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20.本当のキス (決勝トーナメント 優勝・狼)
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義姉が私のことを嫌っているのは知っていた。
同じ女だから?同じ娘だから?
貴方が今まで受けてきた恩恵を私に返して。
初めて会った時に言われた台詞。
さっぱり意味が分からない。
私があなたの幸せを奪ったわけじゃない。罪があるとしたら妻がいるのに愛人を孕ませた屑の方でしょう!
やっと結婚して家を出る事ができたのに、あなた達はどこまで私から毟り取ろうとするの!
「……いい加減に、しろっ!!」
バシッ!
「ぎゃっ!」
姉に飛び掛かって平手打ち。返した手でもう一発っ!
「いだいいだいっ、やめて!」
「うるさい!この性悪の気狂いっ!」
「おい!やめろ、何をっ」
驚いて動きが止まっていた兄が慌てて止めに入ってきたのを突き飛ばす。
何でも人にやらせて怠けてばかりのあなた達なんかに、力もスピードも根性も負けてたまるか!
急いで近くにあった燭台を掴む。
さっきの破落戸共が出て行ってくれていて助かった。この馬鹿達はサインさせる為にロープを解いてくれたしね。
「……サインは絶対にしない。どうする?三億プラス、誘拐に脅迫。更に傷害の罪も被りたい?」
前回みたいに喉に突き付けて血でも出して脅したい……けど、エミディオ様に心配掛けるからやらない。やれない。
でも戦うくらいしてもいいよね?
義姉はびーびー泣いてるし、父と義兄と睨み合う。すると、外が騒がしくなって来た。
だんだんと近づく足音。
「アリーチェッ!」
……うそ、エミディオさまだ……
「無事か?!」
「……エミディオさま……きてくれた……」
「遅くなってすまない、怪我は?」
「……無いわ……」
エミディオ様が汗だくだ。髪も乱れて……
こんなに必死になって助けに来てくれた。
「サンティ子爵。愚かな真似をしたな」
「ち、違うんだ、これは」
エミディオ様は父の答えなど全く聞かずズカズカ近付いていくと、
ドガッ!!
思いっ切り蹴り飛ばした。
あ、デジャヴ。
人間が吹っ飛ぶのを見るのは二度目だ。
今のは骨折してないかしら?
逃げようとする義兄も問答無用で蹴り上げる。
義姉はすでに鼻血を出して泣いていたので、さすがに何もしなかった。
「エミディオ、早いよ!って、うおっ!お前やり過ぎだぞ!!」
「妻を助ける為だ。一発ずつしかやっていない。だから過剰防衛にはならない」
「え~。まぁいいか。御者とノーラさんは無事だ。破落戸共も捕まえた。そいつらは騎士団に渡すぞ?」
グイド様まで……というか騎士団?なぜ……
「ああ、アリーチェ達は連れて帰ってもいいか?早く休ませたい」
「さすがに今日取り調べるとは言わないだろう。下に副団長がいるから声だけかけていけよ」
「わかった」
まさか王宮から騎士団を連れてきたの?
「あの……なぜ騎士団が?」
「ああ、こいつが局長に助けを求めに来た時、会議中だったんだ。それを無理矢理入っていって、妻が誘拐されたから助けてくれってさ。驚くよね、本当に。
下手したら捕まっちゃうよ。こいつは自分の価値が高い事を分かっててやるから困るよな」
「局長が参加される会議って……」
「お偉いさんがいっぱいの会議です。陛下も参加してたね!」
きゃーっ!信じられないわ!
「まぁ、ありがたい事にお咎め無しで、騎士団から数名出してもらって駆けつけたってワケ。俺は死ぬかと思ったよ!アリーチェちゃん、本当に無事でよかった」
よかった……よかったけど、エミディオ様の方が無事じゃなかったじゃない!
「エミディオ様、そんな無茶したら駄目じゃないですか!」
「君を助ける為なら何でもするさ」
~~っ、もう、この人は!
「はいはい、帰ってゆっくり話ししな」
「あぁ、グイドもありがとう。助かった。
アリーチェ、行こう」
「はい!」
思わず抱き着いてしまう。するとそのまま抱きかかえられてしまった。
あれ?そこまでは求めてなかったのだけど。
でも、やっと会えた嬉しさから離れ難い。
もういいか。このまま、甘えてしまおう。拐われたのだもの。皆大目に見てくれるわよね?
