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第二章
3.新しい先生
しおりを挟む──誰かいるの?
緊迫した空気が流れる。シルヴァン兄様が見ている先から、人影が現れた。
「かわいい……」
は?
「すっごい可愛いね!よかった~、全然似てないや!」
それは私より少し背の高い男の子でした。
「……今、私の障壁に触れたのは君か?」
「え?先生の障壁って何のこと?」
障壁?というか先生って何?
「……ロラン君。君は今、色々なものを台無しにしてくれたな」
「え?先生、何で怒ってるのさ」
「君がネタばらしをしたからだよ」
どういうことかしら。でも、シルヴァン兄様がこの方の先生なのは間違いないみたい。
「ブランシュ」
「あ、はい!」
やだ。変に大きな声が出てしまったわ。
「こちらはレイモン様のご子息のロラン君」
「はじめまして!ロラン・ダンドリューです」
「はじめまして。ブランシュ・ノディエです」
何だかとっても元気いっぱいな方だわ。腕白という意味が分かった気がします。
「それから、さっき言いかけたことだけど、私が魔法塔からの指導員になりました」
「え?!」
「ついでにロラン君達の家庭教師も引き受けたんだ」
「あ…、だから先生?」
「そういうこと。だから、これからもよろしくね?」
……どうしよう、すごく嬉しいっ。
「でも、シルヴァン兄様は他のお仕事は大丈夫なのですか?」
「もちろん。まあ、時々魔法塔に顔を出したりはするけどね。ちゃんと正式に許可が出てるから心配ないよ」
「……じゃあ、私も先生って呼んだ方がいいですか?」
「そうだね」
…やっぱり。先生として一緒にいてくれるのは嬉しいけど、兄様と呼べないのは寂しいわ。
「授業中は先生と呼んでもらおう」
「じゃあそれ以外のときは」
「もちろん今まで通りでいいよ」
「……シルヴァン兄様」
「なあに、ブランシュ」
「ふふっ」
私ったら現金ね。たったこれだけのやり取りで幸せになってしまったわ。
「何それ、先生ずるい!俺もベルみたいに冷たい妹よりそんな可愛い妹が欲しいです!」
「ロラン君。そういう事を言うからベルティーユ嬢に叱られるんだよ?」
でも、そんな軽口を叩いても許されるくらい仲が良いということなのでしょうね。
「ロラン様?どれほど仲がよろしくても誰かと比べたりするものではありませんわ。
貴方様を兄と慕っているからこそ傷付くと思いますもの。
差し出がましいとは思いますが、どうか心に留め置きくださいませ」
「あ、ごめんなさい」
……ロラン様は素直な方なのね。
「ロラン君の天真爛漫なところは美点だけど、相手に言葉を伝える時はもう少し慎重にね。それに初対面の令嬢にその言葉遣いはどうだろう?
男性同士でも出会ってすぐ友人のように話し掛けるのは宜しくないかな」
「ゔっ、申し訳ありません……」
「でも、おかげでブランシュが緊張せずに話せたよ」
「あ」
そういえばそうですね。ロラン様があまりにも普通に接してくださるからすっかり忘れていました。
「なんで緊張するんだ?っじゃない、するのですか?」
あら。ちゃんと言い直してるわ。
「…母がかなりご迷惑をお掛けしていたと耳にしたものですから」
「ああ、確かにちょっと偏見は持ってたけど」
……本当に素直な方ね。
「──ロランくん?」
「いえ、その!君の顔をみたら思ってた感じと全然違ったから、今は偏見なんてありません!」
「当たり前です。噂なんかは話半分で聞くべきですし、そもそもその噂はブランシュではなく彼女の母親のものでしょう。
両親に似るはずがないとは言いませんが、では、ロラン君はレイモン様とそっくりですか?」
「……似ていません」
「そういうことです。慎重になることは大切ですが、まずは自分の目で見るまでは勝手に思い込まず、一つの情報程度に留めておくべきですよ」
「……はい、申し訳ありません」
やっぱりシルヴァン兄様は教えるのが上手です。
「では、これからは仲良くできそうかな?」
「はい!ブランシュ嬢、お友達になってもらえると嬉しいんだけど。じゃなくて、嬉しいです!」
友達?親戚だと思うけど。
「こちらこそ嬉しいです。あと、話しやすい方でいいですよ」
「本当?!」
「ブランシュ。あまり甘やかさないように」
「ふふ。では、ほどほどで」
「がんばりまーす」
よかった。どうやら2人目のお友達ができたみたいです。
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