、令嬢は当主にはあまり逆らえないだろう。喜んでいるとは聞いていたが、本心とは限らない。残念ながら君の父上は屑だと思ったからな。後々君からお金を巻き上げたり、あることないこと話して迷惑をかけられる気しかしなかった。
だから保険は必要だろう?最初は三億だなんて、と渋っていたが、何もしなければいいだけのことだ。そう言ったらやっとサインしたよ」
やだ、この人。本当にどうしよう……
普通は自分の為の契約書を作るべきでしょう!
父親に似て性格悪いかもって思っていたくせに、どうしてそんな女を守る為の契約書だけ作ってるの!
どうしよう……この人は狼さんじゃなくて……
馬鹿みたいに優しい、男の人だ
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