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12.笑顔の行方
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「陛下は一度しか、あの笑顔を見ることが出来ていませんよね」
護衛の職務中。陛下に求められてもいないのに言葉を発してしまった。これはとんでもないペナルティだ。
それでも──
「ふぅん。セレスティーヌを守りたいのか」
「はい」
絶対にここで負けてはいけない。もう二度とセレスティーヌに触れられたくないっ!!
「陛下はたくさんのセレスティーヌを見たいのですよね?」
「そうだよ、よく分かったね」
アンタに共感するのは本当に嫌だよ。自分が汚れた気がする。
「……俺もセレスティーヌを愛していますから」
もう、引き下がれない。絶対に守り抜くんだ!
「私の物を?」
「俺の妻ですから」
まだだ。まだ俺は陛下に届いていない。
「凄く眩しかったですよね」
「…………」
「覚えていますか?あのデビュタントの日、ダンスを踊っていたセレスティーヌのことを。白いドレスのリボンがひらひらと蝶のように揺れて、オレンジブラウンの髪に挿した白い花は何だったのかな。ぽとりと落ちてしまわないか心配でした」
来い、食い付けっ!
「あの時の笑顔が一等……」
「それをお前が引き出したと?」
よしっ!
「……はい。偶然かもしれませんが、とても美しくて。まさか、もう一度見れるなんてと心が踊りました」
トントンッと、指でテーブルを叩きながら少し考え込む。
「お前が出来ること……騎士として守ることを誓ったか、夫として妻であるセレスティーヌを愛すると宣言するか」
……見ていたかのように言わないで欲しい。どっちも確かにやっちゃってる。あれ、愛してるって言ったっけ?
「それとも、結婚指輪?」
だから怖いって!もう何?魔王様は人の記憶が読めるの?
「確かにどれも私には出来ないことだな。それで?偶然にも方法を知ったから、私に様を見ろとでも言いたいのかな。それとも、私にもやれるものならやってみろという挑発かい?」
「どう受け取って下さっても構いません。セレスティーヌの笑顔は美しかった。それだけです」
これ以上は無理。でも、どうか止まってくれ!
「セレスティーヌ、どうしようか」
そう言いながらセレスティーヌの頬に触れる。
何時もとは違い、陛下から視線を逸らさず見つめ合う。
「久しぶりにちゃんと私を見たね。うん。その顔は好きだな」
ふんわりと嬉しそうに笑った。
いや、アンタが微笑んじゃうのかよ。
「いいよ。そろそろカードゲームにも飽きて来たから、トリスタンも混ぜて遊ぼうか。
ルールは彼と同じに、君に触れることなく笑顔を引き出すこと。期限は……そうだな。建国記念式典の夜まで。どう?」
「それも罰ゲームがあるのですか?」
「そうだね、どんな罰ゲームがいいかな」
「私を笑顔に出来なかったら、1ヶ月、私に触れないで下さい」
「なるほど?じゃあ、笑顔に出来たら1日ずっと触れさせてくれる?」
「……はい」
「じゃあ決まりだ。今から?」
「はい、今から」
「残念。キスしてから始めればよかった」
そう言いながらも少し楽しそうにしている。
これでしばらくは時間稼ぎが出来る。
それだけでも嬉しい。
「だけどね、トリスタン。職務中の私語は厳禁だよ」
くそっ、そこは見逃さないのか!
「今日は面白かったから許してあげよう。次は気を付けるように」
「………ありがとうございます」
そうなんだよな。こういう少し茶目っ気があって、部下にも寛大な対応をして下さる陛下をお守りしたいとずっと思っていたのに。
どうしてそのままでいてくれなかったんだよ。
俺はアンタの笑顔だって好きだったんだ。
護衛の職務中。陛下に求められてもいないのに言葉を発してしまった。これはとんでもないペナルティだ。
それでも──
「ふぅん。セレスティーヌを守りたいのか」
「はい」
絶対にここで負けてはいけない。もう二度とセレスティーヌに触れられたくないっ!!
「陛下はたくさんのセレスティーヌを見たいのですよね?」
「そうだよ、よく分かったね」
アンタに共感するのは本当に嫌だよ。自分が汚れた気がする。
「……俺もセレスティーヌを愛していますから」
もう、引き下がれない。絶対に守り抜くんだ!
「私の物を?」
「俺の妻ですから」
まだだ。まだ俺は陛下に届いていない。
「凄く眩しかったですよね」
「…………」
「覚えていますか?あのデビュタントの日、ダンスを踊っていたセレスティーヌのことを。白いドレスのリボンがひらひらと蝶のように揺れて、オレンジブラウンの髪に挿した白い花は何だったのかな。ぽとりと落ちてしまわないか心配でした」
来い、食い付けっ!
「あの時の笑顔が一等……」
「それをお前が引き出したと?」
よしっ!
「……はい。偶然かもしれませんが、とても美しくて。まさか、もう一度見れるなんてと心が踊りました」
トントンッと、指でテーブルを叩きながら少し考え込む。
「お前が出来ること……騎士として守ることを誓ったか、夫として妻であるセレスティーヌを愛すると宣言するか」
……見ていたかのように言わないで欲しい。どっちも確かにやっちゃってる。あれ、愛してるって言ったっけ?
「それとも、結婚指輪?」
だから怖いって!もう何?魔王様は人の記憶が読めるの?
「確かにどれも私には出来ないことだな。それで?偶然にも方法を知ったから、私に様を見ろとでも言いたいのかな。それとも、私にもやれるものならやってみろという挑発かい?」
「どう受け取って下さっても構いません。セレスティーヌの笑顔は美しかった。それだけです」
これ以上は無理。でも、どうか止まってくれ!
「セレスティーヌ、どうしようか」
そう言いながらセレスティーヌの頬に触れる。
何時もとは違い、陛下から視線を逸らさず見つめ合う。
「久しぶりにちゃんと私を見たね。うん。その顔は好きだな」
ふんわりと嬉しそうに笑った。
いや、アンタが微笑んじゃうのかよ。
「いいよ。そろそろカードゲームにも飽きて来たから、トリスタンも混ぜて遊ぼうか。
ルールは彼と同じに、君に触れることなく笑顔を引き出すこと。期限は……そうだな。建国記念式典の夜まで。どう?」
「それも罰ゲームがあるのですか?」
「そうだね、どんな罰ゲームがいいかな」
「私を笑顔に出来なかったら、1ヶ月、私に触れないで下さい」
「なるほど?じゃあ、笑顔に出来たら1日ずっと触れさせてくれる?」
「……はい」
「じゃあ決まりだ。今から?」
「はい、今から」
「残念。キスしてから始めればよかった」
そう言いながらも少し楽しそうにしている。
これでしばらくは時間稼ぎが出来る。
それだけでも嬉しい。
「だけどね、トリスタン。職務中の私語は厳禁だよ」
くそっ、そこは見逃さないのか!
「今日は面白かったから許してあげよう。次は気を付けるように」
「………ありがとうございます」
そうなんだよな。こういう少し茶目っ気があって、部下にも寛大な対応をして下さる陛下をお守りしたいとずっと思っていたのに。
どうしてそのままでいてくれなかったんだよ。
俺はアンタの笑顔だって好きだったんだ。
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