魔法のせいだから許して?

ましろ

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違う、違うと言いながら王妃様はまだ現実を見ようとしない。いえ、もしかしたら今更気付きたくないのかもしれない。自分の過ちに。
でも、そんなこと許されないのよ。


「王妃様。私の性格が以前と変わった気がしませんか?」

「……生意気になったわね」

「一年感情を抑えつけられた反動なんです。私は怒りが溢れてきます。
ではジーク様はどうでした?愛に狂ったジーク様は、私を傷付け続けた学園の生徒や先生達を殺しに行きましたか?本当に狂気を孕んでいるなら、魔法が解けた後の学園はさぞ凄惨なことになっていたはずですよね。
でも彼はそんなことしなかったでしょう。
ジーク様がしたことはひたすら私に愛を告げることでした。確かにそれだけは過剰で、反動があるなんて知らなかった私には恐怖でしたけど。それでも、私が本当に嫌だと言えば止めてくれたし、暴力的なことは一切ありませんでした。
それ以外は今まで通りしっかり公務をこなし、学園でもいつものように穏やかにすごしていたはずです。
……ねぇ、どこが愛に狂った化物なの?
私みたいに怒ってもいいはずなのに、彼はひたすら愛するだけ。それだけだったわ。
ジーク様の中に狂気なんてないのよ」


自分への嫌悪感はあるから多少の自傷衝動はあったみたいだけど。
あの頃の頭がおかしいかと思った求愛行動は一年分の反動だったのだろう。道理で暴走していたわけだ。
こんなことを自分で言うのはもの凄く恥ずかしい。でも、ここまで言わないと理解できない馬鹿王妃がいるのだもの!


「あ、……そんな……ごめ、ごめんなさい、私はなんてことを……」


ごめんなさいと何度も言いながら王妃様は泣き崩れた。やっと言葉が届いた安堵と、やっと心からの謝罪が貰えて心が満たされた。


「さて、これで全部吐き出せたかな」

「陛下、このような機会をいただきありがとうございます。だいぶスッキリしましたわ」

「一年分の感情を溜めておくなど心配だったからな。マルティナとの面会も取り付けてある。実はもうこちらに来ているんだ。今日会うかい?」


陛下は仕事が早いなぁ。王妃が出てこなかったら本当に早くに事件が解決してたのでは?


「そうですね、よろしくお願いします」

「では、アルブレヒトに案内させよう。私はまだ王妃と話がある」

「……分かりました。王妃様、ごきげんよう」


王妃様と言葉を交わすのは最後かもしれない。でも、もう言いたいことは全部言ったわ。偽魔法使いの王妃様が今後どうなるかは陛下の判断だ。


「母が本当に悪かったね」

「そうですね、殿下もこれから大変ですね」

「そうだな。まぁ、あの人が寂しがるからとジークに過保護なのを許していた父も悪い。まさかあんなに歪んでいるとは思わなかった」


寂しい、ね。王妃という位は確かに寂しいのかもしれない。あの方は本来与えられたい人なのだろう。愛するより愛されたい。尽くすより尽くされたい。
公務はしっかりこなす方だったから誰も気付かなかった。本当は心に狂気じみた愛を飼っていたのは王妃自身だ。
ジーク様の幼い姿に自分の狂気を見てしまったのだろう。王妃とジーク様は顔立ちも似てる。ご自分の分身のように愛してしまったのでしょうね。本人は否定してたけど。無自覚なところが本当に迷惑な話だ。


「母の罪が公になることは無いだろう」

「……はい」


やっぱり。だからこうやって私に断罪の機会を作ってくれたのだろう。学園には多くの貴族子息子女が通っている。そこでの事件を自国の王妃がいたずらに拡大させただなんて公表できない。


「いずれ病という名目で王妃を退き北の塔に幽閉される。もともと父はあと5年位で退位される予定だった。そうしたら母とゆっくり暮らすはずだったのに……
愚かだな。自分のせいで一生愛されない人生を送ることになった」


きっと今頃後悔していることだろう。
でも、もう誰にもその運命を変えることはできない。けれど……


「北の塔では寝覚めが悪いです。離宮での蟄居で良いのではないかしら。公にできないのなら、少しくらい口出しをしてもいいですよね?私の未来の義母でしたから」

「意外と甘いね?」

「そうですか?今日一日でずいぶんと発散させていただけましたからね。
反省してほしいし謝罪もしてほしいです。なんなら閉じ込めておくのも勿体無いから書類仕事でもなんでもさせたらいいとは思ってます。
でも復讐したいとは思わないのですよ」


復讐しても私は幸せになれないもの。嫌な記憶が増えるだけだわ。私はこれ以上不幸になりたくない。
絶対に幸せになると決めたのだから。




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