聖職者あああああは冒険者ランク上位の戦士に寵愛されながら高難易度クエストを攻略する

よるべなし

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シュルドー廃教会

5.俺がなにも見せなければいい。

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 シュルドー廃教会は、本拠地であるクラーヴェル南西に位置している。夜の時間帯のみ入場が可能なダンジョンだ。

 ゲーム内の夜の時間帯に出発するのは初めてだった。エルド曰く、初心者プレイヤー関係なく、レベルの高いモンスターが出てくるからさっさとファストトラベルしたり、馬車を捕まえたほうがいいという教えからだ。

「シュルドーって割と初見殺しだよねぇ」
「蘇生してくるモンスターいるからね」

 シュルドー廃教会にファストトラベルし、入り口でダンジョンの開始を待機する。
 カインとミーナが、俺とエルドの前で話しているのを聞く。俺に対するヒントやアドバイスというよりは、お互いの思い出話のようだ。

 どうやら、俺の腕前の話は相当エルドが盛ってくれたらしく、二人からまだ見てもいないのに信頼されているみたいで、少しだけプレッシャーがかかった。ミクロ面はともかく、マクロ面でも……となるとずっとソロプレイだった俺にはあまり自信がない。

「じゃあ、みんなよろしくね!」

 意気揚々と片手を突き上げたミーナは、いつの間にか俺の後ろにいた。思わず振り返ると、少しだけ頬を膨らませる。

「なぁに? あたしはあーさんくんと一緒で後衛だし、女の子だから守ってもらわないと」
「いや、切り替えが早いなぁと」
「ほらほらいこいこー!」

 背中をぐいぐいとミーナに押され、前を歩くエルドとカインについていく。

 廃教会の門をくぐり抜けると、前庭が目の前に広がっていて、十字架や墓地がずらりと並んでいた。
 庭の奥には、巨大な弔鐘が設置されている。大抵、こういうのがダンジョンギミックになっているんだろうな、と思っていると案の定、それがゴゥン、と大きく鳴り響いた。

 全員で武器を反射的に構えた。

 エルドは攻撃特化の大剣、カインは驚いたことに盾のみ。ミーナは新調したばかりの箒で、俺は聖職者用の杖だ。

 冥府から蘇った骸騎士が土や墓地から湧いて出てきた。骨の身体に、重たそうな騎士の鎧の一部を身に着けている。鎧を装備している部分は一体一体、別の部分で、装備のない部分を狙えという趣旨なのだろう。

「よーし! あーさんくんに良いとこ見せるよ! カイン! お願い♡」
「もちろん! エルも合わせてくれ」
「了解」

 箒をぶんぶんと振り回しながらも、二人の影に隠れてミーナは声を上げる。
 カインとエルドが走り出し、骸騎士を左右から追い詰めていく。

 カインは盾や拳で殴るという脳筋を具現化したような戦い方で、ユーモアがあった。見ていて面白いし、多分、操作していても楽しいだろう。

 じわじわとエルドの剣とカインの盾が、庭の中央へと湧き出た無数のモンスターを集める。

 よしきた! と言わんばかりに、俺の後ろにいたミーナが、一歩前に出た。魔法で箒がふんわりと浮く。

「ありがと! ――太陽よ、我に光を与えたまえ。闇を裂くは我が炎、照らすは正義の焔。天より参れ! 灼熱の閃光――!」

 両手をかざし、ミーナは呪文を唱える。

「ソル・フレア!」

 宙から、大きな炎の塊が降ってくる。
 それがエルドとカインが集めた骸騎士を押し潰していった。

 カインが敵を引き付けておきながら、ミーナが強大な一撃を浴びせる。それが二人の戦闘のやり方なのだろう。
 デュオの戦い方として正解だ。そこにエルドのような強くて聞き分けのいい戦士が加われば百人力だろう。

「ちゃんと唱えたから威力も強いね」
「最初くらいちゃんとしなきゃね~!」

 カインの言葉に箒を地面につけて、ミーナは胸を張る。

 焦土と化した庭。ミニマム太陽に押しつぶされた骸の残骸が転がっている。

「鐘が鳴る前に、制御室にある鐘を支えている鎖を二つ切らなければいけないんだ」
「なるほど。モンスターが鐘の音でまた蘇生するのか」
「話が早くて助かるよ」

 カインがウインクをして、ミーナの隣に立つ。
 俺とエルド、カインとミーナで左右に分かれて、ゾンビやゴーストを倒しながら廃教会の左右にある小屋――制御室へと向かう。

「道を開ける!」
「任せた!」

 道中は予想していた通り、アンデット特効のホーリーが活躍する。光の矢がゾンビやゴーストに突き刺さり、一時的に動けなくなる効果もあるが、特効のために俺の攻撃だけで倒れていく。

 アモルコードによる詠唱の短縮効果のおかげで快適だ。

 今のところ、Hまでの行為によるエルドとの気まずさはない。というか、俺がそういった雰囲気を見せなければよくて、エルドは、多分だけれど身体の関係だけとかも慣れているような気がするから、俺だけの問題だ。

 だから、俺は今の関係をネタにもしないし茶化しもしない。嫌だとか文句も言わない。

 俺が、エルドになにも見せなければいい。

 エルドは、俺にも見せ場を作りながら敵を簡単に屠っていく。見ているだけじゃつまらないし、俺が姫プが好きではないのをよく知っているから、本来であればエルドの大剣で薙ぎ払うだけで倒れていく敵を俺に攻撃させてくれる。もしかしたら、これも一種の姫プなのかもしれないけれど。

 次の鐘が鳴る前に俺たちは、制御室で鐘を支えていた鎖を断つ。

 カインとミーナのコンビも同じタイミングで破壊できたようで、庭が静かになった。

 前庭だしな、と思いながら、その呆気なさに物足りなさを覚える。
 正直、早く上級ダンジョンに行きたい。ランカーのエルドや、冒険者ランク上級者のカインやミーナがいるならば猶更だ。

「物足りないって顔してる」
「まあな。……チーム組むとこんなに早いのかって、思った」

 ペアであれば、分断される要素もあったからそこそこ時間はかかっただろう。
 俺が素直に言うと、エルドの唇から少しだけ笑い声が漏れた気がした。

 なにか言われるのが恥ずかしくて、俺が小屋から出ようとすると、制御装置が置いてある部屋と繋がっている奥の部屋の存在に気づいた。

 紫色のぐねぐねとした光を纏った空間の扉が目の前に現れる。

「なんだ、この部屋……」
「え? エルも知らないのか?」

 珍しく、エルドが眉を顰める。顎をこすり、興味深げに生成された亜空間への扉の様子を見る。

「もしかしたら、レアダンジョンかも。出現率はかなり低いんだが……俺もシュルドーのは初めてだな」
「カインとミーナも呼んでくるか?」
「レアダンジョンに行けるのは一つのペアだけなんだ」

 元々、ペア用に出来ているゲームだからか、扉の上には0/2と確かに表示されている。
 にやっとエルドはちょっとだけ悪い笑みを見せた。

「カインとミーナには悪いが、俺たちだけで行かせてもらおう」

 エルドはパーティチャットにレアダンジョンが出現した旨を書き残す。

「ミーナがうるさそうだけど」
「カインが宥めてくれるさ」

 俺とエルドはゆらゆらと揺れる空間の扉に手を添えた。
 眩い光が俺たちを包み込み、俺の視界は真っ白になった。
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