ああ、久しぶりのエミディオ様だ……
「ごめん、汗臭いかもしれない」
「ふふっ、全然です」
馬車の中はノーラも一緒なので、さすがに隣に座るだけ。でも、手だけはずっと繋いでる。
……早く二人きりになりたい……
屋敷に帰ると、伯爵夫妻まで心配して待っていてくれた。心配かけて申し訳ないけれど、こうやって待っていてくれた事が本当に嬉しい。
ゆっくりと湯船に浸かり、今日あった嫌なことを全部洗い流す。
本当に大変だった……
少し眠い。でも、エミディオ様とお話がしたい。
「アリーチェ、大丈夫か?」
駄目だわ。本当に疲れたみたい。
でも……エミディオ様と……
「エミディオ様、あのね、たくさん話したいことがあるの……」
「うん、私もだよ。でも今は休む方が先かな」
「や、離れないで」
やっと会えたのに。怖ったの、本当は。
「離れないよ、おいで?」
エミディオ様が優しく抱きしめてくれる。
軽々と抱き上げベッドまで運ばれた。
一緒に横になりながら、頬に、額にと何度もキスをしてくれる。
嬉しくて、私もエミディオ様にキスをする。
頬に、お鼻にも。
でも、何か足りない……
すると、エミディオ様の指が私の唇に触れた。
「ここに……キスしてもいい?」
唇に……それは、本当のキスになる……
「愛してる、アリーチェ。君に口付けするのを許してくれないか?」
愛……本当に?
「……娘じゃなくて?」
「女性として愛してるよ……どうか本当に私の妻になってください、アリーチェ」
「嬉しい。私も好きよ、エミディオ様」
そっと彼の唇にキスをする。
少し驚いた顔をしたエミディオ様が嬉しそうに笑うと、もう一度と、何度も唇を啄む。
「アリーチェ、口を開けて?」
「?」
よく分からないけど、少しだけ口を開く。
そして……
アリーチェ17歳。本当のキスというものを知ってしまいました。
あまりの恥ずかしさに悶えまくっていると、
「少しずつ覚えようね?」
そう言って微笑んだエミディオ様は、色気たっぷりで大変お美しかったです。
同じ女だから?同じ娘だから?
貴方が今まで受けてきた恩恵を私に返して。
初めて会った時に言われた台詞。
さっぱり意味が分からない。
私があなたの幸せを奪ったわけじゃない。罪があるとしたら妻がいるのに愛人を孕ませた屑の方でしょう!
やっと結婚して家を出る事ができたのに、あなた達はどこまで私から毟り取ろうとするの!
「……いい加減に、しろっ!!」
バシッ!
「ぎゃっ!」
姉に飛び掛かって平手打ち。返した手でもう一発っ!
「いだいいだいっ、やめて!」
「うるさい!この性悪の気狂いっ!」
「おい!やめろ、何をっ」
驚いて動きが止まっていた兄が慌てて止めに入ってきたのを突き飛ばす。
何でも人にやらせて怠けてばかりのあなた達なんかに、力もスピードも根性も負けてたまるか!
急いで近くにあった燭台を掴む。
さっきの破落戸共が出て行ってくれていて助かった。この馬鹿達はサインさせる為にロープを解いてくれたしね。
「……サインは絶対にしない。どうする?三億プラス、誘拐に脅迫。更に傷害の罪も被りたい?」
前回みたいに喉に突き付けて血でも出して脅したい……けど、エミディオ様に心配掛けるからやらない。やれない。
でも戦うくらいしてもいいよね?
義姉はびーびー泣いてるし、父と義兄と睨み合う。すると、外が騒がしくなって来た。
だんだんと近づく足音。
「アリーチェッ!」
……うそ、エミディオさまだ……
「無事か?!」
「……エミディオさま……きてくれた……」
「遅くなってすまない、怪我は?」
「……無いわ……」
エミディオ様が汗だくだ。髪も乱れて……
こんなに必死になって助けに来てくれた。
「サンティ子爵。愚かな真似をしたな」
「ち、違うんだ、これは」
エミディオ様は父の答えなど全く聞かずズカズカ近付いていくと、
ドガッ!!
思いっ切り蹴り飛ばした。
あ、デジャヴ。
人間が吹っ飛ぶのを見るのは二度目だ。
今のは骨折してないかしら?
