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23.愚か者に正論を (ストレッチ)
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子爵家は本当に無くなった。
あんな家は潰れてしまえっ!と、思ってはいたけど本当に潰れるなんて、と少し驚いている。
後悔は無い。ただ驚いた。それだけだ。
義姉は離縁された。当たり前よね。
可哀想に、何も悪くない元旦那様が真っ青な顔で謝罪に来た。思わず私も謝ってしまった。あんな馬鹿のせいで家が危うくなったのだ。申し訳無さ過ぎる。それにバツイチになってしまったし。
でも、実は別れたかったそうで、なんなら感謝された。あちらでも迷惑をかけていたようだ。
そして馬鹿な親子は今日も4人仲良く強制労働しているらしい。寒い寒い最北の地で。
そして残る問題はガヴィーノだ。
彼は誘いに乗ってはいないが、私が狙われる事を黙っていたことと、離婚させようとした罪がある。
エミディオ様が私に裁く権利をくれた。
なので……
「いらっしゃい、アリーチェ様」
愛しのモニカさんの所に連れて来た。
ちなみにガヴィーノはがっつり縛られて連行された。エミディオ様の手際の良さに脱帽だ。
「あらあら、エミディオ様にガヴィーノ様まで?なぜ彼は縛られているの?」
さすがにモニカさんが驚いている。
ガヴィーノは往生際悪く、芋虫のように這ってでも逃げようともがくが、エミディオ様に踏まれて動けなくされた。
「実はモニカさんにお願いがあるんです」
「私に?」
キョトンとするモニカさんは可愛らしいわ。
「今からする話を聞いて、率直な感想をガヴィーノに伝えて欲しいんです」
「……素直にお答えすればいいのね?」
「はい!」
ガヴィーノが涙目だ。というか泣いてる。泣きながら言わないでくれと言わんばかりに首を振っている。が、言うに決まっているでしょう!
エミディオ様とモニカさんが結婚出来るようにする為、自分が当主になろうと思ったこと。
私よりモニカさんの方が素晴らしい女性だから、離婚させてもう一度やり直しさせようとしたこと。
どうやらモニカさんが初恋らしいこと。
すべてを話してあげました!
「まあ、驚いたわ。……そうね、ちゃんと素直な気持ちを伝えたいからロープと猿轡を外してあげてくれる?」
女神の如く微笑むモニカさんにガヴィーノは目を潤ませながらも素直にソファに座る。
借りてきたわんこのようだ。誰これ。
「まずはお久しぶりですね、ガヴィーノ様。ずいぶんと大人っぽくなりましたわ」
うわ、気持ち悪い。頬を染めないで!
「私の為に色々考えて頑張ろうとしてくれていたのね。私、全然気が付かなくて……」
ちょっと……まさか何か期待してる?
モニカさんは綺麗で可愛らしい。でも……
「ガヴィーノ様、気持ちが悪いですね」
中身は結構しっかり者で男前なのですよ。
やっぱり大好きだわ。
「貴方が当主?当主がどのようなお仕事をするか知っているのですか?絶対に知らないでしょう」
「っ、そんなことは!」
「ではどうぞ?」
「……え」
「どんな仕事をするか教えてくださいませ」
ニコニコ綺麗な笑顔で問い詰める。
「視察に行ったり……帳簿を付けたり……」
え、終わり?少ないな!
「視察に行って何を見るのです?
そうですね、橋が傷んでるのが分かりました。どのように対応しますか?」
「え、直すよね……」
「誰が?どのように?費用はどこから?」
凄い。あまりの無知さが。
「当主になるという事はおままごとではありません。
領地や領民を守る責任があるのです。問題が起きた時、責任を負うのも当主です。その覚悟が貴方にありますか?
