Unknown World

二郎マコト

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三話目 はじめまして

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「いた、見つけた」

  何処ぞの旅番組でいう村人第1号、それは、まだ名前も知らない、見た感じ20前後女の子だった。
  彼女は安心したような表情で僕の向かいまで走ってくると、僕との間を隔てるフェンスに手をかける。

「私以外の人、ようやく見つけたよ。はじめまして、だね」
「あ、はい・・・。ということは、あなたも、気がついたら・・・」
「うん。家で仮眠をとってて、目が覚めたら、こうなってた。その様子だと、君も誰にも会ってないみたいだね・・・。でも、よかった。誰もいないんじゃないかって思ってたから、少し嬉しいよ」

  1人でいたことがよほど不安だったらしく、両手を胸の辺りで組んで、目を閉じてホッと息をはいている。
  やはり、彼女もここに取り残された人間だったのか。
  僕の他にも、この世界に取り残された人がいた。そのことは、この唐突な出来事を共有できる人が出来たっていう所から来る安堵の気持ちを、僕に与えた。でも、

  同時に少し落胆もした。
  嫌に複雑な気分になった。

  それは、ここでは人との繋がりっていうしがらみから、解放されると思ってたからだ。

  人は1人では生きていけない。それはわかりきってることだ。けど、正直言って、少し煩わしいものを感じる。
  このグループではこうあるべきとか、あぁあるべきだとかいう暗黙の了解も、顔色を伺って自分を必死に押し殺すのも、全部煩わしいし、鬱陶しいし、めんどくさい。

  それが当然のことなのかもしれない。そうあるのが正しいことなのかもしれない。けれど、それは、僕にとって少しばかり苦痛でもある。
  この誰もいない世界で2人だけっていう環境下じゃ、嫌でもこの人と協力せざるを得ない。

  ふうっと一つ、息を吐く。もう、出会ってしまったものは仕方がない。取り敢えずは、この人が何者なのかを把握しよう。今、この世界についてどのくらいわかっているのか・・・は、期待できないか。
  でも、一応聞いてみよう。

「あの、今起こってるこの現状について、何かわかってることって・・・」
「え? あー、ごめん。ってこと以外、何もわからなくて・・・」

  ん? ちょっと待って。
  テレビがついてた、だって?
  電気、通ってるのか?

「待ってください。それって電気が、通って・・・?」
「うん。そうなんだよ。さっきまでここの中学校を探索してたんだけどさ、テレビが一つ、砂嵐だったけど、ついてたんだよね」
「え? そんなまさか。だって僕あそこのショッピングモール見て回ってましたけど、電気なんて通ってる様子は・・・。それに今、この世界には誰も・・・」
「まぁ、とりあえず落ち着こうよ。でも、確かにわかるよ。私も駅前通ってここにきてるんだけど、その時電光掲示板も、天井の電気も付いてなかったからね。だから、変だねって話」

  突然のことで、少し頭が混乱する。
  誰もいない世界の中で、この人はなぜかテレビが付いていると言った。
  僕はスマートフォンの画面をちらりと確認する。やっぱりだ。左上には「圏外」の文字が表示されてる。
  電波も飛んでないし、電気なんて勿論通ってないのこの世界で、何故。

  取り敢えず、見に行ってみる必要があるかも。全てはそこからだ。

「その、そのテレビがどこにあるか、教えてもらえますか? その話、しっかりとこの目で見てみないとなんとも・・・」
「そだね。案内するから付いてきてよ・・・っと、そうだ。まだ名前聞いてなかったね。君の名前は?」

  彼女は後ろに向けた体をくるりとこちらに向けると、少し微笑んで僕に問いかける。
  名乗る時はまず自分から、なんていうつもりは特にない。

「新、です。日暮新。一応19歳。そういうあなたは?」
「私? 私の名前は––––––、」

  彼女のはっきりとした声。その声を聞いて僕はこの時、ふと、唐突に、

しずか明星静あけぼし しずかだよ。歳は君よりも一つ、年上ってだけだからタメ語で全然オッケーだよ。改めて、よろしく」
 
  この名前を忘れることは多分ない。そう思った。
 
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