ごめんなさい、お淑やかじゃないんです。

ましろ

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18.秘密の恋心 (決勝トーナメント1)

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「……遅い」


現在は3時。昼過ぎに戻ると言ったアリーチェが帰って来ていなかった。


「久しぶりの外出です。少しくらい大目に見て差し上げてはいかがですか?」
「いや、そうではなく……」


アリーチェは基本的に約束事は守る。更にノーラも一緒に行っているんだ。多少の誤差があったとしても遅すぎる。それに──


「馬を用意してくれ」
「え!迎えに行かれるのですか?」
「いや、ガヴィーノの所だ。あと誰か憲兵の所に行かせろ。道中で事件が無かったか確認してくれ」
「は、はい!」


私の勘違いならそれでいい。たんなる笑い話になるだけだ。だが何かに巻き込まれたのなら……
考えられるのはサンティ子爵か、考えたくないがガヴィーノのどちらか。
まずは近場から確認だ。

街中を馬で全速力で駆け抜けるのはあまり良くないが許してほしい。どうして不安が消えない。


「兄さん?!」
「アリーチェはどこだ」


突然私が押しかけてきて驚いている……というより怯えている?


「お、俺は何も知らないっ!」
「……俺?じゃあ誰なら知ってるんだ」


コイツは残念だが頭が悪い。が、本当に悪いことは出来ない半端者だ。まぁ、それが救いなのだが。


「ちょっ、俺は知らな、いだだだだだっ!」
「頭蓋骨がどれくらい頑丈なのか知りたいか?お前は中身が少なそうだから片手で握りつぶせるかもな」
「はなっ、話すから!」
「時間が惜しい。真実のみを簡潔に話せ。嘘だと分かったらとりあえず鼻の骨が砕けるぞ」


男だから鼻が曲がるくらい平気だろう。
……鼻血を吹かれると汚いから指の方が、


「三日前っ!」


私の不穏な考えを感じ取ったのか、ガヴィーノは慌てて話しだした。


「アイツの兄貴だっていう男が来た!一緒に仕返しをしないかって」
「方法は?」
「生きててもらわないと困る、とは言ってた。少し脅すだけだって。契約書にサインさせればお金が手に入るとか?そんなの結局ウチの伯爵家の金だろ。馬鹿らしいから断った」


やはり屑の息子は屑か。だが、


「なぜお前はそんな話を聞いたのに無事なんだ」
「……」


なぜ視線を外す?それで逃げられるとでも?


「あだだだっ!手っ!手首が死ぬっ!」
「時間が惜しいと言っているだろう」
「違う契約をした!」
「どんな」
「……アンタ達を離婚させるって」


ガンッ!


「だっ!~~頭が割れるっ」
「拳骨で感謝しろ。なぜそんな契約をしたんだ。私が離婚したらお前が爵位を継げるとでも?こんなに阿呆なのに?」


そんな能力は無いとなぜ気付かないのか……


「だって!モニカが可哀想だろう!」
「……は?」
「どうしてモニカを捨てるんだ!そんなに伯爵の地位が惜しいのか?!彼女より価値があるのかよ!
あの小娘だって!モニカの方が断然いい女だっ!!」


……そうか。まさか初恋を拗らせた馬鹿だったのか。確かにモニカに懐いていたな。だから自分が伯爵になって、俺がモニカと結婚して彼女を幸せにできるようにと……


「……お前は本当に馬鹿だったんだな」
「なんだと?!」
「モニカが望まないことをして、どうして彼女が幸せになると思うんだ。お前が満足するだけだろう」
「~~どうせ馬鹿だよ!アンタには絶対に敵わないんだっ!」
「とりあえず時間が無い。アリーチェが拐われた可能性が高い。出掛けたきり帰ってこないんだ。
話はすべてが終わってからにしよう」


急がないと、殺す気が無いとしても危険なのは変わらない。


「……姉の別宅」
「なに?」
「だからっ!アイツには姉もいるんだろ、そいつの嫁ぎ先の別宅が少し町外れにあるから、そこを使うって言ってた。これ以上は本当に知らないからな」


一応悪いと思っているのか。本当に……馬鹿過ぎて困る。


「ありがとう、助かる」


何となく頭を撫でる。アリーチェほど気持ちよくない。


「痛っ!たんこぶ出来てるって!」
「自業自得だ。じゃあな、後日説教だ」


屑が大馬鹿だったおかげで場所が分かった。
急がなくてはいけないが……一度戻るか?情報が足りない。別宅の所在の特定を……いや……いっそここからなら王宮の方が近いな。
普段無理を聞いているんだ。少しくらい恩を返してもらっても構わないはず。皆、残業は得意だし。

使えるものはなんでも使う。




──奴らは徹底的に潰してやる。






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