今のあなたは童話を読んで、「いつかお姫様を守る王子様になる!」と言って木の棒を振り回す子どもと同じです。
子供なら可愛らしい夢だと笑って見ていられますが、ガヴィーノ様のお年でそれをやられると気持ちが悪いとしか言い様がありませんわね」
ガヴィーノが蒼白だ。まさか気持ち悪いと言われるとは思わなかったのだろう。
「だいたい私を幸せにしたい?それなのに兄任せという所からおかしいと理解して下さい。私がエミディオ様が好きで自分が太刀打ち出来ないと思って身を引くなら、手も出さないで。美味しいとこ取りしようとする所が嫌だわ。
あと!私はアリーチェ様ほどエミディオ様に相応しい奥様はいないと思っています。
いい加減にお兄様愛を拗らせるのをお止め下さい」
「「は?」」
「あら?エミディオ様は気付いていなかったの?私に興味を持ったのは憧れの兄が好きになった女性だから。ですよね?」
……面白い。人間の顔ってこんなに色が変わるものなのね。青から赤に変わったわ。
「アリーチェ様、これで宜しいですか?」
「はい、ありがとうございます。あ、でも最後に。ダメ男にご指導をお願いしても?」
「う~ん、そうですね。まずは今の自分が何なら出来るか考えて、まずは行動してみて下さい。
あなたは脳内だけで何も出来ていません。何か一つでいい。形にしてみて。動かないと何も始まりませんよ」
「……はい……」
初恋の人にこれでもかと真実を突き付けられたので、少しは更生してくれるといいけれど。
「モニカさん、ありがとうございました」
「いいえ?面白い経験をありがとう。本の題材に使わせてもらうわね」
作家様の糧になるならよかったわ。
「ほら、ガヴィーノ歩け」
「……だって……どうせ俺は兄さんみたいになんでも出来る才能なんて無いんだ……」
ああ、すっかり落ち込んでいる。
「ガヴィーノは馬鹿ね。エミディオ様は確かに多才よ。でもね、才能があってもその原石を磨き上げる努力を続けたから多くの事が出来るのでしょう。何もしないで手に入るわけないじゃない。弟のクセにそんなことも分からないの?」
「……努力……」
「誰だって努力したらある程度のことは出来るようになるわ。貴方は勝手に羨んで、エミディオ様には敵わないって、努力から逃げてきたのではないの?
貴方に足りないのは才能じゃなくて根性よ!」
情けない。女の私ですらもっと努力したわ。
「あらあら。アリーチェ様はやっぱり格好いいわね。好きだわ~!」
「私もモニカさんが男前で大好きですよ」
「……私以外に大好きはやめようか」
あら。エミディオ様からヤキモチをいただきました!
「だめね、女の友情は恋愛とは別腹よ?」
モニカさんは今日も大変お素敵でした。
あんな家は潰れてしまえっ!と、思ってはいたけど本当に潰れるなんて、と少し驚いている。
後悔は無い。ただ驚いた。それだけだ。
義姉は離縁された。当たり前よね。
可哀想に、何も悪くない元旦那様が真っ青な顔で謝罪に来た。思わず私も謝ってしまった。あんな馬鹿のせいで家が危うくなったのだ。申し訳無さ過ぎる。それにバツイチになってしまったし。
でも、実は別れたかったそうで、なんなら感謝された。あちらでも迷惑をかけていたようだ。
そして馬鹿な親子は今日も4人仲良く強制労働しているらしい。寒い寒い最北の地で。
そして残る問題はガヴィーノだ。
彼は誘いに乗ってはいないが、私が狙われる事を黙っていたことと、離婚させようとした罪がある。
エミディオ様が私に裁く権利をくれた。
なので……
「いらっしゃい、アリーチェ様」
愛しのモニカさんの所に連れて来た。
ちなみにガヴィーノはがっつり縛られて連行された。エミディオ様の手際の良さに脱帽だ。
「あらあら、エミディオ様にガヴィーノ様まで?なぜ彼は縛られているの?」
さすがにモニカさんが驚いている。
ガヴィーノは往生際悪く、芋虫のように這ってでも逃げようともがくが、エミディオ様に踏まれて動けなくされた。
「実はモニカさんにお願いがあるんです」
「私に?」
キョトンとするモニカさんは可愛らしいわ。
「今からする話を聞いて、率直な感想をガヴィーノに伝えて欲しいんです」
「……素直にお答えすればいいのね?」
「はい!」
ガヴィーノが涙目だ。というか泣いてる。泣きながら言わないでくれと言わんばかりに首を振っている。が、言うに決まっているでしょう!
エミディオ様とモニカさんが結婚出来るようにする為、自分が当主になろうと思ったこと。
私よりモニカさんの方が素晴らしい女性だから、離婚させてもう一度やり直しさせようとしたこと。
どうやらモニカさんが初恋らしいこと。
すべてを話してあげました!