逃げようとする義兄も問答無用で蹴り上げる。
義姉はすでに鼻血を出して泣いていたので、さすがに何もしなかった。
「エミディオ、早いよ!って、うおっ!お前やり過ぎだぞ!!」
「妻を助ける為だ。一発ずつしかやっていない。だから過剰防衛にはならない」
「え~。まぁいいか。御者とノーラさんは無事だ。破落戸共も捕まえた。そいつらは騎士団に渡すぞ?」
グイド様まで……というか騎士団?なぜ……
「ああ、アリーチェ達は連れて帰ってもいいか?早く休ませたい」
「さすがに今日取り調べるとは言わないだろう。下に副団長がいるから声だけかけていけよ」
「わかった」
まさか王宮から騎士団を連れてきたの?
「あの……なぜ騎士団が?」
「ああ、こいつが局長に助けを求めに来た時、会議中だったんだ。それを無理矢理入っていって、妻が誘拐されたから助けてくれってさ。驚くよね、本当に。
下手したら捕まっちゃうよ。こいつは自分の価値が高い事を分かっててやるから困るよな」
「局長が参加される会議って……」
「お偉いさんがいっぱいの会議です。陛下も参加してたね!」
きゃーっ!信じられないわ!
「まぁ、ありがたい事にお咎め無しで、騎士団から数名出してもらって駆けつけたってワケ。俺は死ぬかと思ったよ!アリーチェちゃん、本当に無事でよかった」
よかった……よかったけど、エミディオ様の方が無事じゃなかったじゃない!
「エミディオ様、そんな無茶したら駄目じゃないですか!」
「君を助ける為なら何でもするさ」
~~っ、もう、この人は!
「はいはい、帰ってゆっくり話ししな」
「あぁ、グイドもありがとう。助かった。
アリーチェ、行こう」
「はい!」
思わず抱き着いてしまう。するとそのまま抱きかかえられてしまった。
あれ?そこまでは求めてなかったのだけど。
でも、やっと会えた嬉しさから離れ難い。
もういいか。このまま、甘えてしまおう。拐われたのだもの。皆大目に見てくれるわよね?
ああ、久しぶりのエミディオ様だ……
「ごめん、汗臭いかもしれない」
「ふふっ、全然です」
馬車の中はノーラも一緒なので、さすがに隣に座るだけ。でも、手だけはずっと繋いでる。
……早く二人きりになりたい……
屋敷に帰ると、伯爵夫妻まで心配して待っていてくれた。心配かけて申し訳ないけれど、こうやって待っていてくれた事が本当に嬉しい。
ゆっくりと湯船に浸かり、今日あった嫌なことを全部洗い流す。
本当に大変だった……
少し眠い。でも、エミディオ様とお話がしたい。
「アリーチェ、大丈夫か?」
駄目だわ。本当に疲れたみたい。
でも……エミディオ様と……
「エミディオ様、あのね、たくさん話したいことがあるの……」
「うん、私もだよ。でも今は休む方が先かな」
「や、離れないで」
やっと会えたのに。怖ったの、本当は。
「離れないよ、おいで?」
エミディオ様が優しく抱きしめてくれる。
軽々と抱き上げベッドまで運ばれた。
一緒に横になりながら、頬に、額にと何度もキスをしてくれる。
嬉しくて、私もエミディオ様にキスをする。
頬に、お鼻にも。
でも、何か足りない……
すると、エミディオ様の指が私の唇に触れた。
「ここに……キスしてもいい?」
唇に……それは、本当のキスになる……
「愛してる、アリーチェ。君に口付けするのを許してくれないか?」
愛……本当に?
「……娘じゃなくて?」
「女性として愛してるよ……どうか本当に私の妻になってください、アリーチェ」
「嬉しい。私も好きよ、エミディオ様」
そっと彼の唇にキスをする。
少し驚いた顔をしたエミディオ様が嬉しそうに笑うと、もう一度と、何度も唇を啄む。
「アリーチェ、口を開けて?」
「?」
よく分からないけど、少しだけ口を開く。
そして……
アリーチェ17歳。本当のキスというものを知ってしまいました。
あまりの恥ずかしさに悶えまくっていると、
「少しずつ覚えようね?」
そう言って微笑んだエミディオ様は、色気たっぷりで大変お美しかったです。
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