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第六章

ウドウ砲3

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 ヒューン!

 遠くから風を切る音が近づいてきた。音が聞こえるという事は、ウドウ砲の砲弾は音速を越えていないな。

 ガン! ガン! ガン!

 続いて移動要塞の方から、固い物がぶつかり合う音。

 トドーン!

 爆音が鳴り響いた。

 という事は、火薬を使っていたのか?

「な……なんだ!?」

 今まで、アヘ顔をして地面に横になっていたフィリスが、爆音を聞いて真顔に戻り立ち上がった。

 煙に包まれている移動要塞を見て歓喜に震える。

「やったあ! 勝ったぞ! ランドールに勝ったぞ! あははははははは!」
「火薬を開発したのか?」
「ああ。私は黒色火薬の調合割合を暗記したまま転生したからな。硝石と硫黄と木炭を調合して……」

 そこでフィリスの笑いが凍り付く。

 ギギギっと、壊れた人形のような動きで俺の方をふり向いた。

「ランドール? なぜ?」
「さあ? なぜ俺は生きているのだろうね?」
「いや、別に驚くことではないな。本体の移動要塞は破壊されたが、先に分離していた分体のお前だけが生き残ったという事か。だが、分体だけ生き残ってもどうにもなるまい。移動要塞の中にエリスもいたはず。エリスを失ったお前は、ただの哀れなスライムだ」
「本当にそう思うか?」
「はん! 強がりを。そんな分体一つ残っただけのお前に何ができる?」
「確かにこの分体だけでは何もできない。しかし、俺の本体は生きているよ」
「馬鹿な! あれだけの爆薬を食らって」
「砲弾が貫通していれば危なかったかな。でも……」

 その時、煙が晴れて無傷の移動要塞が姿を現した。

「馬鹿な! 砲弾が貫通していなかったというのか?」
「ウドウ砲では、威力不足だったようだな」

 まあ、実際にはウドウ砲の威力はじいさんから聞いていたので、移動要塞の装甲はそれに耐えられるように作っておいたのだ。

 火薬を使われた時は少し焦ったが、黒色火薬程度だったら、要塞の外で爆発する分にはどうという事ない。
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