魔法のせいだから許して?

ましろ

文字の大きさ
31 / 50

31.

しおりを挟む
「王族に準ずる者への危害だ。重い刑罰を与えたいところだが、魔法が関わっているからそうもいかん。
よってお前達の望みを叶えてやろう。
娘達は皆の意見に染まるのが好きなようだ。ならば、お前たちに足りない清貧と慈愛の心を染める為、グラーツ修道院に入ってもらう。期限は一年。間違っても寄付などで待遇は変わらぬから無駄なことをしないように。その後は学園に戻ってよい。神に仕える者たちの心の美しさに早く染まって、素晴らしい淑女になれると良いな?」


あらまぁ、グラーツ修道院はとても厳しいと有名だわ。でも、気候のいい場所にあるし、建物も立派で食事などもきちんと与えられる。ただ奉仕活動が大変なのよね。併設されている病院の看護補助があるから、入院患者の入浴や排泄のお手伝いとか令嬢にはかなりキツいと聞いたことがある。
一年は私を虐めた期間かな。短いと思ってるかもしれないけど、嫌なことを我慢すると長く感じるのよね。
修道院に入ったとなると何か問題があったということ。結婚が難しくなるわね。


「そんな!一年も修道院に入るだなんて、そこまでの罪ではないはずです!」

「そうですわ、大怪我をしたわけでもなく、少し転んだくらいで!」


やっぱり反省してないみたい。そうだと思ったわ。


「なるほど。修道院はそんなに嫌か。では、そのまま学園に通ってもよい。その代わり制服には“私は虐めをする愚か者です“と書かれたケープを付けさせよう。必ず卒業するまで着続けなさい。もちろん卒業パーティーもそれを付けて出席してもらうぞ。
周囲の人間に貶され嘲りを受ける日々がどれ程辛いか。実際に体験して反省するといい。
抜き打ちで確認に行かせるからな」


“ごめんなさい” たったこれだけの言葉を言えばすんだことなのに。これで学園卒業すら難しくなったわね。


「教師達は学園を辞めてもらおう。身分によって指導が出来なくなるようだからな。王族も通う学園ではさぞ大変だっただろう。代わりに平民が多く通う学校への紹介状を出すから安心するがいい」


平民の学校ってまさか地方の町にある学校かしら。お給料がずいぶん減ってしまうわね。殿下のせいにするから。馬鹿だわ。

陛下に許しを乞う叫び声が響き渡る。
そう、この期に及んでなのだ。


「陛下、発言をお許しいただけますか?」

「ブリッチェ伯爵、もちろん許す」


お父様が陛下に一礼して皆に向き直る。たぶん、この場にお父様がいた事を忘れていた人もいるだろう。


「この場を借りてお伝えします。今日を持ってここにいる方々の家との取り引きは終わらせていただきます。以上です」

「そんな!なぜそのような!」

「なぜ?ここまで我が家を馬鹿にしておいて取引だけは続けたかったのか?ありえないな」

「そんな…すまない!私達が悪かった!!」


やっとだ。自分の身可愛さにようやく謝罪した。でもそれって謝罪じゃないわよね。


「今更だな。今日までにどれだけの時間があった?陛下や娘の話を聞いても謝罪一つ出てきやしない。保身の為の謝罪は必要ない。そんな信用ならない家とは取引する価値がない。それだけだ」


その後も納得がいかずに騒いでいたが、陛下もお父様もまったく揺るがず、皆泣く泣く帰って行った。




「ブリッチェ伯爵、リーゼロッテ、今回は本当にすまなかった」


皆が出て行った後、陛下と王太子殿下が頭を下げてくれた。


「……王妃様はどうなさったのですか?」


まだ終わっていない。陛下の言葉には返事をせず、今日一番会いたかった名前を出す。


「もうすぐ来るよ。さすがに皆と一緒にはできないから。リーゼロッテ、母がすまないことをした」

「……申し訳ありません。まだ、そのお言葉に答えることができません」

「うん、分かっているよ。それでも言いたかったんだ」


やっぱり兄弟ね。ジーク様と似てる。


「ジークハルト様は今どちらに?」

「あぁ、少しこの国から離れたいと本人から希望があってね。今はギレッセンにいるよ」

「そうなんですね。先日綺麗な器をいただいたのですが、送り先がなかったので。隣国にいらっしゃるんですね」


いいな、私はこの国を出たことがない。やっぱり留学って憧れるかも。


「リーゼロッテ!久しぶりね、元気そうでよかったわ。療養に行ったと聞いて心配していたのよ」


王妃様が嬉しそうに入ってきた。いつもと同じ優しい笑顔。この人も、罪悪感などないのだろう。魔法にすら掛かっていないのに。


「ご無沙汰しております、王妃陛下」

「まぁ、そんなに堅苦しい挨拶はやめてちょうだい。今日はどうしたのかしら?」


どうしてこんなに美しく微笑むことができるのだろう。この方を怖いと思ったのは初めて。
でも怯んじゃ駄目よ。しっかり目を見て。


「私は……あなたを断罪しに来ました」




しおりを挟む
感想 156

あなたにおすすめの小説

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

私があなたを好きだったころ

豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」 ※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。

無価値な私はいらないでしょう?

火野村志紀
恋愛
いっそのこと、手放してくださった方が楽でした。 だから、私から離れようと思うのです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目の人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

(完結)婚約破棄から始まる真実の愛

青空一夏
恋愛
 私は、幼い頃からの婚約者の公爵様から、『つまらない女性なのは罪だ。妹のアリッサ王女と婚約する』と言われた。私は、そんなにつまらない人間なのだろうか?お父様もお母様も、砂糖菓子のようなかわいい雰囲気のアリッサだけをかわいがる。  女王であったお婆さまのお気に入りだった私は、一年前にお婆さまが亡くなってから虐げられる日々をおくっていた。婚約者を奪われ、妹の代わりに隣国の老王に嫁がされる私はどうなってしまうの?  美しく聡明な王女が、両親や妹に酷い仕打ちを受けながらも、結局は一番幸せになっているという内容になる(予定です)

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

処理中です...