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最終章

レストラン

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 竜二と紀里を殺処分した数日後、あの地区を調べると、いくつかのシェルターから住民の姿が消えていた。

 消えた住民はすぐに見つかった。

 地上で、死体となって……

 顔写真を、四方津夫人に見せたところ、ほとんどが窃盗団だった。

 四方津夫人の知らない顔もあったが、窃盗団以外にも不良外国人を仲間に引き入れたらしい。

「しかし、同情する気にはならないけど、いらなくなったからって殺さなくてもいいと思いますが」
「大人しく一般人のふりをしていれば、殺されることもなかったのだろう。それがシェルター荒らしなど始めたから、工作員も手に負えなくなったのだろうな」

 歩きながら、そんな事を話している間に、俺たちは倉原氏のシェルターに着いた。

 出てきた倉原氏に、マニュアル通りの質問をした後、俺はプライベートな話をした。

「昨日、新作出ましたね。読みましたよ。面白かったです」

 事件の後、俺はネット検索して倉原氏のサイトを再発見したのだ。

 以来、この人の漫画にすっかりはまっている。

「次回作も、待っています」
「楽しみにしていてください」

 この時、ふと違和感を覚えた。
 
 前回尋ねた時と違い、無精ひげが剃られているのだ。

 何かあったのかな?

 続いて俺たちは、隣の初狩シェルターに向かった。

 あの後、俺たちは四方津に強奪された食料を、初狩シェルターの家族に返しておいた。

 初狩氏にもお願いして、あの家族が住むことを正式に許可してもらった。

 今はどうしているかな?

 ん? 入口前に立て看板……「笹子食堂」と書いてある。

 ブザーを押すと、娘がインターホンのモニターに出た。

「ああ、保安官さんですね。どうぞ、入ってください」

 シェルターに行って驚いた。

 リビングが、レストランになっていたのだ。

「初狩さんから、許可をもらいましたので、お店を始めたのです。メニューは限られていますけど……」
「それはよかった。しかし、客は来ますか?」
「今のところ、隣の倉原さんが毎日来てくれているのですけど……よかったら、保安官さん達も、お仕事の後でいらして下さい」

 なるほど。だから、倉原氏は髭を剃っていたのか。

 それは良いはが、今ある食材が無くなったらどうすれば……?

 おお! そう言えば、窃盗団から接収した食材の行き場がなかったな。

 後で、上に相談して、この食堂に安く卸すことができないか聞いてみよう。

 売り上げは戦災孤児救済金という事で……
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