「まあ、驚いたわ。……そうね、ちゃんと素直な気持ちを伝えたいからロープと猿轡を外してあげてくれる?」
女神の如く微笑むモニカさんにガヴィーノは目を潤ませながらも素直にソファに座る。
借りてきたわんこのようだ。誰これ。
「まずはお久しぶりですね、ガヴィーノ様。ずいぶんと大人っぽくなりましたわ」
うわ、気持ち悪い。頬を染めないで!
「私の為に色々考えて頑張ろうとしてくれていたのね。私、全然気が付かなくて……」
ちょっと……まさか何か期待してる?
モニカさんは綺麗で可愛らしい。でも……
「ガヴィーノ様、気持ちが悪いですね」
中身は結構しっかり者で男前なのですよ。
やっぱり大好きだわ。
「貴方が当主?当主がどのようなお仕事をするか知っているのですか?絶対に知らないでしょう」
「っ、そんなことは!」
「ではどうぞ?」
「……え」
「どんな仕事をするか教えてくださいませ」
ニコニコ綺麗な笑顔で問い詰める。
「視察に行ったり……帳簿を付けたり……」
え、終わり?少ないな!
「視察に行って何を見るのです?
そうですね、橋が傷んでるのが分かりました。どのように対応しますか?」
「え、直すよね……」
「誰が?どのように?費用はどこから?」
凄い。あまりの無知さが。
「当主になるという事はおままごとではありません。
領地や領民を守る責任があるのです。問題が起きた時、責任を負うのも当主です。その覚悟が貴方にありますか?
今のあなたは童話を読んで、「いつかお姫様を守る王子様になる!」と言って木の棒を振り回す子どもと同じです。
子供なら可愛らしい夢だと笑って見ていられますが、ガヴィーノ様のお年でそれをやられると気持ちが悪いとしか言い様がありませんわね」
ガヴィーノが蒼白だ。まさか気持ち悪いと言われるとは思わなかったのだろう。
「だいたい私を幸せにしたい?それなのに兄任せという所からおかしいと理解して下さい。私がエミディオ様が好きで自分が太刀打ち出来ないと思って身を引くなら、手も出さないで。美味しいとこ取りしようとする所が嫌だわ。
あと!私はアリーチェ様ほどエミディオ様に相応しい奥様はいないと思っています。
いい加減にお兄様愛を拗らせるのをお止め下さい」
「「は?」」
「あら?エミディオ様は気付いていなかったの?私に興味を持ったのは憧れの兄が好きになった女性だから。ですよね?」
……面白い。人間の顔ってこんなに色が変わるものなのね。青から赤に変わったわ。
「アリーチェ様、これで宜しいですか?」
「はい、ありがとうございます。あ、でも最後に。ダメ男にご指導をお願いしても?」
「う~ん、そうですね。まずは今の自分が何なら出来るか考えて、まずは行動してみて下さい。
あなたは脳内だけで何も出来ていません。何か一つでいい。形にしてみて。動かないと何も始まりませんよ」
「……はい……」
初恋の人にこれでもかと真実を突き付けられたので、少しは更生してくれるといいけれど。
「モニカさん、ありがとうございました」
「いいえ?面白い経験をありがとう。本の題材に使わせてもらうわね」
作家様の糧になるならよかったわ。
「ほら、ガヴィーノ歩け」
「……だって……どうせ俺は兄さんみたいになんでも出来る才能なんて無いんだ……」
ああ、すっかり落ち込んでいる。
「ガヴィーノは馬鹿ね。エミディオ様は確かに多才よ。でもね、才能があってもその原石を磨き上げる努力を続けたから多くの事が出来るのでしょう。何もしないで手に入るわけないじゃない。弟のクセにそんなことも分からないの?」
「……努力……」
「誰だって努力したらある程度のことは出来るようになるわ。貴方は勝手に羨んで、エミディオ様には敵わないって、努力から逃げてきたのではないの?
貴方に足りないのは才能じゃなくて根性よ!」
情けない。女の私ですらもっと努力したわ。
「あらあら。アリーチェ様はやっぱり格好いいわね。好きだわ~!」
「私もモニカさんが男前で大好きですよ」
「……私以外に大好きはやめようか」
あら。エミディオ様からヤキモチをいただきました!
「だめね、女の友情は恋愛とは別腹よ?」
モニカさんは今日も大変お素敵でした。
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